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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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クリスマスはあなたの傍で、・第四幕・輔清と三匹の鼠

輔清の由香はモジモジしながら本能を抑え、三匹の鼠にこうなったいきさつを聞いた。三匹の鼠はご察知の通り松子、竹子、梅子の三人で、輔清になった由香と同じくセピア色の懐かしいこの世界に気が付けば居たのであった。

「それで何時もの様に愚痴っていたら鼠になってこの世界に飛ばされたと・・」

輔清の由香は本能と戦い地面に爪を擦り付けている。

「鼠と言っても私達はハムスターですからね!」

少々気の強い松子鼠が言った。

「私達のこの姿は三人で飼っていたハムスター達なんです」

少々気の弱い梅子鼠が言った。

「それで陽子が割り込んで来て“子供の頃に戻って性格を変えれば人生やり直しが効くんじゃない?”って言ったんです。そしたら気が付けばこうなっちゃてて・・」

割りに普通の竹子鼠が言った。

「陽子?どこかで聞いた名前ね・・」

輔清の由香は瞳を縦にした。

「人生のグットタイミングでターニングポイントという時にどうしても自分のこの性格が邪魔をするのよ」

打って変わり気の弱い梅子鼠が陰に隠れて言っている。

「こうなったのも全てあの陽子の所為よ!」

松子鼠は少々どころか正しく気が強い。

「それで過去の自分の性格を変えようと思っていると気が付けばこうなっちゃってたのね。あっ!思い出した!そう言えば陽子って子があなた達を心配して相談しに来ていたわよ!」

輔清の由香が三匹の鼠の話を親身になって聞いている。だが、傍から見ればようやく餌に在り付けたひもじい猫に見える。

「しゃくにさわるし、むしがすかない。あの陽子を知ってるの!?なぁ~んだ、あなた私達と同じ学校じゃないぃ~」

気が強い松子鼠が今度はなれなれしく言ってきた。

「陽子って子も!あなた達も!詳しくは知らないわよ!」

輔清の由香が三匹に向かって前進の毛を逆立てシャーッっと言っている。

「まぁまぁ、そんな事よりせっかくだからこの世界を満喫しましょうよ。まだ幼い頃の私達にも会って無い事ですし」

竹子鼠が間を取り持って話しかけてきた。

「そうよね。まずは子供の頃のあなた達を探しに行きましょう」

そう言って輔清の由香は塀に飛び乗った。


ところ変わって温泉旅行に来ているオカルト研究会ご一行様の行方。西園寺といえばゆっくり気持ち良く独り温泉に浸かりご堪能に浸っている。

「このほとんど見えない湯気で好都合だわ。独りだと思っている西園寺を脅かしてやりましょう!」

岩陰に隠れた翠が小悪魔の笑みを浮かべた。

「あぁ~気持ちいいわぁ~。修学旅行の査察という生徒会長の特権の醍醐味よねぇ~」

西園寺は温泉のお湯を肌に滑らせ伸びをした。

「なんて大きな独り言なんでしょう!」

綾乃があり得ない表情で驚いた。

「さしずめ予測はしていたけど・・生徒会長の特権~んっ!」

それを聞いた翠の眉間にしわが寄った。

“からっーぁーん!!”

その時大きな音が響き渡った。

「えっ!誰かいるのっ!」

西園寺は温泉の湯の中で身を縮めた。

「ごめんなさい…。前が見えなくて洗面器を蹴飛ばしてしまったわ・・」

岩陰に隠れている翠と綾乃の後ろから陽子が身を屈め小声で歩いて来た。

「いいのよぉ~。敵さんは絶対驚いている筈よ!ところで沙織は何処に行ったの?」

翠は濃く立ち込む湯気の中を覗き込んだ。

「こうして広い温泉の中で独りでいると、なんだか人の気配を感じる時もあるけど絶対に気の所為だわ。修学旅行生の先輩たちは“桃源郷”へ旅立って行ったし、やっぱりこの温泉は私一人がたっぷりと独占よ!」

そう言って西園寺は体を伸ばし深く浸かり直し思いっきり温泉を満喫した。

「やっぱり大きな独り言ね。まるでどこかの誰かに説明しているみたい?」

綾乃がキョロキョロ周りを見渡した。そのころ沙織は匍匐前進で敵の西園寺の陣地に向かっていた。

「見て見て!温泉の成分を含んだ身体がすべすべよぉ~!」

西園寺は体を洗いながら鏡に映る自分に大きな声で言いに言っている。

「これだけ大きな独り言で状況を説明しながら自分の居場所を教えてくれているんだから、湯気で前が見えない私達にとっては有利よ」

翠たちは岩陰に隠れながら徐々に敵地に進行していった。

「もしかして西園寺は本当は独りでいることが怖いんじゃない。それで大きな声を出して気を紛らわしているんじゃない?」

綾乃はある、ある、を言ってきた。

「そんな怖がり屋さんを恐怖のどん底に落としてやりましょう」

それは翠の小悪魔が悪魔に変わった瞬間だった。そのころ・・。

「シャンプーの泡がなかなか落ちていかないわぁーー!」

沙織は既に髪を流す西園寺の頭にシャンプーを上から随時垂れ流し、泡の切れ目が無くならない攻撃に掛かっていた。


輔清の由香は三匹の鼠・・。

「鼠じゃないわよ!ハムスターって言っているでしょ!」

失礼・・。松子鼠が横から割り込んできました。松子、竹子、梅子の三匹のハムスターを背中に乗せ高い屋根に上り町を見渡していた。

「こんな高い所で町を見下ろすのって気持ちいいわねぇ」

竹子鼠が冬の冷たい風に吹かれながら言った。

「よく遊んでいた公園は何処かしら?」

梅子鼠が身を乗り出している。

「それよりこのパノラマの景色がたまらないわぁ~」

松子鼠が感動に酔いしれている。これも傍から見れば鼠たちがチューチューとか言っている様にしか聞こえないのだろう。

「先っきからペラペラとうるさいわね!三匹も担いでいる私の身にもなってよねっ!」

輔清の由香が屋根に爪を立て転げ落ちない様に態勢を構えている。

「あっ!あったわよ!子供の頃の私たち三人がいる」

竹子鼠が子供の頃、遊び場だったこじんまりとした公園を見つけた。

「あっ!いたいた!げっ!陽子も一緒にいるわよ」

松子鼠はどうも陽子の事を毛嫌いしている。

「あーして一緒に遊んでいるじゃない。どうしてあなたは陽子って子を嫌うの?」

輔清の由香が松子鼠に質問をぶつけた。

「ちょっかいは掛けてくるし、ちゃちゃも入れてくるし、私達のやり方にいちゃもんを言うし。要するに疫病神なのよ!」

松子鼠は目を見開き大袈裟な表情で言ってきた。

「なんだか、相談をしに来ていた陽子の話の内容とは違うわね・・」

輔清の由香はあの時、机にうずくまりながらしっかりと聞いていた。

「とりあえずあの公園に行ってみましょう」

梅子鼠が輔清の由香の体毛に埋もれながら声を掛けた。

「それじゃ行くわよ!しっかりつかまってなさい!」

そう言って輔清の由香は高くジャンプした。

明日に続く。

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