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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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クリスマスはあなたの傍で、・第二幕・推理のお時間です。

今日は昼からの授業もなく誰もいなくなった事件現場の教室に、封鎖中の黄色のテープが所狭しと張られていた。

「品の無いテープの張り方ね。私でもきちんとお札が貼れるわ」

沙織はそう言って無造作に張られたテープの上に“家内安全”のお札を貼った。

「いいから入りましょう」

翠はそそくさと黄色のテープを千切りはじめた。大きな音を立て戸を開けると、そこは廊下より少し暖かい、空気の止まった静寂な薄暗い部屋が広がっていた。

「三人が消えた場所は服が散らばった三ヶ所の机ね」

翠がぱっと見で分かる体操服と制服が散乱した場所を一つずつ指差した。

「そうです。気が付いたのは皆が着替え終わった時で、誰一人消えた瞬間の目撃者がいないんです」

陽子がその時の様子を説明した。

「それじゃ、気が付いた時には散らかった服だけが残っていたって事ね」

翠が大きな虫眼鏡で事件現場を観察している。

「見て!三人の机を線で結ぶと三角形になるわ!」

教台に立って教室全体を見渡していた綾乃が気付いた。

「あっ!ほんと!こりゃバミューダトライアングルだわ!それで未知の大きな力が三人に襲い掛かったのね!」

綾乃の所に駈け寄って来た沙織も、指で三つの机を線で追い発見した。

「関係ないわ。バミューダトライアングルだったら、その中の内側の人達に影響があるでしょ・・。だけど着替えている最中に、何らかの力が働いたのは明らかだわ」

翠は虫眼鏡を通して教台に立つ二人を見た。

「三人はどんな子だったの?」

沙織が陽子に聞いてきた。

「おしゃべり好きで、いつも明るくクラスの人気者なんですが、何か不満があるようで愚痴を言うのがタマにキズ!ってところです」

陽子が履歴書に書く様な個人評価を言った。

「何に不満を持っていたの?」

教台から降りて色々探っている綾乃が聞いてきた。

「三人は幼馴染みの様で一緒にエスカレーター式の私立の学校に進学したかったらしいのですが、この学校が当初外資系の持ち物だったようで、その名前に憧れて目移りした事をいつも後悔していたようです」

陽子はまるで何時もその愚痴を聞かされていた様に話した。

「型から入って何も吟味もせず、目先のブランドに引かれて後になって飽きちゃうタイプね」

机の下に潜った翠が言った。

「そうよねぇ。十年前はあたまのセイントだったのが今じゃ、しょうに衣替えしちゃってるものねぇ。市立は前からだけど」

沙織がそう言えばの顔で言った。

「懐かしいわぁ~。昔の私達の活躍の時代ときのはなしよねぇ~。大人の事情なのよね」

綾乃が遠い昔の事を思い出した。

「だけど、桃烏って名前は変わっていないわ」

翠はペンライトで机の中も探りながら言ってきた。

「桃色のカラスって見たことあるぅ~」

沙織が投げやりに言ってきた。

「もしいたら可愛らしいじゃない。慣らしてオカ研のペットにしましょ」

残された制服のポケットを探っていた綾乃があか抜けた口調で言った。

「ところで消えた三人に“いじめ”はなかったの?」

翠は現場を嗅ぎ回りながら陽子に聞いてきた。

「いじめ!・・・。いや、私が知っている限りではそんな事はありません・・」

陽子はたじろもどろになりながら答えた。

「そう・・」

翠は意味ありげに陽子と目を合わさず返答した。

「私達だけでは、らちが明かないわ。こうなったら、お狐様に登場してもらいましょ」

沙織が持っていたお狐様の映写機を教台の机に置いた。

「持って来ていたこと気が付かなかったわぁ」

翠は目の前で手品を見せられたかのように驚いた。

「大先輩の助言も聴きたいでしょ!」

そう言って沙織が映写機のスイッチを入れた。映写されたスクリーンの中から薄っすらと人影が映し出され次第にお狐様が現れた。

「あっ、お狐様。髪型変えました?」

お狐様が出てきた途端に沙織が気付いた。

「お主。お目が高いのう」

髪型を今時のポニーテールにしたお狐様が上機嫌で返してきた。

「そろそろ新しい年に向けて前倒しで気分転換におしゃれをしようと思ったのじゃ」

お狐様は頭を触りながら似合っているか気になっているようだ。

「幽霊---ッ!」

陽子の口が泡立った。

「無礼な者よの!童は新入部員ぞ」

お狐様はプライドが高い。

「ところで聞いていたと思いますが、この事件の真相は何でしょう?」

綾乃がお狐様に聞いてきた。

「そうじゃなぁ・・。さてここで問題じゃ。すっぽんっぽんの丸裸で行動する事は何じゃ?」

逆にお狐様が聞いてきた。

「そんな・・、お日様が照っているこんな明るい時間に・・。言い難いわぁ・・」

沙織がもじもじしながら言った。

「そんな事・・。私の口からはちょっと・・」

陽子もはにかむ様に言った。

「なに赤い顔になって、はにかんで照れているのよ!二人とも答えが立ち往生しているじゃない!そんなのお風呂に入る時に決まってんでしょ」

翠が横から即座に答えた。

「正解っ!事件当初そのお三方の願った思いが通じたのじゃろう」

お狐様がクイズ番組の司会者のように言ってきた。

「分かったわ!それでそのとき偶然にも未知の大きなエネルギーが三人に働いて瞬間移動で温泉に飛ばされたのよ!」

名探偵綾乃の強引な推理だ。

「温泉・・?そう言えば今、三年生は修学旅行で温泉に行っているじゃない!もしかしたらその場所に瞬間移動しちゃったんじゃないのっ!」

翠が大きく手を叩いた。

「もしか?じゃなくって絶対そうよ!いやっ、そうあるべきよ!これで由香にも言って一緒に行けば、ご機嫌も直るってわけよ!」

沙織も強引に押し切ってきた。

「そうなれば一石二鳥よ!すぐにでも琴原に連絡してスーパーカーで来てもらうわ」

珍しく綾乃もテンションが上がっている。

「私もご一緒してもよろしいですか?」

「童もついてゆこうぞ」

陽子とお狐様が一緒に賛同した。

「もちろんよ!そうと決まれば早く由香に報告よ!きっと喜ぶわ!」

翠は思いっきりの笑顔で他の皆と一緒に勢いよく走って、部室の扉をまた勢いよく開いた。

「由香もいなくなったわ!」

そこには奇麗に折りたたまれた由香の制服だけが机の上にあった。


そこはセピア色の随分懐かしい光景が広がり由香の目の前には、今は昔のあの頃の時代が思い出と共に夢でなく存在していた。

「私が幼い頃の懐かしい景色ね。低い視線からで世界が大きく見えるわ。だけど目に映る光景は本当にセピア色なの!」

由香の目には一色だけの赤茶けたセピア色しか映っていない。

「視界が低いと思えば私、四つん這いで歩いているわ・・」

由香が下を見下ろすと地面すれすれで歩いているのが分かる。そんな地面の水たまりに今の自分の姿が写った。

「輔清~じゃなぁい!だけど私・・、私が輔清!」

輔清となった由香は驚き目が縦線に変化した。

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