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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
34/56

ある日、私達の学校にピラミッドが出てきました。・圧倒の後篇

11月Y日 晴れ時々曇り

“女王の座に就いた西園寺は、私達を上から見下ろしながら見下してきました。”


「いつの間にこんな所に君臨して座っているのよ!」

翠と西園寺は会って早々いつもの痴話喧嘩が始まった。

「しっくりとくる椅子よぉ~。此処に来てようやく私の居心地のいい場所を見つけたわ。今日からこのピラミッドは私の生徒会のものよ」

西園寺が不敵な笑みを浮かべ見下ろしている。

「私のぉ~!釈然としないわね!またそうやって自分勝手に決めて!生徒会は私物じゃないのよ!それだからまとまりがなくなっちゃうのよ!」

翠としては西園寺のやり方が気に食わない。

「今の生徒会はもういいわ。だって此処には私と同じ顔の人達がこんなに大勢いるんだもの。きっと、絶対に私と同じ気持ちだと思うわ」

西園寺は斜に構えた言葉で言った。

「図々しい態度とモノの考え方ね!やっぱりあんたとは性に合わないわ!むしろ敵よ!」

翠は遥か上にいる西園寺に声を張り上げた。と、その時・・。

「うっ!なんだかざわつかなかった」

翠と西園寺の言い争いをいつもの事と傍観的に見ていた他の三人は空気の流れが変わった状況を敏感に感じた。振り向くと大勢の西園寺たちは無表情のまま立っている。

「絶対いま先っき誰も騒いでないけど結構ザワついたわよね!」

西園寺と同じ顔の団体を眺めながら沙織が二人に小声で言った。その間まだ祭壇に座った西園寺は自分に酔いしれっている。

「忙しくて自分の体がいくつあっても足らない時ってあるじゃなぁい。もう一つ・・、二つ、三つと欲しいなって思った時もあるでしょ。こんなに沢山の私がいれば物事がスムーズにこなせると思わない。だから同じ自分の分身が必要なのよ」

西園寺は優越感に浸った表情で甲高い笑い声を上げた。

「そんなくだらない事で分身になる人の身にもなってみなさいよ!それにこの偽物のピラミッドの中のそんな椅子で踏ん反り返て、女王様気取りで独り落ち着いちゃうわけ!」

・・その時!また極端に空気の流れが変わった。しかし翠はそんな事に気付く訳はなく文句を垂れながら、西園寺がいるところまで肩に力を入れ長い階段に向かって行った。

「それにしても無表情の西園寺たちはじっと静かにいられるわね」

由香が大勢の西園寺を眺めて言った。

「それにしても、ぞくっ!と、させるこのザワつきはなんなの!?」

幾度となく来る何とも言えない空気の変化が沙織の背筋に鳥肌を立てさせた。


“空気の流れが変わるというのは、その場の雰囲気が変わるということですよぉ~。”


「思い出した!これよ!“閲読注意!人類の過去恥部歴史大辞典”!私達の生まれるずっと昔に世界中で無差別に千人を超える赤ん坊の頭にマイクロチップを埋め込んだの。それは特殊な信号を受け取り脳に刺激を与え能力を高める実験だったの!」

翠と西園寺の言い争いをそっちのけに綾乃は突然大きなリュックからこれまた大きな本を取り出しページを捲った。

「いきなり急に何よ!たしか噂で何か聞いた事があるわ。だけどそれって確か宇宙人に誘拐されて人体実験にされる“アブダクション”という名前だったかしら」

驚きのあまり目を丸くした由香がひらめいた。

「噂ではそう思い込まされているけど本当は違ったの!謎の組織の陰謀よ」

綾乃はページを捲りながら言った。

「そんな宇宙人の所為にしてでっち上げられたのね!宇宙人にしてはたまったもんじゃないわ!」

沙織が呆れかえった。

「それは何のために?」

由香が不思議そうに聞いてきた。

「天才を数多く作るためよ」

綾乃がすらっと答えた。

「天才!?」

沙織と由香が揃って声を上げた。

「みんなも脳の入り組んだ奥の所にマイクロチップがあるレントゲン写真を見た事があると思うけど、それは当初は赤ん坊の脳の表面にマイクロチップを埋め込むだけの簡単な手術だったけど成長するにつれマイクロチップは脳の奥へ奥へとなだれ込みあんな手術しても取れないような所まで浸透したんでしょうね」

綾乃はやっぱり本が重いのか地べたに置いてページを捲った。

「それでもマイクロチップは長年機能していた」

沙織は顎に指を立て推測した。

「だけどそんな陰謀をマスコミが嗅ぎ付け真実を明るみに出そうとしたの。しかし裏の圧力が掛かり隠蔽されてしまったの」

綾乃は本の文字を追いながら言った。

「真相は闇の中ね」

由香が諦めながら気だるく言った。

「しかしこの実験は頓挫して全てのデータは闇に消えたわ」

綾乃は今度は虫眼鏡で文字を追った。

「なんで失敗しちゃったの?」

沙織顎に指を立てたまま首を傾げた。

「思ったよりIQ指数が高い知能を持つ人達が予想を超えて増えていったからよ!言わば新人類ね。それで謎の組織はその人達を捕まえて隔離しようとしたんだけど逃げられちゃってそのまま忽然とその人達は姿を消したの」

綾乃は本に間近まで近づいて読んでいる。

「そう来なくっちゃ!そんな組織に捕まってたまるかっ!てなものですか!!」

沙織は顎に当てた指を弾いた。

「その逃げた先が地底だったわけ。・・で、この西園寺たち!?」

由香が西園寺たちの方へ振り向いた。

「まっ、それもこれも噂の域を超えないんでしょうね」

綾乃と沙織もゆっくり大勢の西園寺を見つめた。

「・・で、なんで西園寺の顔なの!」

三人は同時に首を傾けた。


“さすが綾乃先生。答えが出ましたね”


生徒会室・・。

「それがねまだ答えは出ていないのよぉ」

綾乃が頭を掻いた。

「そうよねぇ。地底深くであのピラミッドの中で西園寺たちはなに食べて暮らしていたんでしょ」

沙織の思い付くことは食べ物の事ばかりだ。

「そんなの、なに食べようが微塵でも思わないわ!」

西園寺が机に肘を付き不貞腐れ気味に言った。

「それも気にはなるけど、私が引っかかったのはみんな無感情だったって事よ。それに時折ある言葉に敏感に反応した時よ」

綾乃が場面を思い出しながら言い出した。

「そうそう翠と西園寺の言い争いのなかでの“敵”とか“偽物”とか言った時でしょ」

映写機を持った由香が気だるく思い付いた。

「それはわし等の存ぜぬ世界で、あの者達が進化した故での事ではないか」

映写機が動き出しライトが照らされた先からお狐様が現れた。

「あなたも此処に来ていたの!」

西園寺が驚いて椅子から転げ落ちた。

「お狐様のこと忘れないでよ。あなたが部員全員を徴収したんでしょ!」

翠が西園寺を抱えて言った。

「童の推測じゃが、あの者達は進化の過程で感情を置き忘れてきた魂だけの存在になったんであろうな。言うなれば形が存在する幽霊の様な者になったのであろう」

形の存在しないお狐様が推論した。

「それでモノの考え方もリセットされて理解できない言葉に反応したのね」

沙織が“なるほど”のポーズを決めた。

「あと今となっては遅いけど、あの石壁に描かれていた古代文字は何かの取り扱い説明書だった様な気がするの」

綾乃が後の祭りの様な言い方で言ってきた。

「私は作った事はないけどプラモデルって、一から順番に作っていかないとちゃんと完成できないじゃない。それと同じであの古代文字にも順番があったんじゃないかしら」

綾乃は“やってしまったっ!”の様な表情で言った。

「そうよねぇ。プラモデルといえば、私は一度好きなところから作って組み立てられなかった事があったわ」

沙織はそれから一度もプラモデルを触っていない。

「私達そんなとんでもない事をしてしまったのね」

由香が気だるくぼそぼそ言った。

「それであんな大騒動になったのね!」

翠がもう一度あの時を振り返った。


ピラミッドの中・・。

“もうそれからというもの何をしていいのか、ひっちゃかめっちゃかさ!”


翠は頂上の王座の椅子に座る西園寺に向かって急な斜面の階段をお盛んに駆け上がっていた。

「元気よく頂上まで駆け上がって来られたわねぇ。エレベーターで昇ってくりゃよかったのにぃ~」

西園寺は目の前で汗だくで息を切らせてゼーゼー言っている翠を見て冷めた口調で言った。

「エレベーターなんか無かったわよ!また“嘘”ばっかり言って!」


“またざわめきが起こりました。どうやら西園寺たちの頭のなかの考え方に解らない言葉が出てくれば西園寺たちはチンプンカンプンで空気の流れが変わる様です”


“そして翠は我慢できなくなり汗びっちょりの体で西園寺に掴み掛りました”


「何するのよ!みすぼらしい姿で!汗びたしで汚いのよ!」

西園寺は翠を前に仰け反った。

「汚いとはなによ!汗は青春のシンボルよ!こんなくだらない女王の座から引きずり降ろしてやるわよ!」


“翠は西園寺に伸し掛りほたえだしました”


「今日はいつもながら凄い剣幕で歯止めが効かなくなっているわよ!」

てっぺんで二人の争う姿を下から沙織が双眼鏡で見上げている。

「さすがにヒートアップしているわねぇ」

綾乃も一緒に一緒になって見上げている。

「それより石のブロックが騒がしくなってるよぉっー!」

由香が壁や地面から飛び出し動き出す石に慌てふためいている。

「キャー!地震よっー!」

揺れ動く地面に綾乃がひっくり返った。急に突然ざわめき以上のどよめきが起こり部屋全体が激しく振れ動き、下にいる三人と頂上の翠と西園寺が転げ回った。しかし西園寺たちは動揺する事なく部屋を静かにそそくさと出て行った。そして・・。


“ピラミッドは私達を放り出し天高く宇宙に向かって飛んで行きました”


再び、生徒会室・・。

四人は蛍光灯が並ぶ広い天井を眺め宇宙に旅立ったピラミッドを思い浮かべていた。

「結局あのピラミッドだと思っていた建物は立体形の菱型の乗り物だったのよね」

翠はUFOを彷彿させた。

「あの西園寺たちは嘘や偽り事、敵や味方もなく地底の世界で平和に仲良く暮らしていたのね」

由香が空気が変わったあのざわめきの瞬間を思い出した。

「それが突然、私達が現れて当然の事ながらあんなに大騒ぎして西園寺たちに悪影響を与えていないかしら」

翠はおふざけ半分で踏み入ったことを反省している。

「ところであの西園寺たち自分達の住みやすい惑星ほしを見つけたかしら」

綾乃が心配した。

「大丈夫よ!きっと新境地を見つけて純粋に意識の違った新しい考えの世界を創っているわよ」

沙織は旅立った西園寺たちに期待している。

「なによ!西園寺たち、西園寺たちって!何だかオリジナルの私が不純な考え方しかしていない様に聞こえるわね!」

そこにいる西園寺が聞き耳を立てた。

「敵や味方と分かれない嘘張ったりの無い平等な世界・・。そしてきっと私達が思い付かない様な素晴らしい発想を頭の固い大人達に教えに必ず帰ってくるわよ!」

翠は明るい未来を胸に言った。

「そして人類に栄光をもたらしてくれるのよ!」

沙織は翠の手を握り目を輝かせた。

「遠い将来その時代の世代の人達がそんな絶好の考えを素直に受け入れればの話ね」

由香が当てにせず気だるく言った。

「皮肉な言い方ね。それだから新しい考え方が受け入れられないのよ!思考転換しなさい!」

綾乃が由香に向かって険しい顔で言った。

「それより次に“あれ”をどうするかよ・・」

四人の会話をくだらなそうに聞いていた西園寺はため息を付きながら窓に行きブラインドを上げ外を見た。


11月Z日 晴れ一時雨

“今度は地面からとんがりお屋根の外国のお城が出てきました!”


「“地底人の住居、地上に現る!”って、また大袈裟なタブロイドっぽい見出しにしちゃって!」

デジタル写真部の部室のこたつで小佐井先輩が学校新聞を読んで侮っている。しかし新聞部のスクープは意外に確信を突いていた。



※今回のウィキペディアで検索してみよう!※


●ピラミッド

●開けゴマ

●ミイラ

●アブダクション

●第八話・ある日、私達の学校にピラミッドが出てきました。(前後編)


●出演者


オカルト研究会メンバー

早乙女沙織、鷹塚翠、飾磨由香、栗須川綾乃


●ゲスト出演者


新入部員・お狐様

生徒会会長・西園寺公佳

西園寺顔の地底人たち

デジタル写真部部長・小佐井和哉先輩



※この物語はオカルト研究会の四人組のドタバタコメディのフィクションであり実在の個人名、団体名、建物名、本のタイトルなど一切関係はございません。

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