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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
33/56

ある日、私達の学校にピラミッドが出てきました。・怒涛の前篇

11月X日 晴れ 

“退屈な授業中に窓から校庭を眺めていると、耳を裂く様な地響きと一緒に、大地が揺れ地面が割れて、裂け目から大きなピラミッドが現れました。先生もクラスメイトの皆も授業どころじゃなくなり、そりゃ大変な大騒ぎさ!そのピラミッドは校舎の屋上を超え天高くそびえ立ちました。外は寒くても窓から気持ちの良い日差しが差し込んでいたのが、大きなピラミッドの陰で日が入らなくなり教室はどんより曇った雨の日の様に真っ暗になりました。そのうち周りのクラス中が騒ぎ立てるなか、さっそく西園寺が私達の教室に飛び込んで来て調査するように私達に泣いて頼み込んできました。”


「なんで!!私があんた達に泣いて頼み込んだ覚えはないわ!」

冷え性の生徒会会長、西園寺公佳が吠えた。


“それで私達は仕方なく・・仕方なく、探検隊の服装に着替え、お菓子を詰め込んだリュックを背負い、お狐様も連れてスキップをしながら!ピラミッドへと向かいました。”


「仕方なくって!ウキウキじゃなぁい~ぃ♪」

毛糸の手袋が欠かせない飾磨由香が気だるく笑った。


“下から見上げるそのピラミッドは、それはもう、とてつもなく巨大な物で何処から手を付けていいものかも分からず仕舞いです。それで手分けして内部に入れる玄関を探す事にしました。”


「途方に暮れるほど大きかったから大変だったわねぇ」

毛糸の帽子は絶対にする早乙女沙織があの日を振り返った。


“・・で、らしい所を見つけて沙織が“開けゴマ!”と、今ごろになっては化石となった古い呪文を唱えました。するとどうでしょう!大きな音と共に入口が開いたじゃあ~りませんかっ!やっぱり昔ながらの呪文も効くものです。”


「あれには驚いたわ」

お気に入りのマフラーを色によって日ごと変えている栗須川綾乃が横から覗いてきた。


“玄関が開くと地下に続く長い石畳の階段があり、私達はゆっくりと懐中電灯の光を頼りに降りていきました。”


「長い階段だったわね。そして迷路になっていたのよね・・・。って!いつまでこんなところで迷っているのよ!」

カイロを体の至る所に張り付けている鷹塚翠が喚いた。


ピラミッドの中・・。

「お主らの荷物はお菓子ばかりで肝心な探検道具が入っておらぬからじゃ」

オールシーズン同じ制服のお狐様が映写機から照らし出されている。

「ところで西園寺は何処に行ったの?」

綾乃がライトを照らし周りを見渡した。西園寺もオカ研だけでは当てにならないと思い込み一緒に来たのだ。

「またどこかで油売ってんじゃないの」

翠がそっけなく答えた。


“ピラミッドの中は案外暖ったかく、歩き続けると汗ばむくらいです。私達は引き続き当ての無い迷路の様な道を、途方に暮れながら進む事にしました。”


「どんどん下へ下へと降りているようね」

由香が不安になっている。

「もうどっちが上か下か分からなくなっちゃたわ!」

沙織の足の感覚が無くなってきている。

「同じ大きさの石が寸分の狂いも無く精巧に積み上げられているわ。ここまでくればもう芸術ね」

綾乃は匠の技に感心している。

「あらこれは何かしら?」

翠の持つ懐中電灯の明かりが照らし出したそこには、何かの文字が書かれていた。

「何かしら古代文字のようじゃぞ」

お狐様が言う様に理解できない文字が壁に彫られていた。

「そんな事もあろうかと図書室から“世界の古代文明大辞典”を持ってきたわ」

綾乃は背負ったリュックから大きな分厚い本を取り出した。

「だいたいこの辺の古代文字に書かれている事なんて戦争や自然災害、人類の滅亡の予言が多いのよ」

沙織がよく世に出回っている噂知識で言った。

「そんな噂話あたまから信じないの!人類滅亡が既にいついつ予定されていたら、たまったものじゃないわ!そもそもこの得体の知れないピラミッドが古代文明の産物かどうかも分からないのよ」

翠は痺れを切らしたかの様に言った。


“それで私達は暗号を解読する様に手分けして古代語の翻訳を始めました。しかし何処の何時の時代の古代文明の文字にも当てはまらず、悪戦苦闘しながらも長い時間が経っていきました。”


「疲れたっー!これじゃ埋蔵金の暗号の方がよっぽどマシだわ!」

沙織が手頃な石に座り込んだ。

「そう言ってあの時も分からず仕舞いだったじゃない」

由香もやつれた顔で気だるく言った。

「ちょっと奥の方から明るくなってきたよ」

翠が見つめる漆黒の暗闇の中からほのかに明かりが近づいて来る。それは小さなたいまつが照明の様に一つ一つと灯されてきていた。

「沙織の座った石で明かりのスイッチが点いたみたいね」

翠は明るくなった自分の居場所に落ち着きを取り戻した。

「あーっ、お狐様が消えていくわー」

映写機の光がたいまつの明かりに負け由香がお狐様に手を振った。

「また後で会おうぞ」

お狐様も手を振りながら掻き消されていった。


“明るくなって分かったのは、私達のいる場所は積み上げられた石に囲まれた広い空間だということでした”


「なんだか他にも、からくりがあるようね。いろいろ動かしていきましょう」

沙織は座っていた石を動かそうとした。


“私達はそれらしき石を、やたらめったら触っていきました”


「心地よい安らかな音楽が流れてきたわ」

綾乃は目を瞑り体中に浸透するような音楽に耳を澄ませて聞いた。

「いい感じの気温になってきたわ」

エアコンが効き出してきたのか翠が上着を脱いだ。

「甘ぁ~い香りが広がってきたわ」

由香が胸一杯吸い込んだ。

「うわぉ!何やら地面が盛り上がってきたわ」

周りの石畳の床が盛り上がりその中から土が溢れ出し沙織は尻餅を付いた。

「きゃぁー!今度は天井から雨漏りして来たわ」

今度は天井から激しい水がシャワーの様に吹き出し綾乃がずぶ濡れになった。

「今度は土の中から芽が出て来たわ」

由香もびちゃびちゃになりながら植物の芽生えを観察した。

「まぁ奇麗なお花畑が広がったわ」

これまた水浸しになった翠の目に名の知れない美しい花が一瞬にして一面に広がっていった。


“このとき無邪気に訳も分からず動かしていた石に意味が込められていたとは、私達には知る由も無かったのです”


「殆どどれも役に立たない無駄なからくりだったわね」

泥だらけの沙織がため息を付いた。

「だけど何だか空気が美味しく感じられない?」

髪から水が滴り落ちている綾乃が大きく深呼吸した。

「もしかしてこのお花畑が新鮮な空気を出しているの」

沙織は花に顔を近づけた。

「空気じゃなくて酸素を出しているの!それにしてもよくこんな場所でよく育つわね?」

綾乃は不思議に思った。

「だけどミイラが大勢出て来なくてよかったじゃない」

由香は探検服を絞りながら気だるく呟いた。

「ミイラはエジプトにある本物のピラミッドの中よ!これは地底から出て来た素性の分からないピラミッドよ!世の中には必ず本物と偽物があるの。もしいたら怖いわ!」

水浸しでみすぼらしい姿になった翠の頭の中にはミイラの発想は全く無かった。

「ねぇ・・ミイラじゃないけど西園寺が・・」

綾乃が奥を指差している。

「西園っ寺!今ごろになって!あいつ何処ほっつき歩いていたのよ!」

翠が怒りながら振り向いた。

「いや・・西園寺がね・・大勢いるの・・」

震えた声で綾乃が指差す方向の壁沿いから西園寺がいっぱい顔を出している。

「これはミイラの方がよっぽどマシだわゎ」

由香の体がぞくっと震えた。

「まさしくゴキブリ並みね。気味が悪いし虫唾が走るから逃げるわよ!」

翠が咄嗟に決断した。

「靴の中がぐちゅぐちゅで気色悪いっ!」

走りながら沙織が叫んだ。


“私達は死に物狂いで無我夢中に全速力で走りましたが、そりゃ迷路の様な曲がりくねった道に迷うし、前から後ろから湧き出してくる何十人という西園寺には勝てず、あっけなく囲まれてしまいました。”


「みんな無表情の西園寺ね。どこに連れて行くのかしら・・?」

暑ぐるしくなるほど西園寺たちに取り囲まれた綾乃が思った。

「まるで感情の無い唄を忘れたカナリアね・・」

沙織がそれを読み取ったのかあわす様に思った。

「なんかちょっと違うわよ・・」

由香は冷たい目でその沙織の例えに無言で首を傾げた。

ぐるぐると迷路の道を歩いていると大きな扉が近づいてきて二人の西園寺が開き戸を開けた。そこは黄金で出来た、だだっ広い宮殿になっており真正面の長い階段の頂点の玉座に座る、これまた西園寺の姿があった。

「みなさんお久しぶりね」


“見上げるとまたよく見る腹立たしい顔が鎮座しておりました。”


生徒会室・・。

西園寺は豪華な会長の椅子に座り、その机の前に向かい珍しくオカ研四人組が並んで立っている。

「それでそれから何があったの」

西園寺は頭を抱えて言った。

「なに言ってのっ!あんたと同じ顔の地底人を従えて偉そうにしていたじゃないっ!」

翠が呆れた顔で言った。

「だからっ!あいつらに誘拐されてから覚えていないのよ!」

西園寺は疲れた顔で声にならない大声を上げた。

「都合のいい記憶ね。ほんとは覚えているんじゃない?」

由香も気だるく冷めて言った。

「役の立たない風紀委員の所為で私が直々出向いて行ったのよ!それはそれで感謝してもらいたいわ!」

西園寺の目の下には大きな隈が出来ている。

「何に感謝しろってゆうのよ!」

沙織が訳も無くイラついている。

「そんな事よりなぜ此処に呼んだか分かっている!何よこの報告書!まるで子供の絵日記じゃない!いたたたたっ・・」

西園寺は体の筋肉痛の痛みと一緒に叫んだ。

「私達まだ子供なんですけど・・」

綾乃が膨れながら言った。

「まぁいいわ。続きを読んでいきましょう」

西園寺は疲労を隠しきれず疲れた声で言った。

明日に続く。

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