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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
28/56

妖精を見た!・第五幕・オカ研、宇宙へ行くの巻

運動場脇手に備え付けられた監視カメラの映像からは校舎全部が蜘蛛の糸でがんじがらめに包まれた様になってしまっている。その様子をモニターで見ている西園寺と藪下は言葉を無くし、ぐうの音も出なかった。

「完全に密封されてもうたなぁ」

ようやく藪下が諦め口調で呟いた。

「ラッピングされたように言わないで頂戴!どうするのよ!このまま一生出れないじゃない!蜘蛛の餌になるまで此処に居ろって言うの!お得意の武器はどうしたのよ!」

西園寺は思った事をマシンガンの様に藪下に向かって言い放った。

「隊長!見て下さい!また怪しげな“くも”が急速に此方に向かってきます!」

モニターを見ていた風紀委員の女生徒が藪下に呼び掛けた。

「蜘蛛の団体さんはもうお着きでしょ!また追加でいらしゃるの!」

藪下より先に西園寺が答えた。もう、やけくそ気味だ。

「よく見て見ぃ。蜘蛛では無い。雲だ!」

唖然と見る藪下のモニターに映る画面は大きく幅を利かせ勢いよく迫りくる雲・・、いやあの怪しげな霧だった。

「何あれ!雪崩の様に押し寄せて来るわ!」

西園寺は怪しげな霧の事はまだ知らない。

「まるで生きている様ぞのぉ」

藪下も霧の中で起こった事もまだ知らない。

「ところであいつらは何してんのよ!あの山に行ってからこんな事がおこってんじゃない!」

西園寺がいまオカルト研究会の面子を思い出したかの様に言った。

「大自然が、おのおのがたに怒っておるのじゃ・・」

藪下は途方に暮れ力無く言った。そうしている間に怪しげな霧は蜘蛛の巣に覆われた学校を飲み込みその存在を消し去った。

「モニターの映像が消えちゃったじゃないの!」

画面が乱れ真っ暗に映らなくなったモニターに西園寺が文句を言った。その時・・。学校の照明全てが消え至る所、教室全体から悲鳴が聞こえた。

「こっちが叫びたいわよ!どうにかしてよ!」

真っ暗ななか西園寺が藪下に向かって喚き散らした。

「もう既に取り掛かっておる!皆の者!鎮圧作戦開始!」

藪下は風紀委員を指揮して飛び出して行った。

「電気が消えるなんて不便極まりないわ!幸い私はペンライトを持っていたからよかったものの・・」

西園寺はそう言って独りになった真っ暗な教室でペンライトのスイッチを入れた。

「電池が切れているのかしら・・?なかなか点かないじゃない。ところで何この音?」

カサカサと気味の悪い音が周りから聞こえてきた。その音の正体も西園寺はまだ知らない。ようやくペンライトに光が灯った。

「きゃぁぁぁー--!」

西園寺の目の前には無数の巨大蜘蛛の群れがいた。思った具合の展開である。


こんな大変な事が学校で起こっているとは露知らずオカルト探検隊御一行様はようやく切り立った岩肌を登りきり洞窟から地上に這い上がって来た。

「みんな大丈夫。どうやら霧は引いたみたいね」

最初に地面から顔を出した升池が警戒しながら伝えた。

「生き返ったみたいだぜぇ」

次にマーティンが顔を出した。

「美味しい空気だわぁ」

次に翠が顔を出した。

「もう筋肉痛だわ」

次に顔を出した由香が気だるく言った。

「やっぱり穴蔵より外がいいわぁ」

綾乃の顔も出て来た。

「・・・」

最後に出て来たミミーは何も言わず何やら信号を送っている。

「ところで此処は何処なの!?」

周りの景色を見て升池が驚いた。

「樹木がみんな枯れているぅ~」

周りの悍ましい光景に翠が震えた。

「あの霧が全部栄養を摂っていったんだ!」

マーティンが推測した。

「待って!それよりおかしいと思わない?景色全体赤いわよ」

ミミーが言う様に赤く染まった世界となっていた。

「そのようね。見て太陽自体が赤いもの・・」

升池が見上げる太陽はこの世の終わりを告げる様に真っ赤に照らしていた。

「なぁ、あそこにしゃがみ込んで笑っている子はそちらさんのお仲間じゃないか?」

マーティンが翠たちに振り向き指を差して言った。

「沙織!!」

翠たちは一斉に沙織に駆け寄った。

「あはははっはあははは・・・」

沙織は虚ろな目で遠くを見つめよだれを垂らし魂が抜けた様だ。

「まさか!あのキノコ食べたでしょ!絶対に食べちゃダメって言ったのに!」

沙織の体を揺らしながら綾乃が残念な顔になった。そんな綾乃の言葉も聞こえず笑い続けている。

「あはははっ・・・」

沙織は白目になり有頂天になっている。

「ご愁傷様です」

翠が拝んだ。

“ざぶぅーん”

マーティンが思いっきり沙織の頭に水を掛けた。

「原始的なやり方が一番効くんだよ」

マーティンはすっきりした顔で言った。

「はぁ、みんなどうしたの・・」

沙織はあっという間に正気に返った。

「戻り、早っ!」

気だるく言った由香の驚きは正真正銘だ。

「Tレックス・・。Tレックス!みんな逃げてぇ~!」

急に沙織が叫び出しバタバタ体を動かした。

「行き成りなに言ってんのよ!」

翠がビクッとなった。

「どうやらキノコの毒で幻覚を見ていたようね」

升池が沙織の症状を見て言った。どうやらまだ沙織は正気ではないようだ。

「みんなも“アルザル”に来たのねぇ」

まだ沙織は脈絡が無い事を言っている。

「“アルザル”って地球空洞説の地底世界のことっ!そんなのあるわけ無いじゃない」

綾乃は自棄に否定的である。

「そうでも無さそうよ。あの赤い太陽といい、それにあの空に浮かんでいる物・・」

升池が空を見上げた。そこには筒状の得体の知れない物体が浮かんでいた。

「フライングヒューマノイド!」

翠が嬉しそうに飛び付いた。

「いや・・違うでしょ・・」

由香が頭を抱えた。

「それじゃ此処は本当の地上じゃないって事!」

ミミーが当然の様に驚いた。

「凄くびっくりしている様ねミミーさん。あなたが誰かさんに送った信号は此処では届いていないって事よ」

升池が見据えた様にミミーに言った。

「それは・・、本部にSOS信号を送ったのよ・・」

ミミーは見え透いた言い訳をした。

「まぁいいわ。本部に帰れたら・・事情をじっくり聴くわよ」

升池は強気では入るが此処から無事に帰れるか不安になっている。ミミーとそんな女の嫉妬が交差している頃、正気に戻った沙織と一緒に四人は手を繋いで輪となってUFOを呼んでいた。

「何やってんだ?お前たち?」

あまり見ない不思議な行動にマーティンは首を傾げた。

「*#&%+><~!?」

四人は常人では理解できない言葉で交信している。すると空に浮かんでいた得体の知れない物が次第に此方に近づいて来て大きな影が全員に被さった。

「こう見るとすっごーい大きいわね・・」

翠が目を丸くして感動している。

「私達ってやれば出来る子じゃん!」

沙織がはしゃいだ。

「すげっーなぁ!UFOって初めて見たわ!」

マーティンは特殊部隊にいてお初らしい。

「私もそうよ・・」

もう一人、升池もいた。すると突然眩しいほどの光が放たれ全員を包み込んだ。


気が付くとそこは白く淡い光の空間だった。

「此処は何処?」

升池が目を細め様子を伺っている。

「真っ白な光に照らされた場所だな」

マーティンが次に目を覚ました。

「私達も幻覚を見ているのかしら・・?」

升池がマーティンに寄り添った。

「いや・・幻じゃない・・あれを見ろ」

マーティンが言う方向には四人組が楽しそうに窓から外を覗いていた。

「見て!やっぱり地球は青かったのよ!」

「こんな素晴らしい体験するなんで贅沢だわぁ~」

「ほんと感動ものよ!」

「地球がどんどん離れていくぅ~」

窓から見える景色に四人は興奮冷め切れない。

「無邪気ね。・・って感心している場合じゃないわ!これは何処に行こうとしているのよ!」

升池が我に返った。

「ミミーの姿が何処にもいないぞ!」

マーティンは白い空間のそこらじゅうを歩き回り探している。

「たぶん逃げたのよ。彼女はスパイよ」

升池は今まで黙っていた事を打ち明けた。

「スパイ・・?」

マーティンが首を傾げた。

「この任務に就く前から怪しい素振りが沢山あったのよ。帰ったら問い詰めようと思っていたけど無理だったようね。それよりこれは何処に向かってんのよ!」

升池はミミーをスパイと思い込んでいる。

「うわぁー!何か見えて来た!あれが“バイオス”!?」

沙織が歓喜した。窓には緑色に似た蛍光色の惑星が近づいて来ていた。

「あれぇ~!何か大事な事を思い出したかもしれない!今の状況に因んだこんな詩があったの覚えている?」

綾乃がいま思い出したかの様に言った。

「覚えているわよ。“暗明の間の日出でたる宝物の在処に悪魔の抵抗は眩しく赤に染まる朝焼けによってバイオス歓喜す”でしょ!」

翠は既に思い出していた様だ。

「だけどまだ宝の在処が解読出来なくて知らんぷりしてたの?」

由香が気だるく絡みついてきた。

「そんな事ないわよ。気には留めているわよ。そのうち財宝は手に入れるわよ」

翠は惚けて見せた。

「それが今!私達にとってのお宝。その財宝なのよ!」

綾乃が解読不能な事を言ってきた。

「何言っているか分かりましぇーん??」

沙織の頭が混乱している。

「詩の言葉を順に追って今日の私達の出来事を紐解いていくと・・、霧の魔人に誘拐されて暗い洞窟に連れ去られたでしょ。だけど、悪魔っぽい蜘蛛の巣窟だったそこから逃げ出して赤い太陽の地底世界に着いた。そこからUFOに乗って、今バイオスという名の惑星を見てみんなが歓喜した。これこそが私達にとって掛け替えの無い宝よ!」

綾乃が自信満々に説明した。

「なんか強引でちょっと無理がありそうだけど、何故か納得だわ・・」

由香が気だるく頷いた。

「あれがバイオスなのね・・」

四人が覗く窓に、うしろから升池が覗き込んできた。窓から見えるそれは“妖星”(ようせい)という名に相応しい妖しげな雰囲気の惑星だった。

「これからグランドなんとかって言う天体ショーが始まるのよね」

升池の気持ちとは裏腹に沙織ははしゃぎまくっている。

「ごめんなさい・・。もう此処まで来ては何も出来ないわ。私達の世界は・・、地球は・・どうなっちゃうのかしら・・」

升池は足元から崩れ落ちた。

「ここまでやれる事、出来る事はやってきたんだ。あとはもう成り行きに任せようじゃないか・・」

慰めようとマーティンが升池に寄り添い言ってきた。

「あなたは独り者でいいわよ!私には小さい息子がいるんだから!」

升池の顔は泣き崩れている。

「もう直ぐ天体ショーが始まりますよぉー」

悲観に暮れる二人にはお構いなしに能天気な大きな声で沙織が言ってきた。

「もう・・世界の終わりが始まるのね・・」

升池の目から一筋の涙が流れた。


「何だか外が眩しいぞよ」

そのころ学校では藪下が蜘蛛の巣に覆われた窓の外の様子に異常を感じた。

「何と!蜘蛛の巣が消えていく!」

窓に宛がう藪下の顔が反射して窓に写った。窓に張り詰めていた蜘蛛の糸が溶け出している。それと同時に学校の照明も点き始めた。

「天からの思し召しじゃ。この学校を守りきるという大役を召し使った拙者にお慈悲が下ったのじゃ!」

藪下は満足げな顔だ。そこへ本物の特殊部隊が廊下を走って来た。

「廊下は走り申すな!」

藪下は武装した風紀委員と見間違い思わずの風紀委員の習慣で注意した。しかし相手は言う事を聞いてくれる訳もなく藪下の目の前まで走って来た。

「ご苦労様・・」

マスクを被った特殊部隊から確かにミミーの声がした。そして藪下の顔にスプレーが吹き付けられ藪下は倒れ込んで眠っていった。学校にいるみんなが何人もの特殊部隊によって眠りに入るころ、外では巨大蜘蛛は元の住処に退散し、怪しげな霧は天高く消えていった。

その大空では輝く星たちがあらゆる星座を散りばめながら眩いばかりの大きな十字架を描いていた。


「何だか間近過ぎて何だか分からないわね?」

由香の気だるい声が冷めて聞こえる。

「ちょっと何だか、がっかりだわ」

綾乃も期待を寄せ過ぎていた様だ。

「まぁいいじゃない。こんな事もあっても」

沙織も少し諦め気味だ。

「みんなこれって凄い事なのよ!」

翠だけは感動にむせぶんでいる。

「地球では地獄が始まっているかも知れないわ・・」

升池は座り込んだまま涙の筋が残る顔で力無く言った。

「それは帰ってみなきゃ分からないさ」

マーティンは楽天的に言った。

「そうよ!いいように考えなきゃだめよ!」

沙織が升池に言って来た。

「しっ!大人の話に入らないの!」

翠が間に割り込んで来た。と、その時。

「あっ!妖精さんを忘れていた」

沙織が持っていた虫かごから青白い光が抜け出して来た。その光の球は淡い白い光の世界と混じり合いその穏やかな色は皆の気分を安らかにして心地よい眠りの世界へと誘い込んだ。


“みんなが住んでいる地球はみんなと同じように生きているの。みんなと同じように呼吸をして、起きて、動いて、眠ったりしているの。バイオスも同じ。ただ自分と同じ地球の存在を感じて近くまで遊びに来ただけ。悪い事はしないわ・・”


夢の中でこんな囁き声が聞こえて来た。それは妖精の囁きかバイオスという名の生きた惑星の声なのかは分からない。その声は目が覚めると同時にうっすらと記憶から消え、そこはもといた森の中だった。


「私たち今まで何していたのかしら?」

翠が寝ぼけ眼で言ってきた。

「忘れないでよね!妖精を探しに来たんじゃない」

沙織が寝ぐせの付いた髪を立てて言った。

「ついでに巨大鳥も探しに来たんでしょ」

由香が大きなあくびをしている。

「ねぇ遠くの方から西園寺の声に似た悲鳴が聞こえない?」

綾乃は背伸びをしながら言った。何処からともなく西園寺の声がこだましている。

「妖精か巨大鳥の鳴き声かもしれないわ!早速行きましょう!」

翠の掛け声でみな飛び起きて、学校からいなくなった西園寺の叫び声がする方向へと走り出して行った。


「これは大佐とは知らずご無礼を致しました」

地球防衛軍本部の一室で升池は直立で敬礼をしている。

「俺も知らずに偉そうに言ったりしまって申し訳ありません」

升池の隣でマーティンも同じように敬礼している。

「今回の任務で一隊員としてあなた達の行動を観察してもらったわ。だけど結局生還出来たのは私達だけになったわね。フィリックや大勢の隊員が殉職したのは残念だけど何とか未知のエネルギーも手に入ったわ。これでまた地球の科学技術も進化するわね。そしてあなた達はリーダーとして合格よ。それではまた次もよろしく頼みますわ」

二人の前にはミミーが立っており意味ありげな言葉を含み二人に敬礼した。


「またいい研究材料が手に入りましたね」

「この未知のエネルギーがあれば、これで我が部の今後の発展も望めます」

「それでは実験を始めていきましょうか、フィリック教授・・」

今日一日、大騒動があった学校の誰もいなくなった放課後。とある部室では何やらこんな怪しげなやり取りが行われていた・・。



※今回のウィキペディアで検索してみよう!※

●プラキオサウルス

●ティラノサウルス

●ビックフット

●フライングヒューマノイド

●地底世界アルザル

●地球空洞説

●グランドクロス

●妖精

●第六話・妖精を見た!(全五幕)



●出演者


オカルト研究会メンバー

早乙女沙織、鷹塚翠、飾磨由香、栗須川綾乃


●ゲスト出演者


升池真夢、ミミー・マクグーハン、フィリック・ランバート、マーティン・ビシェップ、ほか特殊部隊員

生徒会会長・西園寺公佳

生徒会員たち

風紀委員長・藪下真紀

風紀委員特殊部隊たち

謎の生徒の声



※この物語はオカルト研究会の四人組のドタバタコメディのフィクションであり実在の個人名、団体名、建物名、本のタイトルなど一切関係はございません。

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