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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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吸血鬼を追え!・第二幕・朝焼けの悪魔

その日は透き通る水色一色の夏初めの空、気持ちの良い涼しい風が吹き流れ、心地よい気温の過ごしやすい日であった。レーサー並みの執事の琴原の運転で山道を駆け上り思っていた予定より早く目的地に到着した。

「それでは明日の今頃の時間にお迎えに参ります」

そう言い残して執事の琴原は巧みなハンドル捌きで滑走して帰って行った。

「それじゃまず、テントでも立てて此処を基地としますか」

翠は足元のほどよい広さの草原を見て皆と一緒にテントを広げた。・・で二時間後。

「初めて見たわ二階建てのテントって!」

翠が背の高いテントを見上げている。

「そりゃ組み立てに時間が掛かるわよ」

由香もへとへとだ。

「いい風が吹いてても汗だくよ」

沙織は首にタオルを巻いた。

「じゃ私は二階に行こうっと」

綾乃はうちわを仰ぎながら先に場所を決めた。

テントの中はやっぱりそこそこ立派なもので四人が入っても余裕の広さで、しかも綱梯子で上の階に登れば窓もあり外の景色を見下ろせる様になっている。四人は各自の荷物を持ち込んだ。

「大きなリュックねぇ」

由香が綾乃の重たそうに置いたリュックサックを見た。

「この一週間で読み切れる訳ないから本を貸し出して来たの」

綾乃はリュックサックの中から大量の本を取り出して置いていった。

「なになに“わかりやすい吸血鬼大図鑑”!?」

沙織が素早くやって来た。

「そうよ。他にも“誰でもすぐ分かる世界の暗号回読大辞典”に郷土風土の歴史の参考資料の大辞典が幅を占めて重いのよ」

綾乃が大きな息を吐いた。

「今回の事件に関する書物ね。で、何か分かった」

沙織がおどろおどろしいイラストの入った吸血鬼の本を見ながら綾乃に聞いてきた。

「で、そう言うあなた達も食材は用意してるぅ」

話に割り込んで翠が大きなリュックサックを持ち込んだ。

「あっ!たりまえじゃない!ちゃんと持って来ているわよ!」

沙織がⅤサインをした。

「お肉にお野菜に今夜のメインディッシュでしょ!」

由香も嬉しそうに笑った。

「その通りバーベキューセットもバッチリよ!」

翠のリュックサックからバーベキューの道具を勢いよく放り出した。四人とも頭の中は今夜の目玉の宴で大はしゃぎだ。

「その前にティータイムしましょう」

綾乃が後ろからカップとポットを手に持って声を掛けてきた。四人は分厚い本と資料を囲み円になり紅茶を飲んだ。

「それじゃ昔ここに村があったのね」

翠はホットのレモンティーだ。

「いつまでとは詳しく明記されていないけど・・そう、人知れずひっそりとね」

綾乃はアイスのミルクティーを飲んでいる。

「それが忽然と一夜にして住人がいなくなった!?」

由香はホットのストレート。

「幻の古代文明の様な感じね。興味をそそるわぁ」

沙織はアイスで砂糖たっぷりミルクたっぷりだ。

「それで何年か過ぎた後に廃村になった広い敷地をレジャー施設が引き継いでこのキャンプ場が出来たってわけ」

綾乃は思いっきりストローで吸い込み氷が軋んだ。

「吸血鬼は出てこないの?」

沙織もストローで吸い込み氷を軋ませた。

「まだ関連性は見えないけど、それよりこの土地がちょっとした曰く付きの場所らしいのよ」

「えっ!なになに!どんな話!」

綾乃の興味深い話に他の三人は喉を詰まらせた。

「その昔この周り一帯は妖怪の住処だったらしいんだけど・・。それもどういった解釈なのかこれから詳しく調べてみるわ」

「あとの暗号は解明できた部分はある?」

翠は気品に一口飲んだ。

「雰囲気的な意味は吞み込めるけど今までの私達の先輩方々がその点は既に推測して解明済みよ。みんな考える事は同じだもの。だけどバイオスってのが曲者ね。引っかかるわぁ」

皆は綾乃に向けて質問が山盛りだ。

「それよりこの詩は唄なんだからタイトルを考えてきたの“朝焼けの悪魔サタン”ってカッコいいでしょ」

沙織はストローで今度は一気に最後まで残らず吸い込んだ。

「それじゃまだ日が照っている間に付近を調べに行きましょう」

翠はお上品に飲み干した。

「私はテントで見ていない所も合わせてもう一度読み返して調べてみるわ」

綾乃は空になったカップを置いた。

「それじゃ行きますか」

猫舌の由香が最後に飲み干した。


♪暗明の間の日出でたる~宝物の在処に~悪魔の抵抗は眩しく~赤に染まる朝焼け~♪

三人はコーラスを奏でてリズムを刻み行進しながら探索を続けている。

「ほんとにこれって埋蔵金の唄なの?」

アルト担当の由香に疑問が湧いてきた。

「そんな身も蓋も無い事言わないでよ。信じて行動するのみよ!」

ソプラノ担当の翠はどこからそんな自信が湧いてくるのだろう。

「まずはこの歌詞が書かれてある洞窟を探すのが先ね」

メゾソプラノ担当の沙織には勇気が湧いてきた。

今しばらくハイキングコースを歩いていると道しるべを記す案内標識が立っていた。

「鍾乳洞はこっちっ!」

沙織は標識の向かっている矢印と一緒に指を差した。

「割と簡単に洞窟が見つかったわね」

由香は呆気に取られた。

「前人未到の探検の気分がズレるわねぇ」

翠も拍子抜けした。まぁ考えてみれば此処は基本整備されたキャンプ場である。案内標識や舗装された道は当たり前である。矢印の向けられた方向に少し歩くとぽっかりと大きく口を開けた洞窟が見えてきた。中へと入ると天井はかなり高く頭上からは鍾乳石がいくつも垂れ下がっている。大きく広がった奥への道はスポットライトが照らされ神秘的な世界を映し出していた。

「奇麗な場所ねぇ」

翠が周りを見渡し感動している。

「奥に入ると涼しいわぁ」

沙織の汗ばんだ体には最適だ。

「この前私達こんな所に来たかしら?」

由香は考え込んだが思いつかない。

「見て見て!最高!温泉が湧いているわ!」

沙織が大きく窪んだ岩肌に沸き立つ温泉を見つけた。

「うぅ~ん、いい湯加減ね。これで食後のお風呂は問題ないわ」

翠は少し熱めのお湯が好みである。

「見て!二人とも!この壁の模様!」

由香の持っていた懐中電灯が温泉を囲む壁を照らした。そこには象形文字、古代絵文字、また奇妙な図形など一面に描かれていた。

「まるでお風呂屋さんのタイルに描かれた絵の様ね」

「と言うよりも、落書きっぽくない?」

翠と沙織はさほど関心が無さそうだ。

「取り敢えず写真に撮っておくわ。問題の暗号文もどこかに書いてないかしら」

由香はデジタル写真部から借りているカメラを構えた。例の詩は三人で細かく探したが一向に見つかる事は無かった。

「いっけなぁい!もうそろそろ日が暮れる時間よ。早く帰ってディナーにしましょう!」

翠は時計を見て慌てて二人を駆り立てた。

「ヤッホー!バーベキューよ!」

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