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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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標的にされた学校・第三幕・汚染されていく生徒達

四人と黒木先輩と人形は学校の様子を伺いに校舎を歩いていた。弱いながらも雨が降り続いて湿気で曇った窓を叩いている。今は休み時間なのか廊下には何人かの生徒が出ておりこんな噂話をしていた。

“何だか裏山を切り崩して大きな高層ビルを建てるらしいよ”

“大きなマンションも建って都市化が進むらしいわ”

“高速道路も空港も出来るみたいよ”

“ところで今日転校してきた瀧川くん素敵よねぇ”

“優しそうだし、格好いいし、瀧川くんの言う事は何でも聞いちゃうわぁ”

“やっぱり瀧川くんが一番よ!”

などと言った始めは噂話の会話が転校生の話題に持ち切りに成り、行き交う道中そんな話が飛び交うなか四人と黒木先輩と人形は聞き耳を立てながら歩いていた。

「今日来た転校生評判いいわね」

沙織がどんな子か想像した。

「ところで今の噂話、昨日まで聞いた事ある?」

翠が聞いた事も無い顔をしている。

「いやこれは行き成り今日から、しかも強引に始まろうとしているわ」

綾乃は歩きながら異様な雰囲気を感じている。

「そう言えばアジトを出たとき体育館に大きく“田舎町都市化推進”と垂れ幕が掲げてあったわね」

由香が思い出したかのように気だるい声が大きくなった。

「馬鹿にしているわね!そんなに慌ててまでしてビルを建てたいのかしら」

沙織は頭かんかんだ。

「それで急に今日に限って道路に工事車両が溢れ出していたのね」

黒木先輩は朝早くから列を成す工事車両を不思議に思っていた。

「それは明らかに森林破壊よ!頑固阻止しましょ!」

沙織はまた余計に頭かんかんだ。

「大丈夫。私達の道を守ってくれるお地蔵さんがいま沢山集まって結界を貼って邪魔者達の行く手を阻んでくれているよ」

人形が喋っているのか腹話術かどちらとも分からない。

そこへ慌てた様子でオカルト研究会顧問であるおうし座の光明寺春江先生が走り込んで来た。

「あっ!これまたお久しぶりです。今日は懐かしい人とよく会うわね」

翠が驚きの様子で挨拶した。

「先生そんなに急いでどうしたんですか?」

綾乃が光明寺先生の尋常じゃない慌てぶりに驚いている。

「あぁ皆、いま職員室が大変なのよ!都会の学校に行きたいって生徒達が転入届を出しにわんさか詰め掛けているのよ。それに他の先生達も同じように都会に移ろうとしているわ」

光明寺先生はそれで他のクラスの様子を見に来たのだという。

すると今度は悍ましき形相で西園寺が走り込んで来た。

「何て格好してんのよ」

翠がお祭りに着る法被姿の西園寺を見て言った。

「仕方ないでしょ!お分かりの様に学生服がびちょびちょで着る物が無かったんだから!そんな事より私の生徒会が言う事聞かなくなっちゃって、てんてこ舞いなのよ!」

西園寺がヒステリックに言った。

「私の・・、何か引っ掛かりますなぁ」

由香は疑り深い目で言った。

「風紀委員が私の生徒会に乗り出して来たのよ!それで此処まで逃げて来たの!」

西園寺にとっては生徒会は自分のものなのだろう。

「思い込みが激しいわね」

沙織は呆れた様子だ。そこへ、

「お前達そこでじっとしていろ!」

そんな怒鳴り声が廊下の端から大きく聞こえてきた。

「やばい風紀委員の連中よ」

西園寺がしゃがみ込み隠れた。

「休み時間はとっくの昔に終わったのに何しているんだ!」

気が付くと廊下には周りで噂話をしていた何人かの生徒の姿は跡形も無く自分達だけがぽつんと固まり合っていた。

「今からは講堂で全校集会をする時間だから全員をそこまで連行する!」

風紀委員の腕章を付けた二人の女生徒が駆け寄って来た。

「そんな事他の先生からも聞いていないわ?」

光明寺先生は一人除け者にされている様だ。

「風紀委員長と瀧川様から全校生徒に大事なお話があるんだ」

二人の風紀委員は急いで早く歩く様に背中を押して促した。

「瀧川様・・?何様なの・・」

沙織は風紀委員に背中を押されながら腹立たしさを覚えた。風紀委員に連行される道中、由香が窓から降りしきる雨のなか学校を出て行く学生達や教師の姿を覗き込んだ。

「あの人達は何故に帰って行くの?」

由香が風紀委員に聞いた。

「あぁ、あの者達はこの学校を捨てた連中だ」

風紀委員の一人が曇った窓から覗き込み言った。光明寺先生が言っていた都会に行く者達だろう。そうこうしている内にようやく講堂に着き重い扉を開けた。そこには大勢の生徒達が直立して舞台の上に立つ瀧川康介を直視している。四人達は一番後ろに立たされた。

「今から瀧川様から皆に大事なお知らせがあるから聞く様に」

横に立つ風紀委員長の時代劇好きの藪下真紀が十手を持ってマイクをハウリングしながら伝えた。

「始めに素直な皆さんにお会いできて僕は幸せ者です。さぁ今が皆さんの決断の時です!何でも揃った便利な都会に移るのも良し。それかまた今まで通りこの住み慣れた不便で何も無い田舎生活から周りの環境を改造して山を崩しビルを建てて、何でも揃った便利で住みよい生活が出来る都会の様に、この田舎を煌びやかな街に変えていきましょう!」

瀧川康介は壇上に立ち注目する全校生徒に向かって呼びかけた。

「ウォーー」

生徒達は一斉に大歓声を上げた。

「あの子が転校生?何か訳の分からない事言っているけど可愛い顔しているじゃない」

翠が眉間にしわを寄せ言った。

「皆いい様に手懐けられているわね」

由香が目を細めて言った。

「今日、現在の時刻より風紀委員会の方針は瀧川様を軸にした規律ある学生生活を基にする」

また藪下がマイクをハウリングしながら言っている。

「生徒会あっての風紀委員よ!生徒会の決定で動いて貰わないとこっちが困るわ!そう勝手にはさせないわよ!」

西園寺は風紀委員会に個人的に恨みがあるようだ。

「こんな田舎でも都会よりいい所は沢山あるわよ!」

いつもは大人しい綾乃が大きな声で噛みついた。

その大声に全校生徒達が反応して一斉に振り返った。その生徒達の四人達を睨む目は鬼の様な赤い目になっていた。

「皆の目が兎みたい」

翠が震えあがった。

「お前達はこの瀧川様のご提案に逆らう気か!」

藪下がまたマイクをハウリングしながら言ってきた。

「そうよ!おいしい空気とおいしいお水に澄み切った青い空が此処にはあるわよ!都会の汚れた空と違って夜空に星が奇麗に見えるのも都会には無い事でしょ!」

沙織も負けじと被り付いた。

「自然に囲まれた緑の山を崩すなんて許せないわ!」

由香も追い打ちをかけた。

赤い目をした生徒達はじわじわと四人に迫り寄っている。

「みんな目を覚まして」

光明寺先生は脅えながら迫りくる生徒達を宥めた。

「やるかぁー!かかってこい!」

黒木先輩が持った人形がファイティングポーズを取った。

「うるさいっ!皆の者その者達をひっ捕らえろ!」

藪下はマイクを大きくハウリングして怒鳴った。

赤い目の生徒達は四人達に飛び掛かり抑え込もうとした。

・・その時、

「ニャーァーー!」

真後ろの扉がゆっくり開き見覚えのある一匹の猫が放り込まれた。

「みんな早くこっちよ!」

園芸部部長のてんびん座の和中妙子が扉の隙間から顔を覗かせ四人達を手招きで呼んでいる。

「輔清~」

由香が愛おしい顔で呼んだ。

そこには野良猫の輔清が赤い目の生徒達と悪戦苦闘しながら奮闘している姿があった。

「早く皆この隙に逃げるのよ」

四人達は妙子に促されながら一目散に逃げだした。

この時の瀧川康介は壇上から講堂から飛び出していく四人の姿をにんまりと笑いながら眺めていた。

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