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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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標的にされた学校・第二幕・不穏な前兆

それから豪雨の勢いは収まり、小粒の雫となった雨が止め処となく空から降りてくる程の量となって来た。四人はミミズ男達を空いている飼育小屋に集め、気絶している西園寺を保健室へ担ぎ入れ、自分達はアジト・・居心地の良い部室へと帰って行った。

「雨はまだ降っているわね」

翠が分厚い重いカッパを脱ぎながら言った。外からは雨の降る音が聞こえている。

「勢い余って小屋に押し込んだけどミミズ達に餌やらなくていいかしら?」

綾乃もカッパを脱ぎながら心配そうに言ってきた。

「栄養のある土の中で育って、あれだけ丸々と太って、今日の雨で充分水分も摂っているんだから大丈夫よ」

沙織が濡れたカッパをハンガーに掛け軽い調子で言ってきた。

「まさかこんな時季にストーブ出すとは思わなかったわ」

由香が焚いたストーブの周りに濡れた学生服や靴など並べていった。

「朝からこんな騒ぎで転校生の顔を見る事が出来なかったわね」

翠がびちゃびちゃで気持ちの悪い靴下を脱いでいる。

「そうそうすっかり忘れていたわ」

沙織はもう既に裸足で体操服姿だ。

「あとでどんな子か見に行きましょう」

綾乃は冷えた体をストーブに当たって温めている。

「あっ丁度いいところにお餅があったわ」

翠がそう言うと誰がいつ置いたか分からないお餅の封を開けストーブの上に置いた。

「ねぇあなた達勝手に私のお餅食べないで」

ドアが少し開いてその隙間からフランス人形が顔を覗かしている。

「キャー!!」

四人は鳥肌が立ち血の気が引いた。

「お久しぶり私よぉ。それ年明けに来た時に置いた鏡餅よ。カビていない?」

先に顔を出しているフランス人形の後から先輩であり幽霊部員のおとめ座、黒木美紗が顔を出した。

「あっ!黒木先輩ビックリした!」

四人はほっとして全身の力が抜けた。

「また此処でさぼっているのね。一時限目が終わりましたよ」

黒木先輩が腹話術の様に人形の表情を変えながら喋っている。

「えっ!もうそんな時間だったの」

沙織は我に返り時計を見た。

「という私も遅れて学校に着いたんだけどね」

まだ人形が喋っている。

「まぁ今日は嵐だったし大目に見て貰えるでょ」

綾乃がストーブの上のお餅をひっくり返した。

「・・で、遅れて教室に入ったんだけど何かいつもと雰囲気が違うんだよね。みんな何かに取憑かれるのか、魂を抜かれているというのか、腑抜けになっちゃっているのよ」

また人形が喋り続けている。

「えー皆どうしちゃったんだろ?」

由香が膨らんだお餅を見ている。

「それにバス道が自棄に騒がしいのよ。何だか多くの工事車輌の車がやって来て一杯よ!」

なんだか大袈裟に人形が騒いでいる。

「何が始まるのかしら?」

翠がお餅を一つ旨んだ。

「そこで何だか嫌な予感が走ったんでお地蔵さんを呼び集めて渋滞させてやったわ!」

そして人形が高らかに笑った。

「ところで先輩もう腹話術はいいですよ」

沙織がお餅を伸ばして食べている。

「私は何も言ってないわ。この子はお喋りなのよ」

黒木先輩は無表情のまま冷静に言った。

「じゃクラスメイトの皆も学校の外も何か変な事が起こっているという事ですね」

翠はお餅を口に含みつつ強張った表情になった。

「だから先っきから私が言っているじゃない。今日という日は仏滅よ。何かが起こる前ぶれよ」

また人形が喚きだした。

「それ初めて聞くんですけど・・」

由香がお餅を伸ばし頬張りながら言った。

「それじゃ今から皆の様子を見に行くわよ」

翠が最初にお餅を食べきった。

「今からこの格好で!まだ服も乾いていないのよ」

沙織は指にくっ付いたお餅をしがんでいる。

「ところで私の分残っている?」

人形と黒木先輩が一緒に言った。


四人とも紺のジャージを上から羽織り黒木先輩と一緒に部室から出て行ったあと人目を気にしながらこっそりと瀧川康介が部室に忍び込んで来た。

「思った以上に凄い部屋だな」

瀧川康介が辺りを見渡しそう言った。その部屋はいつもの様に絢爛煌びやかに散らかった独特の雰囲気を醸し出している。普段毎日見る光景なら慣れて何とも思わないが全く目にしない者にとっては何とも悍ましい場所に見える。最初は何かを探すようにガサゴソと至る所を物色していたが、何かを感じ取ったのか一つの方向に視線を向けた。

「霊気を感じる。あそこにありそうだ」

瀧川康介が獣の様な声に変わった。その足取りは他の物には目もくれず和箪笥に向かいひとつの引き出しを開けた。そこには桐箱に入った般若の面が置かれていた。

「これがあれば本領発揮できる」

獣の様な声がはっきり言った。とその時、乾かす為に広げていた番傘が瀧川康介に向かって回りながら飛び掛かって来た。

「何だこいつ!」

獣の声は番傘を跳ね除けかわした。

「邪魔な奴だ!」

獣の声がそう言うと瀧川康介の口から火を噴き番傘を火達磨にした。そして何もなかったかの様に部室を後に般若の面を持ち去っていった。

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