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七つの滞在 〜オタク男子の平穏な日常を破壊する、最強の美少女悪魔たち〜  作者: ほさ
堕天した天剣

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【試験の行方】

――ドサッ。

生気を失った肉体が、まるで糸の切れた人形のように力なく地面へ倒れ込む。

「……マ……マリル……ちゃん……?」

ウリエルの声が激しく震えた。状況を頭が拒絶しそうになるのを振り払い、彼女はバッと駆け出して友の元へ寄ろうとする。

だが、その直前――血の滴る凶悪な刃の鋒(きっさき)が、冷たくウリエルの目の前に突きつけられた。

「……っ!?」

息を呑み、足が凍りつくウリエル。

「……キミモシンデ……シンデ……シンデ……」

深くかぶったフードの奥から、怨嗟の篭った不気味な声が漏れ出る。

「あなたが……! マリルちゃんをっ……!!」

激昂したウリエルは瞳に怒りの炎を宿す。

しかし、フードの受験生はその感情すら完全に無視し、機械的に剣を高く振りかぶった。

「くっ! 『ウインドカッター』!」

ウリエルが叫ぶと同時に、剣を構えるフードの周囲に鋭利な風の刃が渦を巻き、ヒュンヒュンヒュン! と甲高い音を立ててその肉体を容赦なく切り刻む。

「ウリエル! その子は!?」

爆風を突き破り、上空からガブリエルが急降下してきた。

「ガブリエル様! マリルちゃんが……!」

「私が急いで回復班の元へ連れて行くわ!」

ガブリエルは倒れたマリルを優しく抱き上げると、一刻を争う速さで上空へ飛び立った。

「お願いします……!」

祈るように去りゆくガブリエルを見送るウリエル。

だが次の瞬間――背筋を走る強烈な殺気に、ウリエルは「はっ!」と我に返り、全力で真横へ跳躍した。

――ガアンッ!!

鈍い衝撃音が響き、つい先ほどまでウリエルがいた場所の石畳が凄まじく砕け散る。そこには、全身を風の刃で切り刻まれ、血を流しながらなおも剣を振り下ろしたボロボロのフードの男が立っていた。

「そんなボロボロの身体で戦ったら本当に死にますよ!? お願いですから棄権してください!」

「シネ……シネ……シネ……シネシネシネシネ!!」

ウリエルの必死の説得など一切届かない。フードの男は壊れた機械のように呪言を呟き続ける。

「あーもう! なんなんですか一体!」

ウリエルが再び臨戦態勢を取ると、男はノーモーションで走り出し、再び剣を振りかぶった。

「盾よ!」

ウリエルが腕を突き出すと、その前方に光り輝く透明な障壁が展開される。

――カキンッ!

振り下ろされた狂刃を盾で見事に受け止めると、ウリエルはそのまま腕に力を込めて剣を力任せに押し返した。

「『カマイタチ』!!」

叫びとともに解き放たれたのは、先ほどの術式を遥かに上回る密度の嵐。

スパンスパンスパン! と鋭い音が連続して鳴り響き、凄まじい勢いの風刃がフードの全身を絶え間なく深く切り刻んでいく。

「はあ……はあ……。もう、終わりです……!」

息を荒らげながらウリエルが吐露する。普通なら到底生きてはいられないほどのダメージ。

全身から血を吹き出し、無数の裂傷を負ったフードの男。……しかし、その男は絶え間なく肉体を削られながらも、死人のような足取りでゆっくりと前へ歩き出し、ウリエルとの距離を詰め始めた。

「なっ!? なんで……!? なんで立っていられるの!?」

あまりの異常さにウリエルの顔が引きつる。

激しい風圧によって男の服はズタズタに引き裂かれ、深く被っていたフードも勢いよく弾き飛ばされた。

「――っ!?」

その頭部が露わになった瞬間、ウリエルは絶句し、目を見開いた。

切り刻まれた額の上、髪をかき分けるように生えていたのは――他のどの天使にも存在しない、禍々しく黒々とした一本の「角」だった。

「な、あなた……。天使じゃないんですか……?」

震える声で尋ねるウリエル。

すると男はクッ……とわずかに姿勢を低く構え、背中から「バサッ!」と純白の羽根を出現させた。

その羽は間違いなく、聖なる天使の翼だった。

次の瞬間――男はその翼を力強くはためかせた。

――ギュンッ!

「あっ――」

一瞬。世界が置き去りにされるほどの極小の間合い詰めに、ウリエルの思考も反応も完全に追いつかない。

ハッと気づいた時には、目の前に冷たく光る死の刃が迫っていた。

「しまっ――!!」

死を覚悟し、思わず目を強く瞑るウリエル。

刃が彼女の皮膚を裂く――その間一髪の直前、バサッ! と強烈な風切り音とともに、何かがウリエルの身体を横から力強く攫(さら)っていった。

「へ……?」

恐る恐る閉じた目を開けるウリエル。

自分の視界に入ってきたのは、自分をしっかりと横抱きに抱え上げ、悠々と上空へ飛び上がっていく頼もしい背中――ルシファーの姿だった。

「お姉様……!?」

「あんたの負けよ、ウリエル。……手助けしたこと、悪く思わないでね」

冷静な、だがどこか焦りを孕んだ声でルシファーが告げる。

「……はい。ありがとうございます」

「……ガブリエルから様子のおかしい受験生がいるって聞いて駆けつけてきたけれど、なんなのよアレは」

眉をひそめるルシファーに、ウリエルは声を落として答えた。

「わかりません……。あの人、私の天魔術を正面からまともに受けているのに、痛がる素振りすら見せずに立ち上がって襲いかかってくるんです。それに……あの角……」

「……まるで魔界の魔物みたいね」

ルシファーが吐き捨てるように呟いた、その時――。

空間を切り裂くように、浮遊するルシファーのすぐ背後へと躍り出る影があった。

――カアンッ!!

鋭い金属音が空中に激しく突風を巻き起こす。ルシファーは咄嗟に腕に剣を出現させ、背後から襲いかかってきた男の刃を空中できギリギリ防ぎ止めた。

「くっ! もう終わりにしなさい! やめなさい!」

「……スコロス……コロス……コロス……」

男はぶつぶつと気味の悪い呪詛を吐きながら、空中でギシギシと狂気的な力で剣を押し込んでくる。

「やめなさいって言ってるでしょ!!」

ルシファーが剣を一気に振り抜くと、その絶大な衝撃波に耐えかねた男は弾き飛ばされ、そのまま地上へと一直線に叩きつけられた。

「完全に頭がおかしくなっているわね。……ウリエル! 少し待っていなさい」

ルシファーは地上へと急速降下すると、ウリエルを優しく足元へ下ろした。

「お姉様は……?」

「決まってるでしょ? あいつを止めるわ」

そう言い捨てると、ルシファーは躊躇うことなく、土煙が上がる方へと歩みを進める。

煙の奥から、叩きつけられたはずの男がグググ……と不気味に立ち上がり、ゆらりとルシファーの方へ向かって歩き出していた。

不吉な影がコロシアム全体を包み込み、大天使試験は最悪の事態へと向かって加速していく――。

忙しすぎて更新が出来ず…

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