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七つの滞在 〜オタク男子の平穏な日常を破壊する、最強の美少女悪魔たち〜  作者: ほさ
異世界転移悪魔最強決定戦

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『金より愛の力なんです!強欲の悪魔マモン対嫉妬の悪魔レヴィアタン』

「よし、じゃあ先に始めろ!」

 蓮華さんのぶっきらぼうな号令が草原に響き渡る。

「さっさと終わらせますわよ」

 マモンが不敵に微笑みながら、その手に一対の絢爛豪華な黄金の拳銃を出現させ、銃口を向けた。

「私も負けませんよ。王子様のために」

 対するレヴィアタンも、深い青色の瞳に冷徹なまでの光を宿して身構える。そんな二人の一触即発の空気を眺めながら、僕は恐る恐る隣に声をかけた。

「レヴィアタン……って実際、強いんですか?」

「どうかしらね。ただ、一つだけ確かなのは、何かに固執した時のあいつは魔界一めんどくさいってことくらいよ」

 教えてくれたルシファーの横から、ぬっと白髪の頭が割り込んでくる。

「ねえ、拓巳〜❤ あんな品のない戦いなんてどうでもいいから、私とイチャイチャしましょ?」

「うわっ、ちょっとサタン、腕を絡ませないでください……!」

 僕の首に腕を回してくるサタンを必死に引き剥がそうとしていると、ルシファーがやれやれと首を振って付け足した。

「あんたねえ……。あ、そうだわ。サタンなんかよりも数倍『厄介』って言った方が、今のあんたには分かりやすいかもね」

「……サタンよりも厄介?」

 全力でくっついてくる【憤怒】の魔王を邪険に押し戻しながら、僕はゴクリと生唾を飲み込んだ。

 そんな僕たちの雑談を置き去りにして、戦場では早くも激しい火花が散り始めた。

「ハワイではすこし遅れを取りましたけど、今度は蜂の巣にしてあげますわ!」

 マモンが草原を華麗に滑走しながら、二丁の黄金銃を限界以上の速度で連射する。放たれた無数の弾丸が、一筋の光の雨となってレヴィアタンへと殺到した。

「ふんっ!」

 だが、レヴィアタンが短く息を吐くと同時に、彼女の右腕がドス黒いクラーケンの触手へと急激に変貌した。肉厚の触手が盾のように目の前を覆い、迫り来る銃弾を次々と弾き返していく。

「またその見苦しいタコになるつもりですの? わたくしの『強欲の黄金雨ゴールドラッシュ』で蜂の巣にして差し上げますわ!」

 マモンの叫びと共に銃撃の密度がさらに跳ね上がり、レヴィアタンの巨大な触手が高火力の弾幕によってガリガリと削られ、徐々に小さくなっていく。

「――まだです!」

 レヴィアタンが鋭く叫んだ瞬間、その触手の表面に、まるで深海魚のような黒光りする硬質の鱗がびっしりと生え揃った。

 キィィィン! カァァァン! と甲高い金属音が鳴り響き、それまで肉を削っていた金の弾丸たちが、今度は嘘のように次々と弾かれて霧散していく。

「チッ! なんて忌々しい厄介な鱗ですの! ならば……!」

 舌打ちを一つ、マモンは一瞬で銃撃を止めた。

「よっ!」

 気合の声と共に、二丁の黄金銃を空高くへと放り投げる。そしてマモン自身も、悪魔特有の跳躍力でその後を追うように遥か高空へと舞い上がった。

「行きますわよ! 『強欲の黄金掘ゴールドラッシュ』!」

 マモンが空中を掴むと、落下してきた二丁の黄金銃が瞬く間に巨大な黄金の傘へと姿を変えた。彼女はその柄を両手でしっかりと握りしめ、傘を開いたまま凄まじい速度で回転を始める。超高速の回転に伴い、周囲には煌びやかな金粉が激しく舞い散った。

「ど、ドリルだ……。完全にドリルになってる……」

 予想外の物理攻撃に、僕は呆然と呟く。

「ほんとに品がない技だな〜。頭が悪そうだぜ」

 観客席でポテトチップスをムシャムシャと食べながら、ベルゼブブが呆れたように鼻で笑う。

「自分の欲望をそのまま物理的な形に変形させる武器……。いかにも強欲らしい泥臭い技ね」

 ルシファーの冷静な解説が響く中、まばゆい光を放つ高速回転のドリルと化したマモンが、重力に従ってレヴィアタンめがけて一直線に突き刺さった。

 ガツン!!!

 レヴィアタンの鱗の触手に激突し、ズガガガガガ……! と火花と轟音を撒き散らしながら、マモンはさらに回転速度を上げていく。

「ほらほらほら! そのまま綺麗に貫いて差し上げますわ!」

「……ふっ。私の……勝ちです」

 火花が散る至近距離で、レヴィアタンが妖しく唇を歪めてぽつりと呟いた。

「え?」

 マモンが不審に思った、まさにその瞬間だった。

 突如として、あれほど猛烈だったマモンの高速回転がピタリと停止した。

「あが……っ。な、なぜ……」

 マモンが苦悶の声を漏らす。彼女の死角――地面の影からいつの間にかニョキリと生え伸びていた、もう一本のレヴィアタンの触手。その先端がきりのように鋭利に尖り、マモンの背中を真後ろから容赦なく貫いていたのだ。

 ずっ……。

 無慈悲に触手が引き抜かれ、マモンはそのまま地面へと力なく落下した。

「なぜ……わ、わたくしの『欲望のデザイア・センス』が働かなかったのですの……?」

 地面に伏せ、痛みに顔を歪めながらマモンが困惑の声を絞り出す。

「相手の敵意や欲望の動きを事前に読み取るマモンさんの能力は……私の『純粋な愛』の前では全くの無意味です!」

 レヴィアタンは誇らしげに胸を張って言い放った。

「は、はあ……? 愛って何ですのよ……」

「ふっ。つまりレヴィアタンの全ての意識と愛が拓巳だけに100%向いているせいで、戦闘における『他者への欲望(敵意や殺意)』がノイズとしてマモンのセンサーに引っかからなかった……ってことね」

 なるほど、と納得したようにルシファーが腕を組む。

「そ、そんなシステム上のバグみたいなのアリなんですか……」

 ヤンデレの超理論に、僕は引きつった笑いを浮かべるしかない。

「むきー! なによそれ! 私の方が拓巳のことを宇宙一愛してるのに!」

 当然のようにサタンが嫉妬で暴れ出すが、ルシファーはふふんと鼻で笑ってそれを一蹴した。

「あんたもレヴィアタンも、そんな一方通行な愛なんて自己満足で何の意味もないわよ」

「な、なんだか今回のルシファー、妙に余裕しゃくしゃくですね……」

「私、気づいちゃったのよ。サタンやレヴィアタンの愛し方って、推しを見つけたド新規のオタクみたいに一方通行だってことにね! 要するに、拓巳の『意思』が不在なのよ!」

「な、ななななによそれーっ!」

 ルシファーの的確すぎるメタなツッコミに、サタンが顔を真っ赤にして反論する。

「はあ……。何言ってんだ、この人たちは……」

 僕は頭痛を覚えながら、とりあえず戦場へと目を向けた。

「……ふっ。今回はわたくしの負けでいいですわ。これ以上の『強欲の錬金ゴールドラッシュ』を続けるのは、あまりにも採算が合わなすぎて赤字ですもの」

 マモンは背中の傷を押さえながらも、すっと何事もなかったかのように立ち上がり、優雅な足取りで観客席へと歩いて戻ってきた。

「えっ? 普通に元気そうなんですけど……!?」

「おそらく、自分の【強欲】の金塊の魔力を消費して、一瞬で肉体を治療したのかしらね〜」

 アスモデウスがクスリと笑う。

「か、金の力恐るべし……!」

「いやいやおかしいでしょ! どんな等価交換なのよっ!」

 僕が戦慄する横で、エヴァさんの至極まっとうなツッコミが飛んだ。

 レヴィアタンも異形の触手を霧のように消し去り、満足げな顔で観客席へと戻ってくる。

「王子様! 私、勝ちました! このまま優勝まで全力で頑張ります!」

 彼女はまっすぐに僕の元へと駆け寄るなり、僕の両腕をぎゅっと胸元に抱きしめた。

「あー! ちょっと泥棒猫! 勝手に拓巳の手を握らないで、離れなさい!」

 それを見たサタンが般若の形相で間に割って入る。

「うるさいです! 私の王子様なんですから、どこを触ろうと私の勝手です!」

「私の拓巳なのよ! 触っていいのは私だけ!」

「あんたたち二人ともうるさいわよー! 拓巳はどっちにも興味ないんだから! 離れなさい!」

 ルシファーまで大慌てで参戦し、僕の周りは一瞬でカオスと化した。

「あれ? ルシファーさん、さっき『自分はオタクとは違って余裕がある』みたいな悟りを開いてたんじゃ……」

「うるさいわね! 余裕云々の前にボディタッチはダメよ! 連帯責任で剥がすわよ!」

 完全に人気アイドルの握手会の敏腕剥がしスタッフみたいな動きで、僕から二人を引き離すルシファー。

 そんな僕たちの騒がしいやり取りを完全にスルーして、蓮華さんがパイプ椅子に深く腰掛けたまま、ニヤリと冷酷な笑みを浮かべた。

「……よし。じゃあ、次は四回戦目だな。エヴァ……。お前、もし不甲斐ない負け方をしたら……その後どうなるか、分かってるよなあ?」

「ひゃいいいい!? し、死なないように、全力でがんばりますっ!」

 蓮華さんの背後から立ち上るドス黒いプレッシャーに、エヴァさんが裏返った悲鳴を上げる。

「ああ? 死なないようにだあ? もしも見世物にもならねえ不甲斐ない戦いを晒したら、その時はこの私が直接ブチ殺してやるよ」

「ひええええええ!」

 理不尽すぎる脅迫に、ガチで涙目を浮かべて震え上がるエヴァさん。しかし、蓮華さんはすぐに視線を対戦相手の方へと移し、真面目なトーンで言葉を続けた。

「ま、相手はあのベルフェゴールだ。人間のお前には、ハナから厳しい戦いだろうな」

「あらあら、意外と認めてもらってるじゃない、ベルちゃん」

 アスモデウスが隣の小柄な少女の肩を優しく突く。

「……当然……」

 いつも眠たげなベルフェゴールが、小さくボソリと呟きながら、けだるげに指で「ブイ」とピースサインを作ってみせた。

 こうして、様々な思惑が交錯した第三回戦はレヴィアタンの勝利で幕を閉じ、いよいよ運命の第四回戦――人類の希望(?)エヴァ対【怠惰】の魔王ベルフェゴールの戦いが、今まさに始まろうとしていた。

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