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七つの滞在 〜オタク男子の平穏な日常を破壊する、最強の美少女悪魔たち〜  作者: ほさ
イギリスからの来訪者

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17/30

『天ぷらとツンデレとお姉さん悪魔の胃袋支配』

「――それで、エヴァさんは父を探しにわざわざイギリスからはるばるここにきたと?」

「うんそおお。かみひろへんへいからのてはみがおなくあっあはら……」

「いや、口の中に天ぷらを限界まで詰め込んだまま喋るのやめてもらえますかね。一文字も聞き取れないので」

ここは我が家のリビング。

金髪ツンデレ悪魔ルシファー、青髪幼女悪魔ベルフェゴール、緑髪お姉さん悪魔アスモデウス。そして、イギリスから遥々やってきたはずのエクソシスト、エヴァ・リオン。

そこに俺。

……客観的に見て、人生のどの選択肢を間違えたらこんな謎のメンバーで食卓を囲むことになるのか、全く意味がわからない。

エヴァは「ごくんっ!」とのどを鳴らして口の中のものを一気に飲み込むと、ふんす、と鼻を鳴らした。

「……ん、失礼。つまり、『そうよ、神代先生からの手紙が急に届かなくなったからよ』って言ったの!」

「あらあら。エヴァちゃん、そんなに急いで食べなくても、海老の天ぷらはまだまだたくさん揚げてあるわよ〜? ほら、おかわりね」

「お、お姉様……! 感謝します!」

嬉しそうに大皿を追加するアスモデウスに、エヴァは完全に目を輝かせて懐いている。

その様子を横目で見ていたルシファーが、ツンとそっぽを向いて鼻で笑った。

「ふん、きったない食べ方ね。これだから人間は」

「……ルシファーも……。口の下……タレ……ついてる……」

「……!? っ、るっさいわね! たまたまよ、たまたま!」

ベルフェゴールに冷静に指摘され、ルシファーは顔を真っ赤にして慌てて袖で口元を隠した。

そんな美少女悪魔たちの日常のやり取りを見ながら、俺は「はぁ……」と深い、深いため息をつく。

「エヴァさん。先ほども言いましたけど、父というか俺の両親は、もう何年も前からふらっと出かけたきり家に帰ってきてないんですよ。まあ、あの破天荒な両親のことだから、世界のどこかで野垂れ死んでるとは思いませんけど」

「そうなのね……。神代先生が不在だから、この家にこんなに悪魔たちが湧いているんだわ、きっと。先生さえいれば、こんな不浄な存在、一瞬で――」

「いや、それは……」と俺が言い淀むと、すかさずルシファーが不満げに口を挟んだ。

「ちょっと、湧いてるってなによ失礼ね! 私たちはたまたま、この家に居候してるだけよ!」

「たまたま!? たまたまで、こんな魔界の上級悪魔クラスのヤバい奴らが一堂に集まるわけないでしょ!」

エヴァの真っ当なツッコミに対し、アスモデウスがクスクスと上品に笑いながら、お茶を差し出した。

「うふふ、本当にたまたまなのよ〜。魔界で一度死んだ私たちは、気づいたらこの人間の世界……それも、この拓巳さんの家に吸い寄せられるように転生していたの」

「くっ……。神々しくてお美しいお姉様がそう仰るなら、本当にそうなのかもしれません……」

(ダメだこいつ、完全にアスモデウスに胃袋を掴まれて思考を放棄してやがる……)

エヴァのチョロすぎる態度に頭を抱えながらも、俺は本題を切り出した。

「とにかく、エヴァさん。彼女たちは居座ってはいますけど、人間に悪いことはしませんので、祓うのはやめてもらってもいいですか?」

「……しょうがないわね。どっちみち、私一人の力じゃこのレベルの悪魔たちを祓うなんて無理だし……今回は見逃してあげるわ」

エヴァは悔しそうに言いながらも、箸で本日十本目となる天ぷらを口に運んだ。

「わかってくれたみたいでよかったわ。じゃあ、それ全部食べたら、用は済んだんだからもうお帰りなさい」

我が物顔で指示を出すルシファーに、俺はすかさずツッコミを入れる。

「家主の僕を差し置いて、勝手に他人の帰宅を決めないでください! ……まあ、ルシファーの言う通りなんですけど」

「わかってるわよ! 言われなくても帰るわ!」

エヴァはぷいっと顔を背け、お茶を飲み干した。

「でも、神代先生を探すために、私は当分の間、日本に滞在するわ。もしこの家であなたたちが何か問題を起こしたら、すぐにエクソシストとして飛んでくるから、そのつもりでね!」

すると、アスモデウスが両頬に手を当てて、おっとりとエヴァに微笑みかけた。

「あら〜、日本にいる間、暇なら毎日でもお姉さんの料理を食べにきていいからね?」

「……ゴクッ……」

エヴァの喉が、あからさまに大きめの生唾を飲み込む音を立てた。

「おい、何が『ゴクッ』だあんた……。分かりやすすぎるでしょ……」

俺は完全に呆れ果て、遠い目をして呟いた。

「じゃあ、もう行くわ! ごちそうさま!」

しっかりと夕飯を限界まで完食したエヴァは、満足げに席を立ち上がった。

「はい、じゃあまた何かあれば! お気をつけて!」

俺は営業スマイル度100パーセントの満面の笑みで見送る。もちろん、内心では(二度と来んなよ!)と強く強く念じていた。

「……拓巳……。目が笑ってない……。笑顔が死んでる……」

ベルフェゴールがじーっと俺の顔を見つめてくる。

「ん? ベルフェゴールちゃん? そういうメタな指摘は黙っててくれるかな?(引きつった笑顔)」

「拓巳は気を遣ってこう言ってるけど、あんたはもう二度と来ないでよね!」

ルシファーがエヴァの背中に向かって言い放つと、エヴァも玄関のドアノブを掴みながら振り返った。

「わかってるわよ! こんな悪魔の巣窟、もう二度と来るわけないでしょ!」

「あらあら? 女の子同士の喧嘩は良くないわよ〜?」

アスモデウスが、おたまを片手に、ふわりと二人の間に割って入った。

「そんなに仲が悪いなら……明日の夕飯は、二人とも『抜き』にしてもいいかしら〜?」

「「それはダメっ!!!!」」

ルシファーとエヴァの声が、本日二回目の完璧なシンクロを見せた。

「ちょっと! なんであんたまでダメって言うのよ! あんたはもう来ないんでしょ!?」

「うるさいわね! 来ない滞在先でも、天ぷらの権利が消滅するのは容認できないのよ!」

そんな理不尽極まりないオタク顔負けの言い訳を残し、イギリスから来た美少女エクソシストは、嵐のように去っていったのだった。

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