表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七つの滞在 〜オタク男子の平穏な日常を破壊する、最強の美少女悪魔たち〜  作者: ほさ
悪魔のコスプレ大会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/30

『物欲とツンデレの狭間で揺れる悪魔、プラチナチケットの威力は絶大なり』

――そして、その日の夜。

我が家のリビングには、非常に重苦しい空気が流れていた。

「……と、いうわけなんだけどさ。今度の日曜日、大学の食堂まで一緒に来てくれるかな?」

俺はリビングのテーブルを挟んで、正面に座る金髪の居候へ向かって、恐る恐る、かつ最大限に揉み手をしながらお願いを切り出した。

「いいとも〜! ……なんて言うわけあるかぁぁぁーーーーーっっっ!!!」

ドンッ!!!

「ぶえっ!?」

次の瞬間、視界が激しく火花を散らした。ルシファーの容赦ない右ストレートが俺の頬にクリーンヒットし、俺はソファの上でのけぞった。

「な、何で殴るんですか!? 暴力的反対!」

「うるさいわね! 当然の報いよ!」

痛む頬を押さえる俺を、ルシファーは肩を怒らせてキッと睨みつけてくる。

(おかしいな……。正直、ルシファーなら『えー、何それおもしそー!』とか言って、二つ返事で快諾してくれるとばかり思っていたのだが……)

「いい? 私はこれでも魔界の上級悪魔よ!? なんで私がそんな、会ったこともない見ず知らずのキモい男(小田倉くん)の言うことを大人しく聞いて、そいつ好みの格好コスプレをしなきゃいけないのよ! ありえないわ!」

フンスと鼻を鳴らし、腕を組んで完全に拒絶の姿勢をとるルシファー。

「あらあら。私なら、拓巳さんのお願いならいつでも喜んでやってあげるのに〜。どんな格好がいい? ちょっぴり過激なやつ?」

「あんたは黙ってなさいアスモデウス!! 話がややこしくなるから!」

横から深い緑色の髪を弄りながら妖艶に微笑むアスモデウスを、ルシファーが一喝する。

そして、ルシファーはふいっと俺から顔を背けると、白くて綺麗な首筋をほんのりと赤く染めながら、蚊の鳴くような小声でボソッと呟いた。

「……別に、拓巳だけになら、そういう格好を見せてあげてもいいけど……知らない奴の前でなんて、絶対に嫌よ」

「……へ? 今なんて? 僕だけならいいって――」

「うるさいわねっ! 聞き返してんじゃないわよ!!」

ドカッ!!!(本日二回目の打撃音)

「あ痛ぁぁぁぁぁ!! 照れ隠しで殴るのやめて! 脳細胞が死滅する!」

理不尽な追撃に涙目になる俺だったが、すぐにメガネの位置をクイッと直し、不敵な笑みを浮かべた。

「……くっくっく。まあ、そこまでは計算の内だ。ルシファー……君がそうやってプライドを盾に突っぱねるのも今のうちさ。これを見ても、同じことが言えるかな……?」

「え? なによ、改まって……」

怪訝そうな顔をするルシファーの目の前に、俺は胸ポケットから『それ』をジャジャーンと見せびらかすように突き出した。

「ふっふふ……これさっ!!」

「……なっっ!? こ、これは……っ!!」

それを見た瞬間、ルシファーの綺麗な青い瞳が、限界まで大きく見開かれた。

彼女の視線の先にあるのは、小田倉くんから命がけ(?)で譲り受けた、あのプラチナチケット。

「ファンクラブの有料会員の中でも、超絶低確率の抽選をくぐり抜けた限定枠しか行けないっていう……『くりいむsoだ』のプレミアムクリスマスライブのチケットじゃないのっ!? な、なんであんたがそれを二枚も持ってるのよ!?」

ルシファーは椅子から身を乗り出し、チケットを奪い取ろうと手を伸ばしてくる。俺はそれをひらりと交わした。

「さっきも言っただろ? 今回のコスプレ依頼を、笑顔で快諾してくれるなら、このチケットを君にあげてもいい、と小田倉くんからの伝言さ。もちろん、僕と君の二人で行く分としてね」

「くっ……! この私が……物なんかに……たかが人間のアイドルのチケットなんかに釣られるわけ……っ」

気高く言い放とうとするルシファーだったが、その目は完全にチケットに釘付けであり、口元からは不覚にもよだれが今にも垂れ落ちそうになっていた。完全に欲望に負けかけている。

「別にいいじゃないの〜。拓巳さんも、ルシファーちゃんの可愛いコスプレ姿、本当は見たいと思ってるはずよ?」

アスモデウスさんがクスクスと笑いながら、ルシファーの背中を優しく押す。

「……ルシファー……コスプレしても……別に減るもんじゃない……。チケット……もらえるなら……着るべき……」

アスモデウスの膝の上で、極上の胸クッションに頭を埋めて寝ていたベルフェゴールまでもが、むにゃむにゃと口を動かしながら見事なアシストを決めてくれた。

「ほらほら〜、どうします〜? このチケットがあれば、最前列付近のプレミアムシートで、大好きな『くりいむsoだ』の生歌が聴けるんですよ〜?」

俺はルシファーの目の前で、チケットをひらひらと、悪魔的なまでの誘惑を込めて揺らしてみせた。どっちが悪魔か分かったもんじゃないな。

「う、うぐぐぐぐ……っ」

ルシファーは徐々に下を向いていくと、物欲とプライドの激しい葛藤のせいで、プルプルと全身を小刻みに震わせ始めた。

そして数秒の後――。

バンッ!!!

勢いよくテーブルを両手で叩き、ルシファーは真っ赤な顔で叫んだ。

「わかったわよっっ!! やればいいんでしょ、やればっっ!!」

「よしっ! 交渉成立だな!」

俺はガシッとルシファーの手を握り、勝利の握手を交わした。チケットの魔力、恐るべしである。

こうして、来たる日曜日、大学の食堂を舞台に、小田倉くん監修による『ルシファーの秘密のコスプレ撮影会』が、正式に開催されることが決定したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ