Number.34 信用
アジトとして利用している"廃城"の少し遠く、敵部隊の接近が確認されたということで、数名の戦闘要員を連れてそこに赴いていた。
フィティとシスクトも共にいるが、今回こそは後方支援をしていただこう。
「ミナト!我らはまだお前たちを完全に信用してはいない!この戦いで、しっかり活躍してくれよ!」
横に立つ強面の男が、両手に武器を携えながら話しかけてきた。
「ま、今回のはどうせ戦力確認だけだろうし、無理して手柄を取りに行くこた無いだろうがな。ほれ、お前も使え。」
無理して......か、その通りだ。ここで目立ちすぎるのはよくない。ここにいる者たちに、俺一人で十分だと思われると困る。
何もしないで追い出されるのも、それはそれで困るのだが。
「いえ、俺はいりません。」差し出してきた武器を片手で押し返してみると、男は訝しむような目をこちらに向けてきた。
「あ?前に出て戦うんだぞ?分かってんのか?」
「やつらはその武器にある程度の耐性があります。傷を付けて破壊しやすくする役が必要でしょう。それを俺がやりましょう......来ますよ!!」
結局男は片方の武器を地面に落とし、そのままデセアトの方へ向かってしまった。
さて、こちらも戦力確認だ。
男たちの後に続くように地面を蹴った。
二人を置いていくのはいささか不安だったが、共に支援担当として待機しているウィザードたちを信じるしかないだろう。
前線の様子に目を向けると、やはり苦戦している様子だった。やはりデセアトは武器の弾をはね返していたし、数人はいきなり負傷している。
そもそも武器の使い方もよく分かっていなさそうだった。
「早とちりはダメです!寿命が縮みますよ!!」
言い返す隙も与えず、負傷した者を後ろに逃がしながら先頭に出た。
デセアトの装甲に浅く傷を付けて、後は男たちに渡す。
簡単な仕事だ。剣の鍛錬にもならない。
後ろを一瞥してみると、負傷した男をフィティが復元魔法で治していた。
ミナトが早すぎる。ぼおっとしていると置いて行かれる。
「一気に行きます!!」
その言葉が聞こえたかと思えば、既に数体のデセアトに傷がついていた。
銃口を傷口に向け、引き金を引く。デセアトを直接倒していたのはミナトではなく我々だった。
「これで10体......って、俺たちが倒しちゃっていいのかよ?」
「どうぞ!まだまだ来ます!!」
その言葉が聞こえたときにはミナトの姿は無く、傷のついたデセアトだけがこちらに投げられた。
「これで終わった......か......」
地面にはデセアトの残骸が転がっていた。その上に我々とミナトは立っている。
日が沈むのを眺めている彼の後姿は、どこか不気味さを感じた。
「ふーん、やっぱり魔王様の言う勇者ってのはあの白いのだろうなー。」
長方形の画面に映し出された映像を眺める。つまらないが安全だ。
「例の赤髪の少女もいますね。早速報告しましょう。」
「......だな、思わぬ収穫だ。」
右手を軽く振ると、同時に映像も消えた。
ここからでは見えないが、現場にいた"あいつ"も消えているだろう。
ケイを置いて向かった先は、言わずもがな魔王様の部屋だった。
「緊急!!緊急!!」
地下中に怒号が響く。夜明け前だというのに迷惑な話だ。
昨日の疲れも取れぬまま、唸りながら身体を起こすと、次の怒号が飛び込んできた。
「敵部隊が"王城"付近に待機中!!戦闘要員は作戦室に急げ!!」
目をこすりながら作戦室に入ってみると、フィティやシスクトの姿もあった。
が、屈強な男たちの数が多く、油断したら押しつぶされてしまいそうだった。
「何事です?この廃......王城に敵が?」
「前線からの報告です!戦力はデセアト700以上、半分は"狐"のマークをつけた個体です!」
こちらの失言は報告によってかき消された。
「それほどの戦力を待機させている?こちらの出方をうかがっているのか?」
「狐......あの時のやつか......!」




