Number.20 唯一つの
私自身、調子に乗っていたことに間違いはない。
ペリセデューの管理者の娘が、今抱きかかえている少女であるという確証など赤髪なこと以外に何もなかった。
それでも、既に魔王軍に入ってからの輝かしい未来まで頭の中で作り上げてしまっていた。
愚か者である。少なくともその時点で、テレポートの光の向こうに大きな期待を寄せていた。
ミナトはようやくこちらに向かってきたようだが、既に手遅れだ。
テレポートの光は全身を覆い、もはや目を凝らさねば向こう側など見えない状況だった。
「いける......今度こそ!!」不意に笑みがこぼれた。
まだ、まだ間に合う。
ハイフィスとの距離は遠く、どれだけ走れど届くことは無い。
テレポートには時間がかかるし、ブースターを使っても間に合うかは分からない。
だが......
『あなたには、"私たち"と同じ力を授けましょう。それが、あなたにしてやれる唯一つの......』
その言葉を、忘れているはずが無かった。
私の横顔を掠めたのは、実体のある物ではなかった。
だからと言って、攻撃魔法の"レーザー"でもないらしかった。
鋭い閃光は、私の横目に一瞬だけ入ると、素早く走り去っていった。
"閃光"が狙ったのは、私ではない。テレポート魔法を用意している最中のスドキヨクルだった。
「あっ?!」
テレポートが...解けた。
当然、故意というわけではない。
こちらに飛び込んできた"閃光"...それが中指の第二関節から上をきれいに傷つけてしまった。両方ともだ。
その一瞬、一瞬の心の乱れが、テレポートを解除してしまったのだ。
困惑するハイフィスの後姿を横目に、"閃光"の走ってきた方向を恨めしく睨んだ。
ハイフィスが反応するよりも、その後ろにいる魔法使いがこちらを睨みつけるよりも、はるかに素早く彼らの方へと突っ込んだ。
腕を伸ばして、ハイフィスの胴体のあたり......フィティを狙って掴みかかった。
「あたり!」見事...掴んだのは、フィティが身に着けているコートだった。
「邪魔!!」ハイフィスの腕を乱暴に振り払うと、フィティの身体をこちらに寄せた。
「シスクト!......お。」もう動いて良い、と言おうとしたが、どうやらその必要はないらしかった。
彼を捕えていた男は既に顔面を腫れさせて地面に倒れ伏していたし、押さえつけようと向かってきた別の男たちもあっという間に殴り倒してしまった。
「ぐ......このぉ...!」地団駄を踏みたい気持ちを必死に抑えながら、ミナトたちの方に身体を向ける。
彼らは手早く武器を拾い、この場を去ろうとしていた。
「まだだ......!」
「ハイフィス、もう十分だ。ペリセデューに戻るがいい。」
声の主は、浮遊している"使い魔"であった。その声音は、確かに聞いたことのある声......ペリセデューの管理者だった。
「げ......い、いえ、まだ...!」瞬く間に血の気が引き、悪寒が走った。なんとか、なんとか取り繕わねばと脳を回転させる。
「招待状のことなら心配するでない。既に用意してある。」
脳の回転は、意外な形でその速度を弱めることになった。
スドキヨクル
レフト・ウィザード。限られた者にしか習得できないテレポート魔法を使用可能。
ハイフィスの幼馴染で、彼を盗賊に誘ったのもスドキヨクルらしい。
どうやら由緒ある魔法使いの家系であるそうだが、本人は黙っている。




