Number.16 違うような気がします
大きな杖が虚空を舞っている。
フィティの顔には汗がにじんでいる。
晴天の下、彼女は魔法の練習をしていた。
補助系魔法の基本が、復元魔法だ。これが使えれば少なくともライト・ウィザードの称号はもらえる。
フィティは目の前に置かれた花に向けて何度も何度も杖を振っていた。上手くいけば、この潰れた花が、美しく花弁を開くはずなのだ。
何度杖を振ろうとも、天に祈ろうとも、花を睨んでみても、その無残な姿が変わることは無かった。
「うぅ......何度やってもダメです...」空を見上げてみると、真上に昇っていた太陽に目を痛めた。
始めたときには、まだ見えるか見えないかだったというのに...。太陽は、無情にも私の無力さを突き付ける。
「あ...すみませんミナト。朝早くから付き合ってもらって...」練習に夢中で忘れかけていたミナトの方を見た。
残骸に座りながら、退屈そうにこちらを眺めている。
「......いや...構わないんだけどさ、本当に俺でよかったの?魔法の事なんて全く分からないんだけど...」
「良いんです。見てもらうだけでも。何か...違うような気がします。」
「そういうもんかね...」
よく分からないなぁ、などと考えながら、フィティの"魔力"を見てみる。
魔力はある...魔力はあるんだ、間違いなく。そうでなければ"ライト・ウィザード"の称号なんてもらえない。
シスクトに"ブースター"を使ったとき、そして俺をあそこへ"呼び寄せた"とき...使ったん...だろうけど...
「ミナトー、フィティちゃーん」城の方向から、大きな声を出しながらシスクトが歩いてきた。
「俺たち全員であの人の所行けってさー。ほらあのー......ハスファド・イルマさん」
ハスファド・イルマ、レジスタンスのリーダー。そんな人の名前を忘れるなよ...と思いつつ、フィティと一緒にシスクトの方へ歩いて行った。
「デセアトから......武器を奪ってくる?」彼から言い渡された命令には、ミナトも、フィティも、そして自分自身も、流石にあきれてしまった。
「そんなことが、可能なんすか?さすがの俺たちだって不可能なことさせられるのは勘弁ですよ。」若干挑発的に尋ねてみた。
「デセアトが砂になる前に、やつらが持っている銃を奪う。簡単だろう?君たちに出来ないことではあるまい」返答は恐ろしいほど簡潔で、それでいて挑発的だった。
ムッと身体を前に出したが、ミナトが止めてきたのでおとなしく下がることにした。
「それで、どのぐらい奪ってくればいいんですか?少なくとも、ここにいる人たち全員分、とか...?」
ここを拠点としている人たちの数は、想像以上に多い。ある程度の武器は揃っているとしても、足りない分は相当な数になるはずだ。
「なぁに、そこまでは期待していない。君たちがそれを出来ると証明してくれればいいんだ。そうすれば、正式に我々の仲間にしてあげよう。」
「正式に?今はまだ違うと?」シスクトは方眉を上げてハスファドをにらんでいる。
「そうだ。"それ"があるとはいえ、君たちが信用できる人材かどうかはまだ検証の余地があるのでな。」
ハスファドが額をトントンと叩くしぐさに、少しイラっとしてしまった。
リカバリー
分類:補助系魔法
万物を復元する効果を持つ魔法。対象の大きさや、復元のスピードについては使用者の能力に依存する。
補助系魔法の中では基本中の基本とされ、"ライト・ウィザード"になるためにはこの魔法が使えることが非常に重要。




