Number.15 グッド・ドリーム
上への扉は、思っていたよりも重かった。
まるで反対側から誰かが押しているかのようだった。まあ、幸い特別大きな音を立てるということは無かったが。
苦労して開けたあと、何の気なしに城の上へ向かう。
「どのくらい寝たのかな......」さっき見損ねた時計の代わりに、窓から外を見て時間を確認する。
外は真っ暗で、かつてそこに街があったという痕跡は全く見えなかった。
時折遠くに見える青白い光を眺めながら、階段を上る。
誰もが寝静まった夜には、自分の足音もよく聞こえる。シスクトなら起きてしまうかもしれないなと考えながら、長い階段を着実に進んで行く。
気分が落ち込んでいる夜には、一人で空を眺めるのが一番良い。
下は警備が頑張っているし、だからと言って寝室は地下だから空も見えない。
遠くに見える青白い光を視界の下に置きつつ、夜空をぼんやりと眺めていた。
しばらくした後、下からコツコツと足音が聞こえてきた。夜は足音がよく聞こえる。
せめて、私の知らない人ならいいな。と、やはりぼんやりと考えた。
だが......
「ミナト...さん...」
最初にそう言われたとき、少し困惑してしまった。
なぜなら、それを言ったフィティが少し気まずそうな顔をしていたからである。
何か、不都合が?
「......隣、いいかい?」
しばらく躊躇った後、そんなことを聞いてきた。
特別断る理由というのもないので、座っているベンチの隅に身を寄せた。
ミナトはその意を汲んだようで、申し訳なさそうに腰をおろしてきた。
「君がここにいるのは、意外だった。」しばらくフィティと一緒に夜空を眺めた後、ようやく声を出すことが出来た。
しかし、何を言ったのか自分でもよく分からない。
その声が響いても、フィティは何も言わなかった。再び、沈黙が訪れる。
「気分が落ち込んでいるとき......いつもこうやって夜空を眺めているんです。」
自分でも、なぜこんなことを言ってしまったのか分からなかった。
ハッとしてミナトの方を見てみると、驚いたような顔をしていた。
次に声を出したのは、フィティだった。そしてその言葉は、やはり意外なものだった。
そんなフィティの心情は、この夜になるまで全く分からなかった。
この未熟者め、と心の中で自分を罵る。
まあ...それも程々に、フィティが落ち込んでいる理由を考えることにした。
「フィティ。」
そう声をかけられたとき、思わず身を震わせてしまった。
怯えながらミナトの顔を伺ったが、意外にもその目は穏やかで、口には微笑が浮かんでいた。
「俺は......俺たちは待つよ。」
「えっ?」予想外の言葉に、ミナトの言葉に、思わず硬直してしまった。
「旅が終わってしまったなら、また始めよう。今度は、君の旅を。」
ミナトの優しい声に、言葉を失う。
「でも、それは決して君"だけ"の旅じゃないよ。君の成長が、俺にとってもシスクトにとっても...そして、その旅で出会ういろんな人たちにとっても、きっと実りのあるものになるから......」
「ミナトさん......」フィティが少し笑顔になっていることに気が付いた。
今の言葉で、少しでも元気になってくれたのだろうか。
人を励ましたりすることなんて、"あっち"でもやったことは無かったけれど......
「私......私、もっと頑張ります。だから...その...まだ、ご一緒させてくださいますか?ミナトさん......」
「もちろん。あ...俺のことはミナトで良いよ。シスクトのことだってシスクトって呼んであげな、きっとそっちの方が喜ぶから。」
フィティは「はいっ!」と元気よく返事をした。
その笑顔を見るだけで、何だか...次は、良い夢を見れるような気がした。




