第83話 必ず兄と一緒に伺います
売りに出した土地のいくつかは買い手がついたが、畑は誰も買い取るものがいなかった。
「夜に咲いても見る人はいないでしょうし、手間も考えるとコスモスの方が良い気がします」
「ありますよ。こちらの方が夜咲きよりも開花時期が早いので、今すぐ植えないと今年の開花には間に合わないと思いますが。溢れ種で群生しますし、やせ地でも育つので手間も掛からず、背も高くならない。それに昼間に咲いているのを見る事も出来る。どうですか?」
その説明に、反論する余地も意味もなかった。良い事づくめだというなら、大いに賛成である。
サーフィトの畑には、全て昼咲き月見草の種を植えることとなった。
サビーナは街に働きに行くたび、繁く業者の所に訪れ、令嬢の情報を仕入れたり、自分でも調べたりしている。
ある日、キクレー邸の前を通り過ぎると、偶然にもクリスタがどこからか帰って来る所に出くわした。
「サーフィトさんのお孫さんの……サビーナさん、でしたわね?」
サビーナはその言葉を聞いて、しめたと思った。
セヴェリと己の関係を、どう説明しようかと思案していた所である。有難いことにクリスタが勘違いしてくれているなら、無理して他の設定を考える必要もない。
「はい、兄もとても元気で。またキクレー卿や、クリスタ様にお会いしたいと申しておりました」
「ええ。ですからあまり出てくる機会はないのですが、今度は連れて参りますので!」
サビーナが断言するように言うと、クリスタの顔はパッと花が咲いたように明るくなる。
「ああ良かった! 兄は、クリスタ様の事を……あ、いえ、何でもありません」
少し演技が過ぎただろうかとドキドキしながらクリスタの方を見ると、彼女は身を乗り出して続きを聞きたそうにしていた。
「では……もし良ければ、来月始めの日曜にでもお越しください。わたくしもお爺様も、予定を空けて待っていますわ」
嬉しそうに頷くクリスタを見て、心の中で密かにガッツポーズをする。
クリスタに家に来るよう言われた事をセヴェリに告げると、彼も二つ返事で了承してくれた。
「買い物を? 言ってくだされば買って来たのに……何を買うんですか?」
クスクスと笑うセヴェリを見て、深くは聞かずに首だけ傾げた。




