第82話 セヴェリ様……本気?
サビーナがブロッカから帰ってくると、セヴェリは茶畑の整備をしていた。
サーフィトの田畑が荒地になっていくのが忍びなく、自分たちで管理できるもの以外は売って手放すことにする。
この村は、どこも荒れ地が多くなっていて、残念な限りだ。
その日もサビーナは台所で寝ようとするが、セヴェリも同じように来られたため、結局サビーナが折れてベッドで眠ることとなった。
今までの台所で寝るという行為を申し訳なく思っていると、セヴェリは薄く笑っている。
「落ち込まないで下さい。確かに突き離された時は理解出来ませんでしたが、今は分かっているつもりですよ」
「サビーナは『ツンデレ』なのでしょう? 一緒に居たくないというのは、一緒に居たいという裏返しでそう言ってしまうんですよね?」
どうやらジェレイがツンデレの意味をセヴェリに教えてしまったらしい。
「照れ隠しはもう良いんですよ。あなたの気持ちは分かりましたから」
ジェレイのせいで、とんでもない誤解を生んでしまった。
「あの、セヴェリ様……私はそんな理由で別の部屋に寝ていたわけでは」
その言葉と共に、セヴェリの優しい腕に包まれる。
「それとも、同じ部屋が怖くなったのですか? 大丈夫ですよ。優しくしますから……」
こんな時にまで勘違いを発揮され、サビーナは酷く焦ってしまった。
セヴェリの顔が迫って来て、サビーナは思わず目をぎゅっと瞑る。
するとセヴェリはクスクスと笑みを漏らし始めた。
どうやらまた、からかわれたらしい。
そう思っていると、セヴェリは眉を下げながら、サビーナの深緑の髪に手を通した。さらさらと内側から手櫛で髪を解かれて、サビーナはピクリと身を震わせる。
その問いに、サビーナはふるふると首を横に振った。ちらりと目だけで見上げると、セヴェリは花を愛でるような優しい瞳で、こちらを見下ろしている。
いきなりの告白に、サビーナは暫くそのまま動けなかった。
「いつからあなたが好きだったのか、明確には思い出せません。つい最近のような気もしますし、アンゼルードにいた頃からだったような気もします。けれど今となってはそんな事、どうでもいい」
そしてセヴェリはより一層真剣な瞳をサビーナに向け。
「あなたの心を私に振り向かせます。幸い時間はたっぷりありますし、少しずつじっくりと、ね」
最後の最後で意地悪な笑みを見せられると、サビーナの顔は徐々に熱くなってくる。
本気、なのだろうか。いつものからかいなのだろうか。
たとえ本気だったとしても、クリスタや他の令嬢と接する機会を設ければ、きっとサビーナの事など忘れて新しい恋に落ちるに違いない。
寝る間際、二人を仕切るカーテンを少し開けておいて欲しいと言われた。
サビーナの顔を見ながら寝たいからと。
そうして寝付いたセヴェリの顔は、とても幸せそうだった。




