「湊」とは
異変の確信となる事件が発生した。
家族写真に、湊だけが写っていなかったのだ。
母にこのことについて問い詰めると、「誰が撮ったんだろう」と母まで違和感を抱いた。つい先週まで確かに母と父を挟んで僕がいたはずだ、そう自分に問いかけながらこのことについて頭から離した。
やがて、クラスメイトから湊の存在は薄れていった。そこで湊は気づく。
「物語を書く代物は、自分自身の存在だ」
湊はついに理解した。これまで毎日ずっと小説を書き続けていたせいで、少しずつ自分自身が薄れてきていたのだ。湊はそれ以降小説を書くことはしばらくなかった。
しかし、小説を書いていないのにも関わらず、どんどん湊の体は薄れていく。異変に思った湊だが、自分は本当に薄れてきているのか、同時に疑問が浮かんだ。母に自分が薄れているか聞くと、
「何馬鹿なこと言ってるの。透明人間じゃないんだから、薄れるわけないでしょ!」
そう言い放たれた。やっぱり、ほかの人から見たら湊は薄れていない。でも、自分自身を見るとやはり薄れている。
「危ない!」
ガン!鉄が何かに勢いよくぶつかるような破裂音が聞こえた。ここで湊は記憶が蘇った。
「あれ、僕交通事故で...」
幼少期の頃の湊は外で遊ぶのが大好きでよく母と公園に来ていた。湊が道路に出たボールを取りに行こうとしたとき、事故は起こった。
「危ない!」
母の叫び声が聞こえて振り返ろうとしたが、もう遅かった。
僕は車に撥ねられて、死んでいた。
じゃあ、今の私って一体...




