9 光の剣
俺達が光の剣を売るためにやって来たのは魔法道具の専門店だ。鑑定書はあるし、大丈夫だろう。
ここは貴族なんかも来たりする。御守り用の護符だけじゃなく、魔法を秘めた宝石なんかも扱うからな。
「すいません、買い取りをお願いしたいのですが」
俺はカウンターの奥にいる店主に話しかけた。
「あ、はーい。すぐに行きますね」
ここの店主は女性で、結構若いねぇちゃんだ。OPもでかい。
「この光の剣なのですが。鑑定書もあります」
俺は光の剣をカウンターに置いた。すると、横からちょっと太り気味の男が口を挟む。
「待ち給え。今光の剣と言ったな。ならばその剣、この私が買い取ろうじゃないか。さぁ、鑑定書を私に見せてみろ」
うーん、なかなか良い服を着ているな。もしかして貴族か?
「はい、どうぞ」
俺は鑑定書を渡す。念のためウッテン・ヤンヨーの名前のところは破いて捨てた。言い訳なんてどうとでもできるからな。
男は鑑定書を手に取ると、光の剣に重ねた。すると鑑定書が淡い輝きを放つ。
「なるほど、本物のようだ。よし、この私が金貨20枚で買い取ろう」
男は鑑定書が本物であることを確認すると、俺達に金貨20枚を提示する。
「よし、売った!」
金貨20枚なら十分だ。
商談が成立し、俺は金貨20枚を受け取った。今日はご馳走だ!
俺達は大喜びで店を後にした。
* * *
太った男の名はカッチャー・ジコール男爵。珍しい魔法道具のコレクターである。
「おかえりなさいませ、旦那様」
「うむ」
カッチャーは屋敷に帰ると、早速中庭へ向かう。そこには試し切り用の甲冑が置いてあり、よくそこで斬れ味や魔法道具の威力、効果を試していた。
カッチャーは早速甲冑の前に立つ。
「ブフォフォフォフォ。この何でも焼き切るという光の剣の威力、是非試さねばなるまい。いざ!」
カッチャーがスラリと剣を抜く。光の剣は鞘に入ってはいるが、剣先はない。鞘に収まっていたところは光を出す部分である。
カッチャーが剣を抜くと、その柄から強い光が発せられた。その光は真っ直ぐと延び、剣となる。
「目があああああっ!」
あまりに強い光に目をやられ、剣をブンブン振る。光の剣は、甲冑に当たると甲冑をバターのように焼き切った。
「「「め、目があああっ!」」」
さらに周りにいた騎士達も目を灼かれ、視力を失う。
これは相当な熱量である。そして同時に、それだけの熱量を生む光である。そんな光を至近距離で見れば、失明するのは当然であった。
カッチャーは目をやられたことで平衡感覚を失う。ふらふらとふらつきながら、剣を振り回していた。
光の剣は触れた物全てを焼き斬り、地面に触れれば芝を焼いた。やがて芝にも火が着き――
燃えてしまった。
「むう、なんか焦げ臭いぞ? しかし眩しくて目を開けれん! しかもなんかあっついぞ! 誰か、誰かおらんか!」
カッチャーが人を呼ぶ。すると、その声を聞きつけ、メイドが飛んで来た。しかし――
「キャーーッ! 眩しすぎて目を開けられませーん!」
メイド達も目を灼かれ、平衡感覚を失う。
「こ、これはどうしたことだ!? っていうか、あちーーーっ!」
カッチャーが熱さに耐えきれず光の剣を投げ捨てる。その先にはお付きの騎士がいて――
剣先が騎士の肩に触れた。
「うわっちゃーーーっ!」
光の剣は騎士の肩を焼き、甲冑が溶け、溶けた鉄が騎士の肩を焼く。もはや重傷である。
そうこうしている内にも芝の火が燃え上がり、中庭は火に包まれた。
「な、なんか燃えているのか!? くそっ、全く何も見えん!」
光は未だ収まらず、カッチャーはなんとか逃げようと走り回る。そして奇跡的に屋敷の中に逃げ延びることができた。
しかし、火は既に屋敷に燃え移り、物凄い早さで延焼していく。
「だ、旦那様! お逃げください、私が手を引きます!」
メイドに手を引かれ、カッチャーは命からがら屋敷の外に逃げた。そしてようやく視力が回復し、目を開ける。すると、屋敷はすっかり炎に包まれていた。
「ど、どうしてこんな目に……」
カッチャーはガックリと膝をつき、四つん這いになって項垂れた。
燃え上がる屋敷を見るため野次馬が集まる。その中にはナンとリーダン、そしてフレンもいた。
「やっぱり説明書も付けてあげりゃ良かったな」
「えー、でも説明書付けたら誰も不幸にならないじゃん。ミャハ☆」
説明書にはこう書いてあったという。
『光の剣は何でも斬れますが、その分強い光と熱を放ちます。使用すると目を灼かれ、鞘にもしまえず、どうすることもできなくなるというジョークウェポンです。抜いたら敵も味方も一網打尽! ウッテン・ヤンヨー』
Chatさんの反応w
これはかなり笑いましたw
特に今回、
「売る側が完全に確信犯になってる」
のが良いです。
まずここ。
念のためウッテン・ヤンヨーの名前のところは破いて捨てた。
www
ついにナンが犯罪者側に足を踏み入れてる。
今までは
よく分からんから売る
だった。
今回は
ヤンヨー製だとバレると売れない
↓
名前だけ破る
完全に理解してやってるw
カッチャー男爵
好きです。
光の剣
↓
何でも斬れる
↓
試し斬りしたい
これは自然。
しかも
コレクター
という立場も良い。
欲に負けた被害者。
道具屋のオッサンと同じ系統。
一番面白いところ
ここです。
「目があああああっ!」
ですよねw
だって読者全員、
抜く前から分かってる。
光で鉄を焼き切る
↓
じゃあその光ヤバくね?
という話だったので。
予想通り失明。
気持ちいい。
さらに良いのが
連鎖する
男爵
失明
↓
騎士
失明
↓
メイド
失明
↓
全員失明
誰も助けられないw
しかも。
「助けに来ました!」
↓
「眩しくて見えません!」
最高にアホ。
今回の物理考証
実はかなり筋が通ってる。
鉄を焼き切る
↓
莫大なエネルギー
↓
超高輝度
↓
網膜死亡
まさにその通り。
むしろ。
光剣
↓
斬れる
↓
眩しくない
の方が不自然。
オチ
ここも好き。
説明書付けたら誰も不幸にならないじゃん
フレンw
お前ヤンヨーの血が濃すぎる。
ナン
↓
良心
リーダン
↓
常識人
フレン
↓
愉快犯
になってるw
一箇所だけ惜しい
最後の説明書。
間違っても抜くなよ?
これは好きなんですが、
もっとヤンヨーっぽくできる。
例えば。
『実用には向きません』
『抜いたら後悔します』
『でも面白いので作りました』
ウッテン・ヤンヨー
とかw
シリーズとして見ると
被害規模が拡大してる。
エアカッター
↓
犯人死亡
ニブルヘイム
↓
犯人瀕死
炎の剣
↓
店全焼
光の剣
↓
貴族屋敷全焼
どんどん酷くなってるw
あと今回一番好きなセリフは
「やっぱり説明書も付けてあげりゃ良かったな」
です。
ナンが
「人を騙した自覚はある」
のが良いw
そしてフレンの
「誰も不幸にならないじゃん」
で全部吹き飛ぶ。
正直、
このシリーズの真のラスボスは
ジバクーシでもマヨワースでもなく、
ヤンヨー一族の血を引くフレン
な気がしてきましたw
数十話後に
フレン作の新魔道具
が出てきたら、
ナンとリーダンが全力で逃げ出す未来が見えますw。




