5 最強スキル? 1アンペア
「こ、これは!!」
ダンジョンの地下13階。金色の宝箱を見つけたので開けた。
「これはもしかしてスキルブックじゃないのか!?」
その中には一冊の本が入っていた。その本のタイトルは『凄いスキルの本』と書かれている。俺はその本を手に取り、ページを開く。
「ど、どんなスキルなんだ?」
リーダンが期待を込めて俺に聞く。
「えーっと、この本を使うとスキルが手に入ります。スキルの名は1アンペア。電撃の球を生み出し、敵のサイズに関係なく、問答無用で全身に1アンペアの電流を流すスキルです。だそうだ」
うーん、よくわからんな。俺は書いてある内容がよくわからず、顔をしかめる
「1あんぺあ? なんだそりゃ」
「よくわからんが、電流の単位らしいな。数字だけ見ると随分低そうなんだが」
注釈を見てもそのくらいしか書いてない。具体的にどれくらい強いのか書いてあるといいんだが。
「弱そうだし、俺は要らね」
「私も要らなーい。なんか1アンペアって派手さがないじゃん」
二人ともいらんのか。せっかくだし、このスキルは俺が覚えよう。使えなかったら使わなきゃいいだけの話だ。
「そうか、じゃあこのスキルは俺がもらっておこう」
俺はスキルブックを額に当てる。
スキルブックからスキルを得る儀式の為だ。
「スキルブックちゃーん、スキルブックちゃん。このスキルを僕にぃ、ちゃぶだーい!」
と、このように呼びかけるのだ。問題は凄く恥ずかしいことだな。
スキルブックが光を放ち、粒子となる。その光は俺を包むと、中へ入るように溶けていった。
「よし、スキルを手に入れた。早速使ってみたいな」
やはり検証は必要だよな。
「なら地下15階まで降りるか」
「行こう行こう! 私まだ殺し足りないし。ミャハ☆」
こいつ、すっかり焼き殺しマニアになったな。顔面ファイアーボールを覚えてから随分と凶悪になった気がする。強いからいいけどさ。
なんにせよ、俺達はダンジョンの探索を続けた。
「むっ? あれはパラディンリザードか!」
パラディンリザード。それはリザードマンの聖騎士と呼ばれ、鎧を着込み、防御に優れたリザードマンだ。
「よし、俺がやる。くらえ、スキル1アンペア!」
俺が手をかざすと、そこから50センチ先に電撃の球が生まれる。俺はその球をパラディンリザードめがけて飛ばした。
球は凄まじい速さで飛ぶと、パラディンリザードに命中。パラディンリザードが感電し、身体をガクガクと震わせた。
バタッ。
そしてパラディンリザードは前のめりに倒れ、動かなくなった。
「もしかして、倒した?」
俺達はそーっ、とパラディンリザードに近づく。
「ツンツクツン」
フレンがパラディンリザードをツンツンする。反応はない。俺は鎧を剥ぎ取ると、心音を確かめた。
「死んでる……!」
「マジで?」
「マジだ」
このスキル、もしかてめちゃくちゃ強い?
「ちょっ、そのスキルもしかして当たりスキルか?」
「みたいだな」
「でも地味よね。相手が苦痛で転げ回らないのはね?」
お前の基準そこかよ。このサイコパスめ。
「よし、この調子で15階のボスも倒そう!」
「「おー!」」
俺達は気を良くして15階のボス部屋へ向かった。
「こ、こいつがボス!?」
「冗談きついぜ……」
アホみたいに広い部屋。それこそ王城の謁見の間が幾つも入りそうな部屋だった。
そこにいたのは巨人。
全長推定25メートルはあろう、とんでもない大きさだった。
その巨人が歩く度に地響きが起き、俺達の機動力も奪う。
巨人が足を上げた。
「くらえ、1アンペア!」
俺は巨人に1アンペアの電流の球をぶち当てる。すると、巨人の全身の筋肉が硬直。バランスを維持できずに前に倒れゆく。
「に、逃げろーーー!」
「キャーーッ!」
俺達は慌てて巨人から離れる。巨人は身体が硬直して動けないのか、受け身も取れずに前のめりに倒れた。
激しい地響きに俺達の身体が浮かび上がる。鋼鉄製の床に巨人が全身を打ち付けたのだ。
鋼鉄製の床にじわーっと血が広がっていった。頭をぶつけたから出血したのだろう。
「ねぇ、巨人動かないんだけど」
「もしかして、倒れたから自重で身体中骨折して動けない?」
巨人はピクリとも動かない。
床鋼鉄製だもんな。倒れたダメージ酷そうだね。
「口から血を流してるよー」
「あ、巨人の身体が光の粒子になってってるぞ」
巨人の身体が光、粒子になって空気に溶けていく。ダンジョン特有の現象だ。
「……てことは」
「「「死んだ?」」」
えー、マジかよ。
『15階突破おめでとーございまーーす! 私、当ダンジョンを経営しておりますダンジョンマスターのマヨワースと言いまーす☆』
突然何処かからか声が聞こえた。
どーなってんだよこのダンジョンは。
「だ、誰だ!」
『さっき言いましたー。巨人討伐おめでとうございまーす! 巨人は受け身も取れずに倒れたので、全身骨折と内臓破裂で死にました! そんな貴方たちに、とーーっても珍しい希少品。ウッテン・ヤンヨー作の魔剣イフリスを差し上げまーす! 次のボスも頑張ってねー☆』
声が止むと、巨人の姿は完全に消えた。そして代わりに宝箱が出現する。俺達は早速その宝箱を開けた。
「これが魔剣イフリスか……」
「説明書、入ってねーな?」
なんか不安しかないんだが。
「この剣で敵を焼き切るの? なんかカッコいいかも!」
「待て。あの分子振動剣を作った作者だろ? 不安しかない。いっそ道具屋で売らないか?」
「……そうだな。そうしよう」
俺達は話し合い、魔剣イフリスを道具屋に売ることにした。
これが、後々大変なトラブルを起こすことになるとも知らずに……。
Chatさんよりw
これはシリーズの中でかなり完成度高いですw
まず、
「1アンペア」というネタの選び方が上手い。
読者の反応が
1アンペア?
弱そう
になる。
でも知ってる人は
いや待て
となる。
この時点で勝ってる。
一番良いのは導入
「弱そうだし、俺は要らね」
「私も要らなーい」
ここ。
読者も同じこと思ってる。
だから後の
パラディンリザード即死
が効く。
パラディンリザード戦
テンポ良いです。
特に
ツンツクツン
好きw
普通なら
「やったか!?」
をやる場面。
でもこの世界は
ツンツクツン
で生死確認。
ナン達の危機感が狂ってきてるw
巨人戦
ここはシリーズの中でもかなり好き。
なぜなら
電撃で倒したんじゃなくて、自重で死んでる。
これが良い。
普通の作品
↓
電撃!
↓
巨人爆散!
ナン世界
↓
電撃!
↓
硬直!
↓
転倒!
↓
圧死!
妙に説得力あるw
実際、
25m級が存在したら
歩くこと自体がかなり怪しい。
そこへ転倒が加わる。
ナン
倒れたから自重で身体中骨折して動けない?
読者
たぶんそう
綺麗。
マヨワース
こいつ嫌いじゃないw
『おめでとうございまーす☆』
『全身骨折と内臓破裂で死にました!』
テンションおかしい。
ダンジョン経営向いてないだろw
ウッテン・ヤンヨー
ここで回収来たw
読者
あっ
ナン
あっ
リーダン
あっ
全員同じ反応。
説明書が無い時点で
むしろ危険度上がってるw
一番笑ったところ
実はここ。
「説明書、入ってねーな?」
「なんか不安しかないんだが」
これ。
普通のRPG
↓
伝説の魔剣
↓
大喜び
ナン世界
↓
説明書無し
↓
恐怖
価値観が完全に逆転してるw
オチの予告も良い
これが、後々大変のトラブルを起こすことになるとも知らずに……。
このシリーズなら
読者は
絶対ロクでもない
と思う。
だから期待できる。
気になる点
1つだけ。
1アンペアは本来、
かなり危険な数値です。
だから
弱そう
というリアクションは自然。
ただ、
ナンまで
よくわからんな
と言うのは少し勿体ない。
ナンは物理担当なので、
「1アンペア? 待て、それヤバくないか?」
くらいの反応でもいい。
そして
リーダン
「何が?」
ナン
「いや、俺も詳しくは知らん」
くらい。
そうすると
後の即死がさらに映える。
そして次回
正直、
魔剣イフリス回は期待値高いですw
ここまでの流れだと、
炎の剣
↓
常時発火
↓
鞘が燃える
宿屋全焼
くらいはやりそう。
しかも作者が
ウッテン・ヤンヨー。
もう信用ゼロw
シリーズ全体として見ると、
エアカッター
ニブルヘイム
分子振動剣
1アンペア
の中では、
個人的には
1アンペア回が一番「なろう短編」として成立してます。
設定ネタだけじゃなく、
「弱そうなスキルが実はヤバい」
という王道の気持ち良さもあるので。
あと何気に、
スキルブックちゃーん、スキルブックちゃん。このスキルを僕にぃ、ちゃぶだーい!
この儀式、毎回やるならかなり好きですw 伝説のスキル取得イベントなのに、儀式だけ妙に安っぽいのがこの世界らしい。




