3 分子振動剣
「出たな、マツザカミノタウロス!」
俺達はついにダンジョンの地下10階のボス、マツザカミノタウロスと相対した。
手には巨大な魔法のビールジョッキを持ち、無限のエールを生み出すという。そしてその肉は大変柔らかくて美味しい為、高値で取り引きされるのだ。
「ゴクゴクゴクゴク……」
マツザカミノタウロスは俺達を無視してひたすらエールを飲んでいた。
「ゲフッ」
ゲップかよ。
「サケモテコーイ(鳴き声)!」
なんだその鳴き声は。
「どうやって倒すんだ、あんな化け物」
リーダンが迷いを見せる。確かにまともにやり合ったら絶対勝てないだろう。だが、こちらにはフレンがいる。
「フレン、奴の顔面にファイアーボールぶつけたれ。500度くらいで十分だから」
「えー、派手に燃やしてぶっ殺したいのにー」
フレンがイヤンイヤンとぶりっ子する。
「肉が炭になるわ!」
止めろこのサイコパス!
「もー、仕方がないなぁ。必殺ファイアーボール!」
フレンが火の玉をマツザカミノタウロスにぶつける。炎はマツザカミノタウロスの顔に命中。激しく燃えた炎が顔を包む。
「さ、サケモテコーイ……」
突然マツザカミノタウロスが倒れた。ズシン、とボス部屋が揺れる。
「え、死んだの?」
「うん、熱気を吸い込んで喉が焼けたからな。窒息死だ」
生物だからな。
あんな熱気を吸い込んだらそうなる。
「うーん、地味……」
フレンが不満そうに呟く。
「いいんだよ、勝てば」
派手にやったらこっちが被害を受けるからな。思い通りにやらせたら命が幾つあっても足らんわ。
「そうそう。それより宝箱だ!」
リーダンが奥に現れた宝箱に駆け寄り、蓋を開ける。そして一本の剣を取り出した。
「すげー! 分子振動剣だってよ」
剣の柄に『分子振動剣』と紙が貼ってある。誰だ、こんなもん貼ったやつは。
「へー、他には?」
宝箱を検めると、『分子振動剣使用説明書』という冊子が入っていた。俺はその冊子を手に取り、中を開く。
「なになに、この剣は魔力振動剣です。魔力を通すと、剣の刃が激しく分子振動を起こします?」
よくわからん。
凄いのかそれ?
「ホントだ! 魔力通したらなんか振動伝わって来たぞ!」
リーダンが嬉しそうに叫ぶ。
「へーっ、これで斬れ味が増したりするのかね?」
「な、なんか剣が熱くなってきたんだが……」
本当だ。なんか赤くなってる。湯気まで出てるな。
ドロリ……。
「ちょっ!? 剣が溶けて来た! 熱い熱い!」
なんと、剣先が溶け、床に落ちる。床がジュッ、と音を立てた。
「こ、これは……?」
俺は慌てて説明書の続きを読んだ。
「えーっと、なになに? 分子振動を起こすと剣先が熱を持つので、放っておくと熱で溶けます。また、脆くなっていますが、かなり熱いのでダメージはある……はず? ウッテン・ヤンヨー?」
は?
熱で剣先溶けたらあかんやろ。
「えー、もしかしてそれ、ゴミ?」
フレンがガクッと肩を落とす。
「そんな剣作るなーーっ!」
リーダンがブチ切れて残った剣の柄を投げ捨てた。
説明書の最後にこんな注釈があった。
『本作はジョークウェポンです。間違っても実戦で使わないで下さい』
うおいw
Chatさんに聞いたw
これはかなりこのシリーズの方向性が見えてきましたねw
正直、
火魔法回<エアカッター回<分子振動剣回
です。
一番まとまりがいい。
まず何が良いか。
「物理ネタ→自爆」が一瞬で終わる
火魔法回は説明が長かった。
エアカッター回はかなり改善。
今回は
分子振動剣ゲット!
↓
すげー!
↓
熱くなってきた
↓
溶けた
↓
ゴミじゃん
で終わる。
テンポが良いw
説明書が面白い
ここ好きですw
分子振動を起こすと剣先が熱を持つので、放っておくと熱で溶けます
普通こういう説明書って
なんでも切れる伝説の剣です!
なんですよ。
でもこの世界の説明書、
ちゃんと欠陥報告書になってるw
さらに
かなり熱いのでダメージはある……はず?
ここも良い。
開発者の自信のなさが見えるw
ウッテン・ヤンヨー
これもズルいw
どう考えても開発者名なのに、
もう投げやり感しかない。
個人的には
開発者
ウッテン・ヤンヨー
のシリーズ化ありだと思う。
伝説の魔導具
↓
全部欠陥品
↓
全部こいつ製
みたいなw
マツザカミノタウロス
こいつ好きですw
特に
サケモテコーイ(鳴き声)
ここ。
読者の頭に絵が浮かぶ。
ただボス戦はもっと短くていいかも。
この話の本題は
分子振動剣だから。
例えば
「倒したぞ!」
「宝箱だ!」
で即移行しても成立する。
物理的には?
実はかなり近い。
もし本当に
剣全体を激しく振動
させるなら、
まず発熱します。
超音波カッターですら発熱する。
なのに
「なんでも切れるレベル」
まで振動させたら、
先に剣が真っ赤になる可能性が高い。
だから
本当だ。なんか赤くなってる。
↓
溶けた
は割と自然w
オチを強くする案
今でも悪くないんですが、
最後に説明書の追記があるとさらに笑える。
説明書
※本製品は試作品です
※実戦投入は推奨しません
※販売終了
※開発者死亡
みたいなw
あるいは。
「そんな剣作るなーーっ!」
説明書最終ページ
『なお開発者はこの剣の試験中に死亡しました』
「だろうな!」
で締める。
このシリーズの核
3話まで読んで思ったのは、
これ
「現実物理で考えたらロマン武器は全部欠陥品だった」
シリーズなんですよねw
火魔法
→味方が焼ける
エアカッター
→反動で死ぬ
分子振動剣
→自分が溶ける
綺麗に統一されてる。
次にやるなら、
あなたが前に言ってた
真空波
絶対零度魔法
1アンペア
熱湯魔法
あたりは相性が良さそう。
特に
絶対零度魔法
は危険ですw
このシリーズなら、
「伝説の氷結魔法だ!」
↓
発動
↓
術者も凍る
↓
「寒っ」
↓
全滅
くらいの勢いになりそうw
あと、このシリーズのナンはだいぶキャラが立ってきましたね。
「物理法則を知っているせいで周囲のアホに振り回される常識人」
という立ち位置が安定してきてるので、最初のモエール版よりずっと読みやすいです。むしろ主人公はナンで固定した方がシリーズとして回りそうな気がしますw。




