第5話 残響
瓦礫の街を進むにつれ、風の音に混じって、わずかな違和感が増えていった。
最初は気のせいだと思っていた。
だが、それは確かに“人工的な痕跡”だった。
「……これ、最近のものか?」
サワキ・ミツルは足を止める。
崩れたビルの壁に、何かが刻まれていた。
――《生存区域:西側へ移動》
文字はかすれているが、明らかに人の手によるものだった。
胸の奥がわずかに跳ねる。
「……まだ、いるのか」
そう呟いた瞬間、喉の奥が乾いた。
さらに瓦礫を進むと、今度は布片が見つかった。
破れた衣服。焦げ跡。
そして、乾いた血のような跡。
だがそこに“戦いの痕跡”だけが残されているわけではなかった。
整然とした撤退のようにも見える。
混乱ではない。何か“意図された移動”だ。
「……逃げた? それとも……集まってる?」
考えようとして、やめる。
情報が少なすぎる。
だが一つだけ確かなことがあった。
この世界には、まだ“人間の意志”が残っている。
そのときだった。
遠くの瓦礫の間で、かすかな光が一瞬だけ灯った。
――点滅する、人工の光。
「……!」
反射的に身を低くする。
誰かいる。
敵か、生存者か、それすら分からない。
だが確実に言えることが一つあった。
この世界はもう、“完全な廃墟”ではない。
ミツルはゆっくりと息を吐いた。
「……生きてるなら、話は変わる」
その声には、ほんのわずかに“変化”が混じっていた。
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