第2話 現実の把握
瓦礫の隙間を縫うようにして、ゆっくりと歩く。足元は不安定で、少し踏み外せば崩れ落ちそうだ。
かつて人が行き交っていたはずの通りは、今では静寂に支配されている。
「……本当に、誰もいないのか……」
呟いた声は、すぐに風にさらわれて消えた。返ってくるのは、自分の足音だけだ。
崩れた建物の中に入り、手近な棚を探る。埃をかぶった袋の中から、乾いた保存食らしきものが見つかった。恐る恐る口に入れると、味はほとんど感じない。それでも、何もないよりはましだった。
喉が渇く。水を探さなければならない。
外に出ると、瓦礫の隙間からわずかに水が滴っている場所を見つけた。手ですくい、口に含む。冷たい感触が喉を通り、ようやく少しだけ生きている実感が戻る。
ふと、足元に転がる小さな石が目に入った。淡く光るそれは、ただの石ではない。
「……魔晶石か」
指先で拾い上げると、微かに魔力が流れ込んでくる。だが、その流れは不安定で、どこか歪んでいるように感じた。
街の崩壊は、ただの災害ではない。
この歪んだ魔力――それが原因なのかもしれない。
周囲を見渡すと、あちこちに同じような魔晶石が埋もれている。まるで、何かが爆発したように散らばっている。
「……何が起きたんだ、この街で」
答えはどこにもない。だが、立ち止まって考えている余裕もない。
空を見上げると、太陽はすでに傾き始めていた。夜になれば、この廃墟はさらに危険になるだろう。
「……今日は、あそこで休むか」
視線の先、比較的崩れの少ない建物を見つける。瓦礫をどけながら、中へと入る。
ここが安全かどうかは分からない。それでも、今の自分には進むしかない。
胸の奥に残る不安を押し込みながら、壁にもたれかかる。
静寂の中で、自分の呼吸だけがやけに大きく響いた。
「……生きるってのは、こんなにも必死なものだったか」
ぽつりと漏れた言葉は、誰に届くこともなく消えていった。
それでも――明日もまた、生き延びなければならない。
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