社長ビビる!
そうですか、驚きますか。あなた、信用注意ですよ!
レインのせいで赤い顔をしている彩内院の手に一枚のカードが握られていた。翡翠色のカードには『あなたで人を助けましょう』の文字が入っている。
「選ばれし君はこのレインさんがちゃーんと連れてってあげるから安心してねー。仕事が終わるまで待っててもいいけど。まぁ今日中であるなら好きなタイミングでどうぞ」
「いいよ別に今すぐでも。どうせ僕はここにいたって何にもしてないからね。そうだ金を準備していかなきゃだろ? 五千万? 一億? 感覚がわかんないからビシッと額を言ってくれたほうが助かるんだけど」
頬笑むレインが八本目のボトルの最後の一滴をグラスに落とした。その昔王族だけが飲むことを許されたというラムもレインにかかれば数分でこの通りだ。レインは洋酒をよく飲む。だが細かい好みはないので基本的に酒なら何でもよかった。
「いやいや。今は持っていかなくていいよ。それからムキムキくんたちもお留守番。彼らの代わりはレインさんが務めるよ。誰かに行き先を教えるのも絶対にダメー」
レインが口に指を当てて見せる。
「へぇー。そんなにひょろっこくて彼らの代わりができるのかな? いいかい優男くん、彼らはエリートの中のエリートで……」
彩内院のセリフにひょいっと眉を上げ、グラスを持ったまま窓際につかつかと歩いていったレインは、空いているほうの手で指切りの形を作りその小指で窓をなでた。
背筋が凍えるような音がして一瞬でクモの巣状の亀裂が全面に広がり外が見えなくなった。
あごが外れそうな彩内院は、ショックで持っていたグラスを落としてしまった。その中身が、この時代に一千万という正気とは思えない金額のカーペットに変な模様を作る。
「合わせガラスで良かったねー。って言ってもガラスが地上に落ちないように加減したんだよ。レインさんそこまでバカじゃないからさ」
彩内院が顔を引きつらせてブンブンブンと縦に首を振った。
「それ、了解、ってことでいいのかな? じゃ準備できたら行くよ。今日が終わる前にねー」




