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狩れ!  作者: 深言都
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ヲタ優位!後!

人は見かけで判断できません。あなた、記憶注意ですよ!

 困り顔の男を見ながらしばらく頭を悩ませていたシーナが、なるほど顔になっていきなり右手をビシッと上げた。

「私はシーナです!」

「……それはそれは。俺は佐伯 京介だ。あの場にいたなら知ってるだろうが親父の院……あー病院で働くただの医者だよ。って君の名前だけじゃさっぱりわからんぞ」

 もしこれが晴れた日の昼間で、さらに暗いビルの合間でなかったなら佐伯はきっと、その目はカラーコンタクトなのか検査すべきものなのかということでシーナを困らせていたことだろう。

「京介? いやーん! 京介だってー!」

 佐伯は残念なことにシーナが好きな漫画の主人公と同じ名前だった。そのせいで見た目は自分よりずっと若いシーナから簡単に呼び捨てにされることとなった。

「でー? 京介は私の何が知りたいのー?」

 変な誤解を招きかねない言い方だ。佐伯はシーナと普通に会話することを望み薄と感じていたため諦めモードに切り替えてシーナのペースに合わせることにした。

「あー、そうだな。じゃあ君は誰なんだ? 何で俺にそんなことを聞く?」

 キョトンとしてシーナは首を傾げた。

「誰ってー。『私はもしかしたら未来のあなたかもしれません』だから、質問するのです、だよ。合格か不合格かでその先に進むかどうか決まってーそのあとは合格した人だけのお話ー」

「なるほどなー……なんて、言うか! 全っ然わからんぞ! 未来の俺かもしれない? どこがだ! あぁもう何もわからんぞ!」

「もう。たまにいるんだよねーこういう人ー。京介は選ばれたけど、その先の説明をしてもらえるのは合格した人だけー。だからとにかく質問にちゃんと答えてもらわなきゃどうにもできないってわけー。はいっ!『なぜあなたは寄付をしたのですか?』」

(子供の遊びにしちゃーずいぶんしつこいよな。ほんと世の中にはいろんなやつがいるよ。こういうめんどくさいガキとかな)

 元から童顔で背も低く年齢よりずっと下に見られていた過去を持つシーナを本当にただの子供だと思っているのだ。

 困惑を通り越し、冷ややかな気持ちさえ覚えた佐伯がため息まじりに答えた。

「なぜって、あの金は親父があくどいことして患者から巻き上げた金だからな。ちょうど留守にしててくれたおかげで楽しいイベントに参加できたんだよ。ってね」

 口を開けて聞いていたシーナは頭をフル回転させて情報を分析していたが、それだけでは判断できずもう少し情報を増やすことにした。

「つまり? えーっと詳しく聞かせてくださいな」

 シーナの一言で佐伯は堰を切ったように話し始める。

「君みたいな子が聞いてわかるとは思えないがー、まぁつまり親父は昔っから患者を騙して二重三重に金をとってて、貯めに貯めた金でやたら高い外車だの女遊びだの無駄な別荘だのって使い方をしてたわけ。そしたら女と旅行っていうちょうどいいタイミングで医療イベントがあったから勝手に参加して勝手に全額寄付してやっただけだよ」

「めぇ」

 シーナが間抜けな相づちを打った。

「だって来るたびに初診料が発生したり、診てもらってないのに診察代が発生したりするのはおかしいだろ? 日帰り検査のはずが入院させるし必要のない高級機械使って、いらない検査したり風呂に入れてないくせに風呂代を一日何回分も計算に入れてたり、そのどれもが尋常じゃない金額で、だから医者はいい商売ねー。なんて言われて……って……わかんないか、やっぱ」

「……」

 相変わらず口を開けたままバカみたいな顔をしているシーナは話を聞きながら首を傾げてフリーズしていた。

「おーい、しいなちゃーん。わかんないにしても、その顔はないでしょ?」

「えーっとー、そうじゃなくって、いやそうじゃあるけどー。まぁ不合格は不合格なんだよね。だから私としてはおめでとうと言うべきなのかなー?」

 佐伯は目を泳がせた。

「何だかわからないにしても不合格って言われるのは感じ悪いな。軽くショックだし。ってことは何? 不合格で罰ゲームか何かあるわけ?」

 シーナはその言葉に一瞬驚いてから楽しそうに笑い、うっすら雪化粧された髪を揺らしながら首を振った。

「ないない。不合格って言うのは、こっち側で勝手に決めた基準だから。んー、かなり迷うけど今回は面白い話聞けたから愛するキャラメリゼはあきらめてあげる。いい夢を、さよなら京介……」

「は? 夢?」

 シーナは背伸びをして腕をいっぱいにのばし両手で佐伯の頭を掴む。

 その次の瞬間、佐伯は意識を失いその場に倒れこんだ。

「……今日は雪の日。ってことは寒いからこのままじゃ凍死しちゃうのかな?」

 シーナはググっと力を込めてしゃがみ込んでから目の前にあるビルの非常階段に飛び移った。そこからぴょんぴょん上っていき最後に屋上まで飛び上がる。

 雪が積もり始めていた屋上から手で作った拡声器の力を借りてきちんと最後の仕事をした。これもレインの教育の賜物だ。

「誰かきてー! ビルの間に人が倒れてるー!」

 声を聞きつけ小さな人影が佐伯に駆け寄っていくのを確認してからシーナはその場を離れた。(今の分取り戻すために五倍速で急ぐにゃー)

 記憶は消えない。目を覚ました佐伯は最初に願った通り、ただのくだらない夢だったと思うことだろう。

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