流れゆく時間!
幸福と不幸の条件は同じです。それを決めるのは自分自身なんですから。あなた、虚像注意ですよ!
……
レインが静かに立ち上がり窓から外を眺めた。
「この世界に落とされたレインさんを救ったのはカイン、君だったんだけどね」
「えっ? それってどういう……」
それには答えず静かに微笑む。
「んー、あの二人が暴走しないうちにそろそろレインさんたちも行ったほうがいいかなー」
大きく伸びをしたレインが余計に大きくなった。
「……そうだね」
カインは静かに頬笑んでカップを片付けに行った。
外を眺めたままのレインは、強くなりたいとしつこく言うカインに武術を教えていたことを思い出していた。
どんなに倒されても傷ついてもいくらでも立ち向かってくるカイン。確かに戦場で泣いていた頃とは違い、それなりに強くたくましくなっている。それでも、ひよっ子のどこにそんな力が隠れているのかとレインは不思議に思ったものだった。
(俺より強くなったらどうしよう、なんて本気で心配しちまったからな……)
カインが戻ってきて部屋の入り口で待っている。
「さて、レイン。それじゃ僕らも行こうか」
振り返ったレインが歩きながら笑顔を見せた。
「そうだね。シーナも暴走していそうだし。カインがきてからあの子は余計手がかかるようになったよ」
クローゼットの中には真っ白と真っ黒の長い長いコートが一着ずつ残っている。
「シーナはレインに甘えてるんだよ。僕がレインを取っちゃったと思ってるから余計にね」
大きく広げられた白いコートを優雅にまといながらカインが笑う。
「カインもジャックにずいぶん気に入られてるじゃないの。そうだ。あの子は肩車をしてあげると喜ぶよ。レインさんほどはなくてもカインも十分背が高いからね」
頬笑みながら洗練された動きで真っ黒なコートに腕を通すレイン。
「ねぇレイン、無駄なことを聞いてもいいかな?」
「あぁ、もちろん」
ドアを開けて一歩先に踏み出すレインが振り返って優しい眼差しを送っている。
その半歩後ろからカインが外に足を踏み出す。
「今、君は幸せかい? レイン」
外は暖かく空は透き通っている。
二人の間にある時間が、ゆっくり、ゆっくりと流れていく。
一秒、一秒、また一秒……
「それは本当に無駄な質問だよ。カイン」
楽しそうに笑う二人。
レインとカインは、その瞬間を噛みしめながら並んで歩き、やがて街の雑踏に溶け込んで消えていった。




