雪原の出会い!後!
都合が良すぎることには、“運命”などという思い込みが共存しているものです。あなた、切望注意ですよ!
大体違う世界からきている時点でこの質問の答えは出ている。
「いや」
男は低い声で、やっとそれだけ答えた。
「そう。じゃあよかったね」
「……」
(俺は勝手にここに送り込まれただけで、よかったも何も……)
「よその人なら僕みたいに戦争に行かなくてすむんでしょ?」
少年の目からあふれ落ちた涙は、頬を凍りつかせていく。
「まったく手のかかる奴だな……伏せてろ」
「え?」
放り投げた手榴弾が地面に大穴をあけた。開けた場所なので雪崩の心配もなく、すぐに簡易雪避場ができあがった。
「入れ」
「あ、うん。ありがとう」
(礼なんか言うな! ガキめ!)
「ちっ!」
男は自分が何をしているのかわからなくなっていた。
少年は男の風貌に臆することなく問いかける。
「ここじゃないってことはどこからきたの?」
話して通じる場所ではない。
「遠くだ」
「へぇ。じゃあさ、僕のことも殺してよ」
「なっ……」
殺さないでくれと言われることはあっても、殺してくれと笑顔で言われたことなど初めてだった。もしこれで殺せば少年の言うことを聞き入れたことになる。こんな小さな子供の言いなりになったということだ。
男は苛立った。
「クソッ! 何をバカなことを!」
すると少年がいきなり男の赤い髪を引っぱって目を見つめた。空いた手でヘルメットをはずす。
少年の髪も男と同じ赤色だった。
「僕もう嫌なんだよ。父さんも戦争に行ったっきり戻ってこない。僕は人なんか殺したくないのに兵隊として駆り出されて……残った家族も殺された。でも僕は、僕は自殺することさえできないんだ!」
男は少年を見つめていると自分のミニチュアを見ているような錯覚に襲われた。
(何なんだこのガキは)
「お前は人を殺すのが嫌なのか、お前自身が嫌なのか、どっちなんだ?」
「両方」
少年は迷うことなく答えた。
「……そうか。じゃあ俺が代わりにやってやろう」
「えっ? 何を?」
「代わりに殺してやる。だからお前は勝手に生きろ」
そう言い残して男が穴からはい出した。
少年が慌てて後を追う。
「待ってよ! どうして? 何で僕を殺してくれないの?」
足を止めた男が振り返って冷たく言い放つ。
「お前が自分で言ったんじゃないか。自分を殺すことはできない、と」
「えっ……?」
マントをなびかせて男は立ち去った。




