その背に!
何もかもさらけ出す=愛情ではないのです。あなた、心得注意ですよ!
(ちくしょう……!)
無言で過去を振り返っていたレインの手は、いつのまにか固く握りしめられ血が滴り落ちている。
「レ、レインっ!」
小さく叫んだカインが、思わず駆け寄り血を拭った。
レインは、カインに構うことなく静かに重い口を開き始める。
「俺は持っていた力で抵抗したが、そいつの手を吹っ飛ばすのが精一杯だった。おかげで元いた世界は俺みたいなのを生みだす危険物として破壊され、代わりに落とされたのがここだったんだ。おそらくこの世界でリセットすればいいとでも思ったんだろう」
レインは自分が過去として持っているすべてを淡々と、そして簡潔に口にした。
「な……」
今、目の前にいるひとりの男が一体どれだけの物を背負って生きているのか、カインは考えるのも恐ろしかった。
「俺はすべての世界を破壊する気だったが前の失敗があるせいで奴らは俺をつかみ出さなくなったからな。おまけに世界を包む空間をどんどん広げて自力で辿り着けないようにしちまった……っ!」
急にカインがレインに抱きついた。そのまま締め上げる。それはまるでレインの記憶をすべて破壊しようとしているかのように見えた。
「いつか……いつかそんな君の苦労が報われるときはくるんだろうか」
泣くこともできないためカインは悔しさに唇を噛み締めた。
乾いた血の跡が残る大きな手は、ぽんぽんとその背中をたたく。その眼差しは柔らかで、お兄さんのレインがもどってきていた。
「ねぇ、カインはどこまで覚えてる?」
首にカインを巻き付けたままでレインが優しく話しかける。
「僕の記憶は、君がレインじゃなかった頃からだけど、あまりに古い記憶はどうかな……ちょっと曖昧かもしれないな」
カインが腕の力を緩めた。レインの次に強いため本気を出せば首にヒビくらいは入ったかもしれない。
腕を放したカインは表情が戻ったレインを見て安心したのか、おとなしく横に並んで座る。
その耳に、聞こえるか聞こえないかくらいの声でレインがぽつりとつぶやいた。
「そうか……それはよかった」




