そしてここへ!
投げ出して諦めるのは簡単ですね。そして楽ですね。あなた、自存注意ですよ!
言葉を失ったまま揺れていると、突風と共に地鳴りが近付いてきた。
創造主の吐息に体をなびかせたアレキサンダーは、ナイフを握る手に力を込め、空いた手で素早くゾルゲを抜き、風がきた方に向かって構える。
だが引き金を引く前に闇に包まれ、一瞬で上下が逆さまになってしまった。
「うわっ!」
アレキサンダーは、その動きから自分を包んでいる物が手に相当する部分だと気付いた。
(くそっ! こんなチャンス逃してたまるか!全部は駄目でも、せめてこいつを……)
声の主は、そんなアレキサンダーを嘲笑っている。
『これは驚きだ。ここを見て、まだ暴れるだなんて本当に元気なやつだな』
足場はできたが、闇の向こうから聞こえてくる言葉に怒りを覚えたアレキサンダーは、自分に被害が及ぶのを承知で中粒子爆弾を使った。
その威力により闇に大穴が開き光が差し込む。そしてまた宙に投げ出された。
当然、逃げ場をなくした爆破の衝撃は自身の体も削り取っていたが、彼にとっては大した痛手ではない。
『こいつ! まだそんなことを!』
割れそうな声は、落ちていくアレキサンダーをまたつかまえて、ぶらさげ揺さぶった。
「くっ!」
『なんてうるさいやつなんだ! コレはとんでもない失敗作じゃないか! こんなことになるなんてな! 始めからやり直しだ!』
「!」
(そんな……馬鹿な……!)
アレキサンダーは黙って揺さぶられながら見下ろしていた。自分がいた世界が消滅する瞬間を。
この世の物とは思えないほどの不快な音が響きわたる中、ただ見下ろしていたのだ。
「……」
『あぁ、そうだ。こういうやつは……』
(! 何っ?)
いきなり放り投げられたアレキサンダーは、声も出せず真下の球体に向かって落ちていった。
スローモーションのように落ちながら、くるくると回り目に映るものを焼き付けていく。
宇宙、惑星、天地、空間すべてが丸ごとひとつの世界。それと同じタイプの物が外には無数に作られている。動き変化し生きているおもちゃとして。
それぞれの世界には持ち主がいて好き勝手に自分の箱庭を創造している。
アレキサンダーは自分たちが創られ、ただ配置されていただけのおもちゃにすぎない、ということを思い知ったのだ。
目の端に、創りたての新しい駒を嬉しそうに眺める一人の創造主が映り、なぜかわかりきっていたことを改めて心の中でつぶやいた。
(あぁ……そうか。この形は自分たちに似せて創ったってわけか)
すべてを悟ったとたんに空間が割れ、アレキサンダーはそのまま雪原に叩き付けられた。




