絶妙な彼等!
ごく自然にゆるやかに……。日常は、それと気付かぬほど穏やかなものなのです。あなた、進度注意ですよ!
「あれ? そうだっけ? レインさんうっかりー」
「だいたいこんなのんびりになったのも、カインが茶なんかゆっくり飲んでるからだぞ! そもそも何でみんなわざわざ何かを食おうとするんだ? 俺様にはさっぱり理解できないね」
さっきまでシーナと喧嘩をしていた自分のことは棚に上げて、カインのせいと言わんばかりの言いぐさだ。
新しいカップに紅茶を注ぐカインが優しく頬笑む。
「まぁ、僕が増えたおかげで慌てて行かなくてもよくなったってことだろ? 天気もいいことだしジャックとシーナは先に行ってのんびりと仕事をしておいで」
みんなの様子を黙って眺めていたレインはそれを聞いて、またソファーに横になった。
「えー、何それ。カインは行かねーのかよー?」
「そうだぞー。私たちを追い出してレインと二人っきりになろうとしちゃずるいしー」
カインはカップを揺らしてダージリンの香りを楽しんでから口をつけ、じっくりと味わっている。
「ねぇジャック、もし後から出発した僕がさ、先に出た君よりも遥かに多く人を集めてしまったら君はどう思うのかな?」
言い終わらないうちにジャックが突風のような勢いで部屋から消えた。
シーナはポカンとそれを見送る。
すぐにクローゼットを乱暴にしめる音とドアが閉まる音が聞こえてきた。
カインはテーブルの上のスコーンにジャムをのせながら静かに口を開く。
「ところでシーナ、僕の記憶が正しければ今日は確か“もふわーず”特製みるきーワッフル、パイン&マンゴースペシャルの発売日だよね。でも並ばないと買えないって噂だから早く誰か見つけ……」
「いやああああああああ!」
次の瞬間にはシーナが消え、そのままの勢いでドアの閉まる音が聞こえた。
なんだかんだでシーナにスイーツの幸せを教えたのもカインだったのだ。
静かな部屋の中に取り残された静かな二人。
はむはむとスコーンを頬張るカイン。
部屋に立ちこめる紅茶とスコーンとアルコールの香り。ほわほわっとカップから立ち上るゆげ。窓から差し込むやわらかな光は、あたたかく部屋を照らしている。
指に付いたジャムをなめるカインが、いつもの場所から天井を見つめているレインに優しい眼差しを送った。




