無邪気ゆえ!
心の内は、本人にしかわからない事情を含んでいるものです。あなた、言動注意ですよ!
だが、意外なことに落ち着いているレインは静かに話しだした。
「ねぇシーナ。シーナはカインのこと忘れてたのにレインさんの名前が変わったことは覚えてるの?」
「うん、覚えてるよー。確か前の名前はねー……」
「! えっ?」
これにはさすがにレインも驚いた。レインたちのようにリセットされた生き物は一度失われた名前を口にすることはできないのだ。人ではなくなった今、名前はひとつずつしか存在せず、レインのように名前を変えた場合は前の名前が完全に消去されるようになっていた。
レインとカインはそろって口を開けたまま固まっている。
「えっとー…………忘れちゃった! てへっ」
思いっきり息を吐いて脱力する二人。
「それで正解だよシーナ。あまり僕らを驚かせないでくれ」
カインの一言に突っかかるシーナ。
「ちょっとー! 後からきたくせに“僕ら”ってなーにー? 何でレインとセットみたいに言ってるのー? いくら名前が似てるからってずーるーいー!」
レインが頬杖をつく。
「レインさんとカインのほうが長く一緒にいたんだから仕方ない……でっ!」
シーナの頭突きを口で受けたレインが黙る。大きくて強くて丈夫すぎるレインに容赦はないのだ。
「ねぇ、また名前変えてよレイン。カインと似てない名前にしてー」
困り顔のレインが何か言う前にカインが勢いよく立ち上がった。その勢いでテーブルの上のティーセットが、かちゃん! と揺れる。
「ダメだよシーナ! なんてことを言うんだ君は! もう少しで熱ーい紅茶を頭からかけてやるところだぞ! レインは名前を変えたりしない! それは大事な名前なんだ!」
「えー? そうなのー?」
シーナがレインの顔を見た。
だがそれには答えずシーナの頭をなでながら笑顔を見せて立ち上がった。
「さてと、レインさん今日は何をしようかなー」
部屋の隅からそっとのぞいていたジャックが飛び込んできた。
「何しよっかな、ってレイン! 俺様気付いたけど今日はまだ一人も集めてないんじゃねーの?」
そこにいた全員の時が止まった。
……




