始まる日々!
今というものは絶えず変化しています。そして次の今をつくっていくのです。あなた、平常注意ですよ!
「うっ!」
ソファーに寝転んでいるレインの顔目掛けて投げ飛ばされたシーナが降ってきた。
「このやろうー! よくもー! 待てー!」
「誰が待つかよ! バーカ!」
ばったばったとお子様二人が部屋を走り回っている。横になったままのレインは鼻をさすって、何か壊さないか心配しながらそれを眺めている。
茶葉を蒸らす時間を計っていたカインが大きなため息をついた。
「やれやれ、静かなティータイムは夢のまた夢ってところだね。せっかくの紅茶に、ほこりが入ってしまうよ」
レディー・フランソワの飼い主が行方不明になったのを聞き“身内”が荷物を片付けに行った。不思議なことに、それ以来カインは本格的で素敵なティーセットで毎日のお茶を楽しめるようになったのだった。
カインは日が経つにつれ本来の自分を取り戻し、貴公子モード前回でマイペースな毎日を送っていた。
「あー、やっぱり僕はレインと二人で静かに暮らしたいな。子供がいるとどうも騒がしくていけないね」
「あぁ、そうだねぇ。あの頃みたいにレインさんとカイン、無敵の二人で……ぐえっ!」
シーナがレインのみぞおちに膝から着地した。
逃げ足の速いジャックはシーナがレインに向かって飛び上がったのと同時に部屋から消えていた。ケンカ両成敗でシーナが暴走したとしても怒られるときは、だいたい二人一緒だったからだ。
「こーらー聞こえたぞーー! レカイン!」
レインはシーナをひょいっと持ち上げて床に下ろした。何事もなかったかのように。
「それ止めなさいな。変な呪文みたいでレインさんやだよ。カインも何か言ってよ」
「ノーコメント」
カインは黙って紅茶を注いでいる。
「だってー、まぎらわしいしー。ねぇ、じゃあ名前変えたら? レイン前にも名前変わったことあったでしょー?」
「!」
とたんにカインが手をすべらせてカップを落とした。
名前を変えた、ということはレインがカインを失ったときということだ。記憶に残っているとはいえ、そのことをわざわざ蒸し返す必要はない。
動揺しているカインは震える手で割れずにすんだ絨毯の上のカップを拾ってレインの様子をうかがう。この件に関してはレインもカインも当事者なのだ。




