さすが相棒!
その場所には独特の空気が流れています。あなた、関係注意ですよ!
ふいにレインがカインの鼻を指ではじいた。もちろんかなり加減して。
「てっ! 何か久々だな、これも」
鼻をおさえて笑う。
“お兄さん”のレインからバカなことを言うカインへのお仕置きだった。
「確かにレインさんは、ある種の生き甲斐を感じていた頃があったけど……今はもう“それ”を望んではいない。それに背負ってるって言っても今は何も苦痛に感じないからね」
それを聞いたカインが、しゃがんだままで遠くに目をやり片手で髪をかきあげた。
(生き甲斐か……)
『こんな姿になった自分たちが生きていると言えるのか、命があると言えるのか』
レインがまだ違う名で呼ばれていた頃に、カインはよくそんな疑問をぶつけていた。“死”を経験したことで自分は“生きていた”のだ、という答えが出たが、それも再生したからこその答えであって正解かどうかまではわからなかったのだ。
人間だった頃の話ではなく「じゃあ今は?」と聞きたい反面、カイン自身それに答えられない怖さから、結局何も言えずに黙ってしまった。
……
そんなカインを横目で見ていたレインが手を伸ばして真っ白でふわふわの髪をそうっと引っぱった。二人とも座っているので目線はそう変わらない。
「カイン、この世で一番の不幸は何だと思う?」
真意がわからずレインの目の奥をのぞきこむ。
「えっ?」
カインも世界の仕組みを知ってはいるが、この世のすべてを理解しているレインには到底及ばない。それなのにあえてそんなことを聞いてきたことが信じられなかったのだ。
「……君が、それを、聞くのかい? ちなみにその質問に正解はあるのかな?」
「……」
そっとカインの髪にふれていた手が、いきなりその頭を鷲掴みにして乱暴にかき混ぜだした。
「うわっ! ちょっとレイン! 何す……」
とっさに横を見たカインは、息を呑んだ。
レインの冷たく鋭い眼光がカインを射すくめていたのだ。
「もう……二度と俺にあんな思いさせるんじゃねーぞ……カイン!」
「!」
ザワッと鳥肌がたつ。
レインは動けないカインをその場に残して身を翻すと屋上から落ちそうになっている二人を救出しに向かった。
「ほーら、二人ともー、そのへんにしなさいな。いい子にしないと帰りは歩かせるよー……」
放心状態のカインはぼんやりその様子を眺めていた。レインの言葉と、目の前で繰り広げられている光景、自分がここにいる理由。そのすべてを答えとして受け取った。
胸に引っかかっていたありとあらゆるものすべてが一気に消えていく。
「了解したよ。レイン」
カインは大きく頼もしい背中に向けて最高の笑顔でつぶやいた。




