顔合わせ!
いい関係というものは、気付けば築かれているものなのです。あなた、調子注意ですよ!
白い貴公子はコートをはためかせながら信号機の頭と電線をうまく使ってレインたち三人の前に着地した。
再会した二人が静かに笑顔を交わす。
「おや、シーナもいるんだね。こっちの彼は初対面だな。“楽しく”やっているようで僕も嬉しいよレイン」
「え……誰? 私こんな人、知らないよ?」
「シーナ……君らしい答えをありがとう。君に漫画の楽しさを教えたのは僕だったんだけどね……」
レインはようやく二人を肩から降ろしてジャックを前に出した。
「カイン、この子はジャック。ここの新米さん。そして、この白くて長ーいコートのお兄さんはカイン。昔のレインさんの相棒だよ」
「お、おう」
「レインと名前似てるー。まぎらわしーい。あ、私わかったー! カインはあれでしょ? 粉み……」
「!」
シーナが何を言おうとしているのかがわかったジャックは、すかさずショートレンジ・ラリアートを食らわせた。
「ひゃいん!」
それを引き金に、また取っ組み合いが始まる。レインとカインは申し合わせたかのように、ひらっと飛び退いて避難した。
戦う二人から目を離さないまま、とばっちりを受けない距離を取ってコンクリートの椅子にレインが座った。カインはその横に立つ。白いコートを汚したくないという理由から外では基本的に立っているのだ。
片膝を立てて座るレインと、その半歩後ろで左側に立つカイン。これがこの二人の昔からのスタイルだった。
「懐かしい、というところかな?」
「いーやー。レインさんにはほんの一瞬だよ。懐かしい、なんてないからねー」
「あー……レイン、君ってそんな風だったかな?」
「レインさんはレインさんのままだよ! ところで君がここにいるのは、この街は四人でやって行くってことでいいのかな? それともレインさんの顔を見にきただけ?」
楽しそうにカインが笑った。
「そうだね。とにかく君に会うことしか考えていなかったよ。でもよそが人手不足、なんてことになるまでは僕もここにいていいんじゃないかな?」
「そうだね。レインさんもそれがいいな。ジャックは仕事が楽になるって喜ぶだろうし」
ふっ、と頬笑む二人。
カインは静かにレインを見下ろした。闇色の姿は真っ黒な中でも際立って見える。
「ねぇレイン、君はまだ……覚えているのかい?」
レインはその問いに前を向いたままで淡々と答えた。
「あー……レインさんも焼きが回ったもんだね。こんなことで世界のあり方を見過ごすようじゃおしまいだよ。結局レインさんも奴の思い通りに動くただのおもちゃだったってことかな」
珍しくカインがしゃがみこんだ。きれいなコートが地面に敷かれている。
「ねぇ、僕は君の過去を知らない。もしかしてレインにはどこか戻りたい時間や場所っていうのがあるのかな?」
目を合わせる二人。
「……レインさんの過去を知りたいってこと?」
「いや、過去を知りたいというよりは、レインがすべてを背負っている上で望む何かがあるんじゃないかなーっと思っただけさ」
(って、何を言ってるんだ僕は……)カインは自分が口にした言葉を残念に思った。なぜいきなりそんなことを聞いたのかもわからなかった。
以前一緒にいた頃から多くを語らなくてもわかりあえた二人だが、過去やその深い部分に切りこむことは今まで一度もなかったのだ。




