本当の再会!
流れる時間というものは、それぞれに違う重みがあるものなのです。あなた、胸中注意ですよ!
「ねーぇ、レーイーン。どこまでいーくーのー?」
「シーナ黙れよ。舌かむぞ。聞かなくても着けばわかるだろ」
むうっとしたシーナがジャックを蹴っ飛ばした。
「うわっ! シーナてめぇ! 落ちたらどーすんだよ! 俺様を殺す気か?」
もちろんレインがしっかりと握っているので落ちる心配はない。
「べーっ」
肩の上、しかもこの状況でも喧嘩ができる二人に構うことなくレインは無言で走り続けた。
シーナはいつものように特に気にしていなかったが、ジャックはこんなレインを見るのが初めてだった。これから起こることが怖いことだったらどうしようと言わんばかりにしがみつく腕に、ぎゅうぅっと力がこもる。
ジャックが精一杯力を込めたところで高が知れているのでレインは痛くも痒くもない。だが、その不安な気持ちはレインにしっかり伝わっていて、ジャックを支えながらも、ぽんぽんっと背中をたたいてやるのだった。
レインが街を半分横切ったあたり、ビルの屋上で足を止める。二人を乗せたままなのは、しがみつく手が降りたくないと言っているのがわかるからだ。
凛とした風が吹き空気は澄みきっていて、それが街に残る雑音を遠ざけていた。
静けさの中、またひとつ星が流れたがシーナはこれにも気付かない。
空は届きそうなくらい近くにあって、世界が変形しているような錯覚を起こさせた。
三人ともしゃべらない。
シーナが黙っているのは降りろと言われたら嫌だから。
ジャックが黙っているのは、今のこの状況が全くわからないから。
そしてレインが黙っているのは……
「おかえり……カイン」
何より先にこのひとことを言いたかったからなのだ。
ほんの一瞬の間を置いて、よく通る声が返ってきた。
「あぁ、ただいま。レイン」
レインは目を閉じて聞き馴染んだ声を全身で受け取り、まさにこのとき時間の壁がなくなったことを実感した。
カインが立っているのはまだいくつかの部屋に灯りがともっている向かいの建物の屋上。少し前まで彩内院 塔哉という社長が経営していた場所だ。そこで何を思うのか……忘れられないことの辛さを知るレインはカインがその場所にいることに少しだけ胸を痛めた。




