残されたもの!
いつもそう。いってしまったものの本意はわからないままなのです。あなた、残像注意ですよ!
「お前たちはボディーガードのくせに一体何をやっているんだ! あいつに何かあったときは責任をとれるのか? 何のためにお前たちを雇ったと思っているんだ!」
息子が七才のときからボディーガードをつけることに決めた張本人だ。早いうちから息子に会社を譲ったため、まだまだ現役でもいけるほどの年だった。
子供ができずに“ある人物”から一人の養子をもらい自分の子として育てた。つまりこれでこの会社は完全に跡継ぎを失ってしまうこととなったのだ。
「しかしボスは親しい知り合いと一緒なので問題ないはずです」
「私も同じ意見です。ボスはもう子供ではないのですから……」
筋肉隆々の二人は仁王立ちのままで説教を受けているが反省の色はない。
「何だそれは! さっきからそれしか言っていないが名前も言えない知り合いがどこにいるんだ!」
二人はまた黙秘をきめこんだ。
「そもそも名前も知らずになぜ知り合いと言えるんだ! ええい、もういい! お前たちの処分は後で考える! 覚悟しておけ!」
怒鳴るだけ怒鳴ってから、破壊せんばかりの勢いでドアを閉めて出て行く。廊下からの声も筒抜けだ。
『捜せ捜せ! 全く当てにならん役立たずの警察でもないよりましだ! 呼び出せ! 総動員して捜すんだ……』
部屋に取り残されたボディーガード二人は顔を見合わせてため息をつきながら、やれやれとお互いに首を振った。
二人には自分たちの若きボスがもう戻ってこないことがわかっていたし、それが悪いことではないというのも承知していた。
「どこかに新しいボスでも捜しに行くかな? お前はどうする?」
「特に予定はないからお前について行っても構わないぞ。お前といれば、またおもしろいことに巡り会うかもしれんからな」
「国に戻ってまた軍人はどうだ?」
「あんなことがあったあとでは今さら、だな」
互いに、ふっと顔が緩む。
「確かにそうだ」
ひび割れたままの窓。主をなくした部屋の中はいくつもの洋酒のボトルが転がったままだ。
ガラスのテーブルの上にボディーガードの証であるバッジとICチップ入りの入社許可証を二つずつ置き去りにして、二人はそのまま姿を消した。




