その白い空間!中の上!
目の前のことしか見えていないのではありませんか?あなた、死角注意ですよ!
答えが見えているにもかかわらず青年は思っていることをわざわざ口に出した。
「そうか、じゃあそのすべてを消したくないならここにいればいいってことだな。次に進んだりしないでさ」
そして悲しそうに下を向いて微笑んだ。
「それは個人の自由ですからもちろん構いません。ただ未来永劫ここにいることになる、というだけのことです」
青年は顔を上げた。その目には涙がうっすらと浮かんでいる。コートのポケットに両手を突っ込み、真っ白な少年に対して自分が答えたことをもう一度思い返して、それでも答えが変わらなかったことに安心した。
青年は本当になくして困る物が思いつかなかったのだ。金も仕事も家族も、自分さえも。
「僕は死んでしまうのかい?」
涙が頬を流れ落ちたが青年は悲しいわけではなかった。悲しみどころか喜びを感じていたのだ。
「いいえ。それは正しくない表現です。あなたは世界を形作るものの素材となってマイナスの部分に補充されるという仕組みになっているのですよ」
「つまり? 僕がお金や食べ物に変身するってこと? 僕は粘土細工じゃないよ」
「今のは半分ほど正解です。ここにくる選ばれし素材は、目的に合わせて加工されます。世界はすべてつながっていて……あなたがさっき言った粘土細工と同じです。粘土の種類と色を使い分けて街や生き物を創ったとしましょう。それらはひとつひとつみんな違う物であり違う形であり、そして……すべて同じ力によって生み出された同じ粘土です」
青年が微笑んだまま話を引き継いだ。
「そしてその粘土の生き物は自分が誰に創られたのかを知らず我が物顔で生きていて、創り手はいつでもそれらを好きなように作りかえ、並べ替えて遊べるっていうわけだろ?」
「その通りです! つまりこの世界は丸ごと生きている『ドールハウス』なんですよ。以前そう呼んだ方がいらっしゃいました。でもこのプラスマイナス=ゼロというバランスルールは今回新しくできたもので……」
ハッとして真顔になった青年の頭に(やっぱり)という気持ちが膨れ上がった。どうしようもないことを知りながらも、ため息をついて自分と同じ種族の愚かさを心から呪った。




