98年前!前!
すべてのことには経緯が存在するのです。あなた、暴発注意ですよ!
九十八年前 フィンランド大公国
白銀の世界に映えるであろう燃えるような髪と魔力を宿しているかのような緑色の瞳。その手には特製ダブルアクション・オート“イデア”と“ゾルゲ”が握られている。どちらもこの時代の技術で作れるとは思えない出来ばえだ。
足まで隠れる黒いマントが爆風に煽られて、ゆっくりとなびく。
「答えろ。ここの主は、どこにいる?」
歩く武器庫は地の底から響くような声を発しながら立っていた。そこから一歩だけ踏み出した足が床に散らかった木片を粉砕する。
ブーツナイフと仕込みナイフ、予備の弾から、セラミック合金まで仕込まれた、信じられない重さのブーツが鈍く光を放った。
「君が何を言っているのかわからないよ。アレキサンダー・カールソン。その前に僕らの部屋をこんな目に遭わせた理由が聞きたいね」
余計に小さく見える少年は冷静に答えている。
「その名を口にするのは止めろ。それよりも早く奴の居場所を吐け。お前にはわかっているはずだ」
大男は、ゾルゲをまるで羽ペンか何かのように少年に向けて構えた。普通の人間なら撃った反動でその手の骨を砕いてしまうほどの威力を持つ主力の銃だ。
「アレキサンダー・カールソン、君はそんなもので僕を殺せると思うのかい? ところで君の後ろに見えているのは原形をとどめていない僕の仲間だったものに見えるんだけど気のせいかな? アレキサンダー・カールソン」
部屋いっぱいに立ちこめる硝煙、壁とドアだったものの残骸、無数に放たれた火薬の臭い、そしてすぐにそれとわかる鉄くさい臭い。
闇のコートからは赤い水が滴り落ちて水玉の道標を残していた。
「はっ! お前を殺す? 馬鹿を言うな。見せかけだけのゴミが。俺が狙っているのはお前の後ろにあるクソみたいなドアだよ」
「えっ……?」
慌てて振り返った少年は驚きと体験したことのない恐怖に目を見開いた。
「そっ、そんな! 嘘だ! そんな馬鹿なことがあるはずない! どうしてアレキサンダー・カールソンにドアが見えているんだ! しかもこんな目の前に! そんなことは不可能だ! アレキサンダー・カールソン! 君は一体何者なんだ!」
透き通った白い肌に、血も凍るような笑顔が浮かび上がった。
「よく聞け。俺は奴との遊びに飽きた、ただの失敗作。そしてこのクソみたいなお遊びを終わらせるためだけに存在しているつまらない捨て駒だよ」
「そんなっ……! どうしてっ? やめてくれアレキ……!」
!




