見えてくるもの!後!
ほんの少し視点を変えるだけでいいのです。あなた、位置注意ですよ!
「もちろんさ。答えは、僕らのトップと言われる存在であり、“君ら人間が”勝手に神なんて位置づけてしまった存在、だよ彩内院 塔哉」
「えっ? 冗談だろ? 神なんているわけないじゃないか。僕は見えないものは信じない主義だからね」
「うん、彩内院 塔哉、人間たちが思っている神様っていうのとは少し違うんだよ」
両手を広げて優しく言葉を繋いでいく。
「この世のすべて、空に浮かんでいるように見える太陽、吹きつける風、咲いている花、泳ぐ魚、闘う獣、そして人間。世界のすべてがただのおもちゃなんだよ。特に人間はすべてを勘違いしている質の悪いおもちゃだね」
急に無表情になり黙りこくる彩内院。こんなことを言われても普段のようなおもしろいリアクションが出るでもない。それどころか、かえって冷静になって頭を回転させ始めた。まるで日頃全く使われていなかった部分が今までの遅れを取り戻そうとしているかのようだ。
少年も何も言わず、ただ微笑みながら彩内院のまわりをふわふわと音もなく歩き出した。
五分ほどして彩内院は、ふいに楽しそうな顔になり少年に目で訴えた。それに気付いた少年が足を止めて彩内院の目の前にしゃがみ込む。
「そうだね。僕はそんな馬鹿な、とは言わないよ。自分でも不思議だけど本っ当に漠然と、うっすらその感覚がわからないでもないんだ」
そして少年に見上げられながら、ゆっくり立ち上がって胸を張り背筋を伸ばした。
胸ポケットから眼鏡を出し、しっかりかけてから目の前のドア部分にふれる。
「もう行くよ。人間が踏み込んではいけない領域に踏み入ることがどういうことなのか、僕は世間を見て嫌になるほど知っていたんだってことを思い出したからね。それじゃ……」
ドアノブに手をかけ力を込める。
少年もその後ろに静かに立つ。
音もなくドアが開かれ薄暗い部屋の中に溢れる光。
“彩内院 塔哉”がその光に向かって大きく一歩踏み出した。
光が当たって白くなった少年が決心したように拳を握る。
「彩内院 塔哉! 彼は誰かを助けようとしたんじゃない! 知っていたんだ。この世界の仕組みを。そしてこの世界ごと“神”を破壊しようとしていたんだ! 彩内院 塔哉、君は彼に……!」
少年は振り返らないまま光に飲み込まれていくその背中に向かって、最後にもう一度だけ名前を口にした。
「……やっと会えたんだね。彩内院 塔哉」




