見えてくるもの!前!
耳を疑うようなことは何処にでも転がっています。あなた、逃避注意ですよ!
「え? 出来損ない? 元人間ってどういう意味なんだい? 君SFの見過ぎじゃないかな?」
「だからそのままの意味で出来損ない、だよ彩内院 塔哉。ドアの向こうに行ったら人助けをするんだけど、極稀にその役目を果たせない出来損ないが出るんだよ」
出来損ないという単語と、自分にこれから起こることの関係を探るが、今の時点の彩内院にわかるはずもなかった。
少年が先を続ける。
「そういう人間は最後のドアを越えているから元の暮らしには戻れないんだよ彩内院 塔哉。さらに誰かを助けるためにその人生を失っているわけだから人としても終わってるってことなのさ」
「そういうのって一体……あ、そう言えばトップだか上司だかがいるって言ってたけどその人ってこの建物にいるの?」
驚いて目を忙しなく動かし始めた少年に少し白っぽさが戻ってきた。
「彩内院 塔哉、それ彼が言ったのかな? なんだか彼はいらないおしゃべりをするようになったみたいだね。昔とは大違いだよ」
またも気になる一言をもらって質問が枝分かれしていく。
「大違い? 昔の彼って? かなり陽気だし強いし元気だし。それに大きいし、あ! 彼は無口なバスケの選手だったとか? そのほうがマフィアよりずっと平和的だよね?」
(平和的?)
「そうだね彩内院 塔哉。それだったらどんなによかったかって僕も思うよ」
唇を噛み締めた少年はひとつひとつの言葉を地面に冷たく落下させていく。
「彼は……あまりに人の道を外れた、その残酷、残虐、残忍さから、悪魔にも恐れられる男と言われ、歴史に名を残すことさえ、許されなかった……人類史上最凶悪の……殺し屋だったんだ」
マフィアみたい、とは言ったものの彩内院の頭に浮かぶレインは、いくら何でもその言葉からは遠くかけ離れたイメージだった。
「そんな! そんなのおかしいじゃないか! だって僕みたいにここにきたってことはレインが誰かを助けようとしたってことなんだよね? ありえないことじゃないか」
「そうだよ。もしかしたら彩内院 塔哉がレインと呼ぶ男は、あのときからすでに人ではなかったのかもしれないね」
「……」
ショックのあまり無言で返す。




