快適隠れ家!中!
わざわざ振り返らなくても過去は今の中に生きているのです。あなた、心配注意ですよ!
シーナが三つめのケーキに手を伸ばしながらレインを見つめる。テーブルの上はこの日買ってもらったばかりのケーキと食べ終わったケーキの包み紙でいっぱいだ。シュークリームの受け皿だった銀紙も、すでに小さく丸められていた。
「じゃあお酒が足んないのー? レインに限って眠いーとか疲れたーってこともないでしょー?」
レインは起き上がってシーナと向かい合わせに腰掛ける。
「そうだね、疲れてはいないよ。レインさん今日はそれなりに飲んだからアルコールも足りてるし。ちょっと昔のことを思い出してただけだよ」
それを聞いたジャックが、走ってきてレインの横に座った。
「いいなぁ。レインは記憶があって。俺様せっかく少し残ってたのに消えちゃったんだろー?」
「もう、レインさん毎回言ってるけど、記憶があればいいってもんじゃないんだよー? ジャックは記憶なんかなくても今が楽しければそれでいいとは思わない?」
ジャックがきてすぐの頃は、本当にわずかだったが以前の記憶がありそれで苦しむことが何度もあった。それを知っているレインはジャックの記憶が消えたことを嬉しく思っていたのだ。
シーナが嬉しそうに口を挟む。
「そうそう。私、記憶なんか一切なかったけど、今が幸せだから幸せー! 漫画おもしろいしーケーキおいしいしー! それにレインも一緒にいるしー!」
大きく口を開けてケーキを頬張る。口のまわりはクリームだらけだ。
「あぁ、そうだな。シーナは頭空っぽでここにきたからそんなになっちゃったんだもんなー。そもそも俺様に追い越されてる時点でダメダメなんじゃーん?」
「なーにー!」
いきなりフォークを投げ捨てたシーナがジャックに飛びかかった。ソファーが倒れて二人の取っ組み合いが始まる。本当にただの小さな子供並みの元気だ。
その瞬間に、ひらりと飛んだレインはいつものように安全なところに避難していた。二人をすぐには止めずに目が届く場所で頬を緩めながらしばらく見守っている。
人間と造りが同じでも機能が違う分、丈夫にできているため滅多なことではケガをしないのだ。そして体力も常に有り余っている。
レインは三十分経っても飽きもせずに転がりまわる二人を見兼ねて引きはがした。放っておけばいくらでもじゃれているし、好きなだけ暴れさせれば住み処が破壊されてしまうことだろう。




