快適隠れ家!前!
時には思い出にふけることもあるのです。あなた、遠慮注意ですよ!
「ねぇねーぇーレインってばー。どうしちゃったのー? ぼーっとしてー。おなか空いたの? 私のショコラーテーわけてあげよっかー?」
ソファーに寝転んで天井を見上げていたレインはシーナに顔をのぞきこまれて目を丸くしてから頬笑んだ。
シーナはここを隠れ家と呼んでいるが別に隠れているわけではない。ここは街並みの一部として自然に建っているただの家だ。ただし目に見えるからと言って誰でも入れるわけではなく、見えない力に守られて“見える隠れ家”としてそこに存在していた。
初めこの住み処は、一枚ずつしかない上着を入れるためのクローゼットと小さな箱だけが備えられた空っぽの人形の家だった。
クローゼットはひとつしかない出入り口に置かれていて、家に入っている間コートとマントは入れっぱなしになっている。その中で行いが悪いと丈を少し短くされていて、その逆も然りとなっているのだ。
小さな箱には毎日決まった数だけ無色透明のカードが入っている。その日の分を使い切ると次の日にまた同じ数だけ補充される仕組みになっていた。
世界中にある隠れ家はこの最低限の装備だけで用意されていた。食べず眠らず疲れず時間も流れずという体のイキモノには、それ以上の物は何もいらないということなのだ。
だがここに例外が存在する。
ソファーにテーブル、本棚に冷蔵庫まで揃っている家。電気まで勝手に引いている。それどころか水道管までつなぎ水まで自由に使っているのだ。そのために各地で少しずつパイプやコンクリート、廃材が消えることとなった。
要するにシーナのわがままとレインの働きによって快適この上ない隠れ家が出来上がったというわけだ。
「あー……今日は静かに話しかけてくれてレインさん嬉しいよ。この前おなかに飛び乗られた時はレインさん出ちゃいけないもの出すとこだったからね」
食べなくてもいいのだから、当然おなかが空くという感覚も存在はしない。レインはシーナの言葉をやんわり受け流した。
窓際にいたジャックが露骨に顔をしかめている。
「嫌なこと言うなよなー。俺様想像しちゃったぜ」
レインは背伸びをしながらまた笑った。




