ドアの向こう!前!
その向こうに行くのは誰の意志ですか?あなた、聞耳注意ですよ!
「……」
彩内院はカードに書かれていた言葉と少年の言葉の意味を一生懸命に考えていた。(それって、まるで……)
「はい。おめでとう! 彩内院 塔哉。これで解禁だよ。彩内院 塔哉は何が聞きたいの?」
ドアの前の青年はスローモーションで振り返りながら静かに眼鏡を外した。
「カードのあれ……どういう意味なのかな?」
「あれ? 書いてあるままの意味だよ彩内院 塔哉。あなたで、人を 助けましょう。彩内院 塔哉を 犠牲に、一〇〇人を 助けましょう。それ以上の意味はないよ」
(僕が考え過ぎなのか?)頭を回転させると聞きたいことが次から次に思い出されたが、ひとまず目先の気になることから片付けることにした。
「そういえば君は何で色が変わったんだい?」
わざわざそれを聞いたのは、誰かがどこかで操作して少年の画像を創り出している、という現象をなぜか頭の隅では否定していたからだ。
彩内院は目の前にあるコレは意思を持つ独立した個体であるのではないか、と感じていた。
「彩内院 塔哉、僕は命ある“いきもの”ではない。だから命ある色も持たない。でも彩内院 塔哉がゴールに辿り着いたことで僕にある種の意味が生まれてこうなったんだ」
「予想外の答えだ。よくわからないけど、それ以上の説明ってしてもらえるのかな?」
「残念だけどそのことに関して僕が彩内院 塔哉に言えるのは、これくらいだよ」
「そうか。それじゃ質問を変えよう。何でそんなに僕の名前を呼ぶのかな?」
少年がドアを指さした。
「彩内院 塔哉の名前は、なくなっちゃうからだよ」
「……え?」
彩内院が固まった。
「なっ、なんで人を助けるくらいで名前がなくなるのかな?」
「だってそういうものだから。彩内院 塔哉は鍵を開けたから取り消しはできない。そしてドアの向こうに行けば名前がなくなる。だからここに辿り着くまでの間、僕らはその人の名前をできる限り呼び続ける。名前を失うことはその人自身を失うことだからさ彩内院 塔哉」




