察知能力!
冷静になれば見えてくるものもあるのです。あなた、出家注意ですよ!
「つまり僕はその溢れた方なんだろ? だから僕はここに連れてこられた。それはわかってるんだ。だけどなんでこんなことをするのかってことだよ」
「……彩内院 塔哉、あとはゴールに行かないと聞けない答えだよ。さぁ、彩内院 塔哉はこの世の中で一番の間違いは何だと思う?」
時間の観念がないこの空間で、すでに虚ろな目をしている彩内院は遠くを見ながら答えた。
「すべて。この世のすべてが間違いだ……」
少年がゆっくり手を合わせてから三回瞬きをする。ドアまでの距離がぐんと近くなった。
ひとつ息を吐いた少年は立ち上がり彩内院の前にゆっくり歩いていった。
焦点が合っていない彩内院に手のひらを差し出して静かに口を開く。
「さぁ……質問です。彩内院 塔哉、あなたが、この世に生まれてきたのは、一体、何の、ためですか?」
ハッとした彩内院が少年を見上げる。
大きく目を見開いた彩内院の中で何かが壊れ、驚きとその目覚めに時が止まった。
…………
そして、彩内院は一度も見せたことがないほどの眩しい笑顔を見せた。
「死ぬためだよ。僕は死ぬために生まれてきたんだ」
そのとたん……何かが弾けたような音がして一瞬で少年の瞳と髪と服が真っ黒に変化した。
「ゴールだよ! おめでとう彩内院 塔哉。さて、せっかくだから脱いだ服を着たほうがいいよ。彩内院 塔哉にはその服がよく似合っているからね」
やっと終わったという安堵感に包まれながら彩内院は身だしなみを整えた。
「それで? 今度こそ開けてもいいんだろ?」
「うん! 彩内院 塔哉が持っているカードはこのドアの鍵だよ。でもよく聞いて。ドアを開けてしまったらカードは消滅して後戻りはできない。でもカードを破ればすべてなかったことになって今まで通りの日々に戻れる。彩内院 塔哉、これが最後の選択だよ。さぁどうする?」
彩内院はポケットから出した翡翠のカードを高く掲げた。清々しく落ち着いた表情だ。
「構わないさ。それよりドアを開けたら僕の疑問すべてに答えるって約束を忘れないでくれよ?」
言い終わるなりドアの真ん中にあった、他に使い道が思いつかない四角の枠へカードを押し当てた。
「もちろんだよ彩内院 塔哉。君は疑問を片付けて満足してからドアの向こうに行くといいよ。君の時間は永遠にあるんだから」
(?)
そのとき彩内院はカードの見た目に違和感を感じた。よく見れば『あなたで人を助けましょう』という一文の下に『一人を犠牲に一〇〇人を助ける』の文字。
深く考える間もなくカードは光のごとく消滅し、同時にカチッと小さな音が聞こえた。




