覚醒開始!
その判断は誰のためですか?あなた、立場注意ですよ!
数分後、汗だくの彩内院は床にへたり込んで少年に大笑いされていた。
「ここから見てるとね、彩内院 塔哉はその場で走り続けてるだけだったから、とってもおもしろかったんだよ」
運動なんてまともにしていなかったせいか未だ肩で息をしている彩内院はコートも上着も一気に脱ぎ捨てた。そしてシャツの袖をまくって一瞬動きを止め、あぐらをかいてから楽しそうな白い少年の顔をじっと見つめた。
その何かを悟ったような顔は、さっきまでと全くの別人だ。
「なぁ……教えてくれ。これはトリックなんてレベルの話じゃないだろう? バカな僕でもこれが普通じゃないことくらいいいかげん気付くさ。なんで買ったばかりの二〇〇〇万の腕時計の針はおかしな動きをしているんだ? ここは一体何なんだ? 僕は何に巻き込まれたんだ? 僕をここに連れてきてどうする気だ? これは何が目的の組織なんだ? 頼むから教えてくれよ。わかるように説明してくれよ……」
汗を滴らせる彩内院の横に少年も静かに座りこんだ。
「おやおや、僕もここは長いけどこれは予想外の展開だよ彩内院 塔哉。でもドアが目の前に見えているからね。何にしてもゴールはすぐそこなんだよ彩内院 塔哉」
彩内院は黙ったままで少年の目を凝視した。
「もう、しょうがないなぁ。リタイアする気かい? 彩内院 塔哉。そうじゃないなら質問に……」
いきなり彩内院が少年の肩をつか……もうとした。両手が、すかっと空をきり唇をかむ。
「レインの時は僕からも質問して彼もそれに答えてくれたぞ。今回もそうするべきじゃないのかい? ちゃんと答えてくれよ!」
少年は困り顔になってきた。
「ここまできたのに彩内院 塔哉がこんなこと言い出すなんてね。でも残念なことに彩内院 塔哉がドアを開けてからじゃないと答えられない質問もたくさんあるんだ。要するに彩内院 塔哉が自力でゴールに辿り着けばその時にすべての疑問の答えを受け取れるってわけさ」
その言葉に彩内院の目が光った。
「本当かな? 今回もそう言って先に引き延ばす気なんじゃないのかい?」
「僕らは人間じゃないから嘘をつく必要がないんだよ彩内院 塔哉。この世界はすべてがつながっている。多すぎては溢れる、少なすぎれば困る。たったそれだけのこと。そのプラスマイナス=ゼロを保つために創られたのがここなのさ」




