通常運転!
一生懸命なのはいいことです。あなた、機関注意ですよ!
「彩内院 塔哉が、なくして一番困るものとは何ですか?」
ゆっくり道を進み続けながら彩内院が口を開く。進んでも止まっても結果に影響はしないのだが道という形があるため反射的に歩を進めてしまうのだろう。
「ないね。何でもなくしたら買えばいいんだから。あ、ってことは金か? でもそしたら募金するってことと矛盾しちゃう気がするな。考え過ぎか? じゃあない。なくして困るものナシってことで」
少年は少し驚いたようだったが瞬きを六つしてから彩内院の顔を見た。
「まさかとは思ったけど彩内院 塔哉みたいなのはひさしぶりだ。さすがに過去最高記録には手も届かないけど。じゃあ彩内院 塔哉の一番大事なものは何ですか?」
「いやいやいや、ちょっと待ってよ。何その気になる発言。この僕がその誰かよりも劣るってこと? 僕みたいな男は常にトップでいるべきなのに。どうすればそいつを抜けるんだい?」
少年の一言で久々に彩内院の恥ずかしいナルシストスイッチが入ってしまった。
普通の人間なら多少困るところだが運よく少年は創られたものであって人間ではない。あっさり笑い飛ばしてしまった。
「ダメだよ彩内院 塔哉。あんなの異常だからね。彩内院 塔哉、君はそういう生物にならなかったことを心から感謝すべきだと思うよ。それで? 彩内院 塔哉からさっきの答えをまだ聞いてないよ?」
彩内院は、かなり不服そうだったが背に腹はかえられない、ということで仕方なく答えを出した。
「これも金、って言いたいところだけどさっきと同じく、じゃあ募金するな、ってなっちゃうからね。大事なものなんてないよ。何もない、が答えだ」
ぱぁっと顔を輝かせた少年が八回瞬きをしてから拍手を始めた。
「そんなにショートカットしてくれると僕としても、とっても楽で助かるよ。ほら見て! 彩内院 塔哉!」
永遠に続くように見えた道が目と鼻の先でひとつのドアにつながっているのが見える。
「うわ! すごいな! どういうトリックなんだい? これ? あれ開けちゃえばゴールってことでしょ? それじゃ!」
いきなりドアめがけて突進した彩内院を少年は黙って見送った。それはそれは嬉しそうな顔で。




