片側通行!
その会話は成り立っているのですか?あなた、応答注意ですよ!
「なーんだ、ちゃんと道があるんじゃないか。さっきは何で気付かなかったんだろうね。でも道の終わりが見えないって言うのが唯一にして最大の欠点だよ」
少年も、ふわふわ歩きながらついていく。
「終わりはあるよ彩内院 塔哉。終わりがないように見えるのは僕と彩内院 塔哉の話が前に進んでいないって証拠だよ」
「……それどういう意味かな? そして何でそんなに名前を呼ぶの? いいかげん不自然だよ」
親からもらった名前をこれだけ呼ばれてやっと違和感に気付いたようだ。
「彩内院 塔哉は自分の名前が嫌いなの?」
「いや。別にそんなことはないけどさ。でも必要以上に呼び過ぎじゃないかな」
「嫌いじゃないなら呼んでもいいでしょ? 彩内院 塔哉。僕、名前をきちんとたくさん呼ぶんだよ? 彩内院 塔哉」
(子供ってこういう変なこだわり持ってたりするんだよね……)彩内院は、この小さなルールを子供のお遊びとして受け取った。
「そうか。そんなに呼びたいんなら勝手にしてくれ。それにしても、いくら進んだって未だに何もわかんないよ。それとも君が全部説明してくれるのかな?」
少年がカラコロと笑いながら彩内院の周りを回っている。
「彩内院 塔哉、ここは選ばれた君の本気を試す最後の間だよ。本当に誰かを助けたいと思っているか。つまり、彩内院 塔哉が知らない誰かのために何をしてあげられるのか、ってことの確認だね」
(あれ?)彩内院は、違和感を感じた。
当初の目的が思い出されたことで改めて自分は何をしているのかという状況を思うと何だか急にバカらしいという気持ちが芽生えてしまったのだ。
「君たちって、たかが募金させるためだけに毎回こんなことさせてんのかい? 回りくどいにもほどがあるだろ。もう走り抜けてっていいかな? 何かほんと今さらなんだけど、これじゃ時間もったいないもんね」
少年が、すいっと道を空けてにっこり笑った。
「それじゃ永遠に走り続けることになるよ彩内院 塔哉。でも僕ときちんと話をして答えが出せればゴールが一メートル先に出現することだって可能だ。この空間のルールは彩内院 塔哉次第で変わるんだからね」
彩内院は、このやり取りの感じは、つい数時間前に体験していたのと同じものだと気付いた。答えなければ進めない。要するに答えさえすればいいのだ、と。
「そういうことか。また無駄な時間を過ごすところだったよ。さぁ、それじゃ質問してくれ。この僕が手っ取り早く答えてあげよう」
その態度に少年がキラキラと笑う。
「そうだね。それじゃ早速。彩内院 塔哉は知らない人を助けるのが楽しいのですか?」
「そうだねぇ、まぁ楽しいって言うか嬉しいかな。イエスノーで言うとイエスだ。だって今日の少女たちみたいな顔されちゃさぁ……あー、いや僕はロリコンではないんだよ。別に」
ふわふわ歩く少年が、ゆっくりとひとつ瞬きをした。
「それはどうでもいいよ。じゃあ彩内院 塔哉は募金した自分をかっこいいと思いましたか?」
「もちろんっ! 当然、当たり前じゃないかイエスイエスイエスだよー」
あきれるほどの即答。少年が二つ瞬きをする。そして少し迷ってから探るように次の問を投げかけた。




