第2の部屋!
あなたが見ているものは本当に存在していますか?あなた、感覚注意ですよ!
が、
「……え? 何で?」
彩内院は目をこすってから眼鏡をかけ直し、もう一度目の前に広がる景色を見た。
「何で?」
もう一度呟いてポカンとした。自分がいる空間があまりに広すぎるのだ。
セピア色で照明が淡く薄暗いせいもあるが、端はかすんでいて見えないほどに遠い。何もないその広大な敷地の中に、ぽつんとちっぽけな彩内院が立ちつくしているだけなのだ。
思わず後ろを振り返ってしまった彩内院はもっと嫌な事実を知ることとなる。
今通ってきたはずのドアが消えている。それどころか壁もない。
自分を中心とする全方向、ただひたすらに端が見えないほどの空間が果てしなく広がっていた。
“危ないところじゃないから心配しないで”という言葉が思い出された彩内院の目に涙が浮かんだ。
「レインの……嘘つき……」
ベソをかく背中から優しい声が聞こえてきた。
「彼は嘘つきじゃないよ。彩内院 塔哉」
ビクッとして振り返ると小さな少年が、はだしで立っている。髪も肌も目も体を包んでいる服らしきものも全部が白一色で彩内院は自分が幻覚を見ているのかと心配になった。
「勘弁してくれ。今度は真っ白人間か……」
そのインパクトのせいで、自己紹介の覚えもないのに名前を知られている事実に気付いていない。
「僕は、ただの創り物だよ彩内院 塔哉。ここにきた人が最後の決断を下す前にこうやって話をするためだけのイメージとして存在してるんだ。その証拠にほら、彩内院 塔哉は僕にさわれないでしょ?」
少年が差し出した手は何度試してもふれることができずに通り抜けてしまい何の手応えも感じられなかった。
「あ、ほんとだ……」
落ち着いた彩内院は、ふと頭に残っていた単語を思い出し“ただの映像”に問いかけた。
「ねぇ、そう言えば君、レインのこと知ってるの?」
白い目が、すっと細くなった。
「内緒。だって彩内院 塔哉は、この部屋に入ったばっかりでしょ? まだ少しも前に進んでないもん」
「は? 進むって言ったってこんな何もない空間に放り出されてどうしろって言うんだ? わけわかんないよ」
少年が不思議な音で笑いだした。
「周りをよく見て。彩内院 塔哉」
あきれ顔になってもう一度見回す。
「だから周りならもう散々見たよ。しかも名前を呼び過ぎだ……あれっ?」
いつのまにか彩内院の足の下に道ができている。
相変わらず端は見えないままだが気が楽になった彩内院が急に元気を取り戻し、さっさと道なりに歩き始めた。




