第1の部屋!
アトラクションではありません。ただの待ち部屋です。あなた、順番注意ですよ!
彩内院は返されたカードを裏表確認してみたが特に変わったところはない。本当にただ確認しただけのようだ。ポケットにしまってから教えられた通りに次のドアを開けると、入り口の若者と同じ服の女が立っていた。
最初の部屋と同じで窓もなく、薄暗くて狭い部屋の中には制服を着ていない人間が彩内院を入れて三人。彩内院を除く二人は背を向ける形で前後にならび黙って下を向いていた。その先にはまたドアが二つ。制服を着た髪の長い女がそのドア付近に笑顔で立っている。
目の前の係が紙挟みとペンを差し出した。
「はい。これを書きながら列に並んでください。簡単なアンケートなので深く考えず気軽に書いてくださいねー」
(あぁ、これ行列だったのか……)サラリーマン風の男の後ろについた彩内院は受け取った紙に目を通す。街でやっていそうな、ただのアンケートだ。彩内院は、安心してさっさとペンを走らせ始めた。
彩内院は気付かなかったが、もし目の前の男にもう少し近付いていたらケーキ屋独特の甘い残り香を感じられたかもしれない。
しばらくすると先頭にいた白髪まじりの男が顔を上げて紙挟みを係に渡した。
「はい。終わりましたか? では……」
二つのドアの前で、受け取ったアンケートをじっくり見ていた係の女は腕をのばし次の道を示した。
「あなたは左ですね。どうぞ」
笑顔で見送りドアを閉める。彩内院は次のドアの向こうが気になったが首をのばしても暗くて何も見ることはできなかった。
*あなたは人のために何らかの行動を起こすことができますか?
*あなたは誰かを助けることに意味があると思いますか?
*人助けに喜びを感じられますか?
*ボランティアをしたことがありますか?
*あなたはお金の使い道に困ったことがありますか?
*人間は平等だと思いますか?
*あなたは神の存在を信じていますか?
*あなたの周りに……
という極ありふれた質問は全部で五〇問あり、すべてが「はい・いいえ」のどちらかを選ぶようになっている。中間の選択肢はひとつもなかった。
(心理テストみたいで楽しいけどちょっと多いかな)
彩内院が、やっとで最後の一問にキュッと丸をつけて顔を上げるとニコニコと手を差し出す係がすぐ目の前に立っていた。
「それでは確認しますね」
紙挟みを渡してから彩内院は背伸びをする。アンケートに集中していたせいか周りを見回して初めて自分の後ろに一人並んでいることに気が付いた。(一体何なんだろうな。そう言えばこんなに長くボディーガードなしでいるのなんて初めてだな。今さらだけど、すごい開放感じゃないか……)
彩内院は小学校にあがる頃から当たり前のようにボディーガードと共同生活を送っていた。
「はい。あなたは右へどうぞー」
考え事から現実に引き戻されて言われるままにドアの前に立つ。
係がドアを開けて誘導し、彩内院は次の空間に踏み込んで行った。




